北見俊哉役 上杉柊平さんインタビュー
2020.2.6 thu. Update

interview#04

この『絶対零度』に出演するにあたって、最初に感じたこと・考えたことは?
前作も見ていて、本当に面白い作品だと思っていました。でも、今回初めて台本を読んで、文章だけでも面白い作品なんだということがわかったんです。とても緻密ですし、実際に映像になるまでわからないような部分も想像できました。そういう脚本の力を背景に、演者のみなさんが本当に真摯に取り組んだからこそあれだけ面白い作品が出来たんだな、ということが本を読んでみて初めてわかりました。だから、とてもワクワクしました。
チームワークが出来上がっている作品に後から加わるのは難しい、とおっしゃる役者さんもいますが、上杉さんの場合はいかがでしょうか?
そういう意味での不安や緊張は意外となかったです。沢村一樹さん演じる井沢や、横山裕さん演じる山内、本田翼さん演じる小田切のキャラクターがわかっている分、戸惑いはなかったというか。香坂(水野美紀)さんと一緒にいることが多いので、香坂さんをどう見せていくのか、ということや、僕が演じる北見をどう見せていくのか、という部分について考えればよかったので。ただ、北見がこの後どうなっていくのかはわからなかったので、そういう意味での難しさも感じてはいましたけど、演じる上ではいろいろやれることもあると思ったので楽しみでした。逆に、カメラが回っていないところでどういう風にみなさんに加わっていけるかな、ということの方が気になりました(笑)。
法務省のエリート・北見というキャラクターを演じるにあたって、特に考えた点は?
石川(淳一)監督ともお話させていただいた部分ですけど、今後いろいろ見えてくる部分もある中で、なるべくフラットな姿勢でいよう、ということですね。香坂さんも最初はフラットですけどいろいろ動いていきますし、謎も多くてクセ者的な存在でもあると思うので、そこを強調するという意味でも、僕はフラットでいくべきだなと思いました。気持ちの面などが動いてしまったときは、監督も「動じない方がいい」と言ってくれますし。あと、姿勢ですね。僕、普段姿勢が悪いんですよ(笑)。だから、なるべく背中をピシッと伸ばして、足を少し開いて立つように意識しています。
北見も、どういう思惑があるのか、何をどこまで知っているのかわからないキャラクターなので難しい面もありますよね。
それを僕も知らないという(笑)。最初からそれを知っていたら、目線のお芝居とかもあったと思うんですけど。だからこその「動じない」だと思うんです。でも……何を知っているんですかね?(笑)。
中盤以降、ますます謎は深まっていますしね。もしかしたら、北見はすべて知っているのかもしれません。香坂が失脚したら自分が……という野心もあるかもしれないですし。
もしそうだったらそれもいいですね(笑)。そもそも、官僚になってもの凄い競争の世界にいるのなら、そういう野心も持っているんじゃないかと思うんです。
この作品に登場するエリートや上層部の人間は、それぞれ何らかの思惑があって行動していますからね。
そうなんですよね。悪い人もいるし。個人的には、めちゃくちゃ悪いキャラクターでいたいという思いもあるんですけどね(笑)。香坂さんと一緒にいる、ということにも意味があると思いますし、その香坂さんが死んでいる、といところから始まっていますからね。そこに北見がどう関わっていくのか、楽しみです。
ビッグデータや個人情報を利用して犯罪を未然に防ぐ、というこの作品の世界観に関してはいかがですか?
前作のときも思いましけど、やはり怖さは感じますよね。実際に、防犯カメラなども凄く増えましたし。ドラマの中でも、北見が危険人物とかその関係者のデータを出すと、ウェブの閲覧履歴とかも出てくるんです。そういう個人情報は、もう現実に利用されていますよね。ミハンも、いまはAIがひとつですけど、例えばそれが3つになったとしたら、その3つのAIが協議して可決したものが通っていくようになるわけじゃないですか。そういうSFとか漫画のような世界は、すぐそこまで来ているんじゃないかなと思うんです。もう人間の脳が及ばないような世界というか、人間が10年かかってようやく出せるような答えを、1秒にも満たない時間で100個くらい出されてしまうような世界になっていったら……いや、もうそうなっていくと思うので、そのときに人間が何をするのかというのは想像もつかないですよね。僕は視聴者としてこの作品を見ていたので、そういう部分の絶妙な描き方も好きでした。
ことしはオリンピックイヤーということもありますからセキュリティーの問題などもクローズアップされていくでしょうし、自動運転とか、コンビニエンスストアの無人実験というようなニュースも普通に報じられていますからね。
僕は、コンビニの店員さんとすぐ仲良くなるんです(笑)。「あ、髪切りましたね」とかいつも話しているんですけど、そういうコミュニケーションがないのは寂しいですよ。この間もスーパーに買い物に行ったんですけど、そこは1ヵ所以外、全部セルフレジだったんです。もちろん効率的ですし、お金を触る必要もないわけだから安全でもあると思うんですけど、すぐに完全無人になっていくと思うんです。これはちょっと脱線してしまう話かもしれないですけど、日本は地震大国でもあるので、何もかも機械に頼ってしまうのは危ういんじゃないかと思うんです。だから、危機感みたいものは常に持っていたいとは思っているんですけど……。犯罪捜査とか、人間の力ではどうしようもないところは技術の進歩に頼っていくしかないと思いますけど、日本人が培ってきたものや、人との接し方とかはちゃんと意識していきたいなと思っています。でも、それって誰が決めるのか、とか考えるともう怖いですよね。それもAIが決めるとか(笑)。ホントに絶妙ですよね、ミハンって。毎回事件捜査だけじゃなくて、それ以外のことも考えられるようになっているんですよね。むしろ、そこが主題かもしれない。正義とは何か、とか人としての在り方とか。視聴者の皆さんには、そういうところも楽しみながら見ていただけたら嬉しいですね。