10月19日 オンエア
自分を捨てた両親の真実!隠された出生の秘密
 
 
photo  電気技師として堅実な人生を送ってきた、ゲーリー・スチュワートさんは、生後3週間で養子に出されていた。 彼を引き取った養父母は、まるで我が子のように愛情を注いで育ててくれた。
 だが、養父母の愛情を感じながらも、ゲーリーさんの心の中には、いつも拭い去れない寂しさがあった。 自分は本当の両親に愛されていなかった…だから捨てられた。 成長してからもずっとそう感じていた。
 
 
photo  時は過ぎ、養子に出されてから39年。 結婚し、子供をもうけたゲーリーさんが、養父母と一緒にホームパーティーを楽しんでいた時のこと。 2人は、どこか沈んだ様子だった。
 そして…養父母は、大切な話があると切り出した。 実は 2週間前、養父母の元に突然、ゲーリーさんの生みの母親だと名乗る女性から電話がかかってきたのだという。 その女性は、年月を経るにしたがって、手放した赤ん坊に自分が実の母親だと知って欲しくなったという。 そこで、なんとか引き取り先を突き止め、連絡を入れたのだ。
 
 
photo  ゲーリーさんを我が子の様に愛し、大切に育ててきた養父母は、生みの親からの突然の連絡に戸惑った。 できることなら、息子に知らせたくない。 しかし、電話の後に送られてきた手紙には、その女性が現在のボーイフレンドと一緒に写っている写真が同封されていた。 養父母は、その女性の顔立ちにゲーリーさんの面影を感じたという。
 
 
photo  養父母から渡された手紙には、その女性の電話番号が記されていた。 そして文面には、こう書かれていた。 「もし電話が鳴って、息子が『あなたが僕の母親だと信じます』と言ってくれたら、その日は私にとって人生最良の日になるでしょう。」
 今すぐにでも電話をしたい、そんな思いに駆られた。 しかし、養父母に申し訳ないという気持ちもあり、すぐには電話できなかった。 だが一方で、自分は実の両親に愛されていたのか?…それを確かめたい気持ちもあった。
 
 
photo  一晩中悩んだ末、ゲーリーさんは電話することを決意。 その日は偶然にも、母の日だった。 だが、電話は留守番電話だった。 そこでゲーリーさんは、「あなたは私のお母さんだと思います。母の日のお祝いを伝えたい」というメッセージを残した。
 するとその日の夜、生みの母親から電話がかかってきた。 母親は「信じてもらえないかもしれないけど、ずっと愛していたわ。」と言った。
 
 
photo  そして、電話から2週間後、ゲーリーさんは実の母・ジュディスさんと対面。 生後3週間で別れて以来の再会だった。 実の母親の愛情を全身で感じた。 自分は愛されていなかったのではないか…という心の不安が消えていく気がした。
 ジュディスさんは、事情があってゲーリーさんを養子に出した後、彼の父親にあたる男性とは離婚。 その後、連絡も取っていないという。
 再会を果たした後、ゲーリーさんは思い切って、実の父親がどんな人だったかを尋ねた。 しかし、『ヴァン』という名前は教えてくれたものの、それ以外はよく覚えていないという。 ゲーリーさんにとっては思いもよらない返事だった。 ジュディスさんは何かを隠しているようだった。
 
 
photo  その後、ジュディスさんとは2人で何度も旅行した。
彼女の気持ちを汲み、父親のことはあえて聞かない様にしていた。
 だが、再会から7ヶ月後…もう一度、父親のことを尋ねたのだ。 ジュディスさんは、父・ヴァンが今 何をしているか知らないという。 だが、知り合いの警察官に調査できないか聞いてみてくれるという。
 
 
 実はジュディスさんは、ゲーリーさんの父と離婚後、黒人の男性と再婚していた。 残念ながら、彼は糖尿病で亡くなっていたのだが、生前は人種差別と戦い、目覚ましい働きを見せた警察官だった。 photo さらに、サンフランシスコ市警では、黒人として初めて殺人課の警視を務めるなど、人望も厚かったという。
 ジュディスさんは、彼の部下ならば必ず力になってれるはずだと考え、調査を依頼した。 だが、知り合いの警察官は、「調査は中止すべきだ。これ以上詮索しないほうがいい。」と言ってきた。 その後、警察は父親・ヴァンの写真を見つけ出し、提供してくれたが、細かい情報は教えてくれなかった。 調査を中止すべきだという警察…父親には何か秘密がある、そう感じた。
 
 
photo  そんな時…ゲーリーさんは、彼と養父母を結びつけてくれた養子縁組サーチセンターから連絡を受けた。 通常、このセンターでは、トラブルを避けるため、実の両親の情報は公開しないことになっている。 しかし、ゲーリーさんに関しては、再会も果たし、その後の関係も上手くいっていると聞いたため、両親に関する資料を返却してくれるというのだ。 だが、この資料によって、閉ざされていたパンドラの箱が開かれてしまうことになる…!
 実は、両親に関するある出来事が、当時全米を騒がせる大ニュースになっていたのだ。 その出来事の全貌を知るため、ゲーリーさんは地元の図書館で、当時の新聞記事をはじめ、あらゆる情報を徹底的に調べた。 図書館には、当時の警察の調書も保管されており、ゲーリーさんは全てを知ることとなった。
 
 
photo  今から56年前、ゲーリーさんの父親・ヴァンは、サンフランシスコを拠点に古本の輸入売買を行っていた。 ある日のこと、スクールバスから降りてきた1人の少女に目を奪われた…一目惚れだった。 その少女こそ、ゲーリーさんの母・ジュディスだった。
 27歳のヴァンは、ジュディスが14歳と聞いても、もう後戻りできないほど心を奪われていた。 この日から毎日、ヴァンはアイスクリームショップの前で学校帰りのジュディスを待った。 ジュディスも同級生の男子と比べ物にならないほど、大人で博学なヴァンに徐々に惹かれていった。
 
 
photo  そのことを母親に打ち明けると、母親は厳しく反対した。 だが、反対されればされるほど、恋は燃え上り…出会いから3ヶ月で、2人は駆け落ちを決意。 ジュディスは、母親がまだ眠っている早朝に家を出た。
 駆け落ちした直後、ヴァンは隣のネバダ州にある教会で、知り合いの牧師に頼んで結婚式を挙げてもらった。 ジュディスの年齢は19歳と偽った。
 
 
photo  だが数日後、ジュディスが突然 腹痛を訴え、入院。 ヴァンは万が一のことを考え、彼女の母親に連絡したのだが…ジュディスの母親はヴァンから連絡が来た後、すぐ警察に通報。 未成年者を連れ出したとして、ヴァンは逮捕された。
 
 
photo  ヴァンと引き裂かれたジュディスは、退院後、未成年者の更生施設に入れられた。 すると…そこにヴァンが現れた。 ヴァンは、保釈金を収めて釈放されると、施設に忍び込み、ジュディスを更生施設から連れ出した。
 2人は、サンフランシスコの片隅にアパートを借り、ジュディスの母親の目を逃れて新婚生活をスタートさせた。 そして、ジュディスは妊娠。 このお腹の子こそ、のちのゲーリーさんだった。
 
 
photo  しかし、まだ14歳だったジュディスは、不安からつい母親に電話をしてしまう。 意外にも、母から暖かく迎い入れるという返事をもらえたため、2人はジュディスの実家へと戻った。
 だが、迎え入れるというのは、2人を連れ戻すための嘘だった。 母親の通報で待ち構えていた警察によって、ヴァンは逮捕された。 再び起訴されたヴァンは、拘置所に入れられ、そしてジュディスは更生施設に戻された。
 
 
photo  27歳の男が14歳の少女を連れ出し、妊娠させた出来事は、アイスクリーム・ロマンスとして、スキャンダラスに報道された。 更生施設に入れられたジュディスは、母に裏切られ、ヴァンと無理やり引き裂かれたショックもあって、体調を崩した。 そのため、一時的に病院に移されたが、再び逃げ出すことがないように病院側は目を光らせていた。
 だが、ヴァンはまたも保釈金を払うと、医者になりすまし病院に潜入。 その後、2人が逃げ出すと、新聞各社はすぐに報道。 警察は彼らを広域手配した。
 
 
photo  そんな中、2人は、ヒッチハイクを繰り返しながら、東へと移動。 そして、逃亡資金も尽きかけた頃、流れ着いたのがニューオリンズだった。 その時、ジュディスは妊娠8ヶ月になっていた。
 ニューオリンズに来て2ヶ月後、ジュディスは男の子出産、ゲーリーさんが誕生した。 だが、逃亡資金も底をつき、現実の厳しさに打ちのめされたヴァンは、精神的にかなり追い詰められていた。 働く気力さえ無くしたヴァンの代わりに、ジュディスが働かくしかなかった。
 
 
photo  ある日、ヴァンは赤ん坊を捨ててくると言い出し、ジュディスの手から赤ん坊を無理やり奪って、家から出て行ってしまった。 ヴァンが赤ん坊を連れてきた場所は、当時、経済的に安定した人たちが住んでいるアパートだった。 現在は法律事務所として使われている、この建物の踊り場に生後3週間のゲーリーさんを置き去りにした。
 
 
photo  置き去りにされた赤ん坊は、仕事から帰宅したアパートの住民が発見し、警察に通報、保護された。 そして、ヴァンが赤ん坊を捨てたことにショックを受けたジュディスは、彼と別れることを決意。 荷物をまとめてアパートを去り、間も無く警察に身柄を保護された。 そして、ジュディスの供述からヴァンも逮捕された。
 
 
photo  ジュディスは少年裁判所で、半年から2年間、青少年更生施設に入るように命じられた。 ヴァンには裁判で、誘拐などの罪により、懲役3年の刑が言い渡された。
 ジュディスは赤ん坊を引き取りたかったが、彼女の母親は認めなかった。 引き取れば、まだ若い娘のこれからの人生の負担になると考えたのだ。 そのため、赤ん坊は養子に出されることになった。
 
 
 スキャンダラスなアイスクリーム・ロマンスに自分の出生の秘密があることを知ってしまったゲーリーさん。 しかし、彼を襲った衝撃は、これで終わりではなかった。
photo  ゲーリーさんは、父親のヴァンについて調べていた当時、偶然、あるドキュメンタリー番組を目にした。 それは、1968年〜69年にかけて、サンフランシスコで連続して5人が殺害され、2人が重傷を負わされた凶悪事件の特集だった。 ゲーリーさんは、番組で紹介されていた、ある似顔絵に衝撃を受けた。
 実は、この凶悪事件の犯人はまだ捕まっておらず、当時、目撃証言を元に警察が似顔絵を作成していた。 そして、その似顔絵が、ヴァンとそっくりだったのだ!
 
 
photo  犯人は、自らをゾディアックと名乗り、全く動機の分からない無差別な犯行を行った。 この事件は、『ゾディアック事件』と呼ばれ、アメリカでは知らない人はいないと言われるほど有名で、日本でいう3億円事件のような歴史に残る未解決事件だ。 ゾディアックは、犯行の後、警察を挑発するかのように犯人しか知らない事件の情報を書いた手紙や、奇妙な暗号文をマスコミに送りつけ、全米を震撼させた。 犯人の目撃情報や、送られてきた手紙などの物的証拠はあったが、結局、警察はゾディアックを特定することはできなかった。
 実は、ゾディアックが犯行を始めたのは、刑務所に収監されていたヴァンが出所して間もない頃だった。 ということは…ヴァンは、アイスクリーム・ロマンスの後、連続殺人犯・ゾディアックに変貌を遂げたというのか?
 
 
photo  ゲーリーさんは、ヴァンのその後の手がかりを得るために、父と同じ名字の人たちに片っ端から電話をかけ、彼の親戚を探した。 そして、ヴァンの従姉妹という女性にたどり着き、彼女から貴重な話を聞くことができた。
 釈放された後、ヴァンは古本の輸入販売業を再開して、細々と暮らしていたようだったが、その暮らしぶりは謎めいていて、はっきりしたことは分からなかった。 そして釈放から18年後、ヴァンは49歳の時、メキシコのホテルで自分の吐いたものを喉に詰まらせて命を落とし、そのまま現地で埋葬されていた。
 
 
photo  実の父親と連続殺人鬼・ゾディアックは、同一人物なのか? ゲーリーさんは、ゾディアックのある特徴に注目した。 1つは暗号だった。ゾディアックは、マスコミにあてて奇妙な暗号を送りつけていた。 そして、もう1つの特徴は、日本を舞台にしたオペラの歌詞。 ゾディアックがマスコミにあてた手紙に『ミカド』というオペラの歌詞を引用していたのだ。
 
 
photo  ゲーリーさんは、ゾディアックのこの2つの特徴と、ヴァンを結びつける鍵を見つけた。 それは…ヴァンの父親だった。
 親戚から手に入れたヴァンの父親の名刺がある。 家族写真が印刷された名刺で、子供の頃のヴァンも写っていたが、注目したのはそこに記されていた住所だった。 『青山学院 渋谷区 東京 日本』 ヴァンたち一家は、一時期、日本に住んでいたのだ!
 
 
photo  実はヴァンの父親はキリスト教の宣教師をしていて、第二次世界大戦が始まる直前まで日本で布教活動を行っていた。 ヴァンは音楽が好きだったが、日本に滞在していた影響で、オペラの『ミカド』が大好きだった。 そして、その中の歌を覚えて、よく歌っていたという。 ゾディアックが引用していたオペラ『ミカド』とヴァンが結びついたのだ。
 
 
photo  さらに、日本で布教活動をしていたヴァンの父親は、日本語が堪能だったため、戦時中は海軍で日本軍の暗号を解読する任務についていた。 ヴァンの父は休暇で家に帰ると、ヴァンと暗号作りの遊びをしていたという。 ヴァンはとても高い知能を持っていて、高度な暗号を次々と作るようになったという。 ゾディアックの大きな特徴である暗号文も、ヴァンと結びついたのだ。
 
 
photo  ゲーリーさんは、父親のヴァンがゾディアックではないかという考えを、振り払うことができなくなっていった。 そして考え抜いた末、警察に出向き、ヴァンの息子である自分のDNAと、ゾディアックのものを鑑定してほしいと申し出た。 ところが、鑑定結果を催促しても、警察はあやふやな答え方をするだけ。 13年が経った今でも、警察からの返答はないという。
 
 
 するとゲーリーさんは、再び思い切った行動に出た。 ヴァンが結婚式を挙げた時に、全て自分で記入したという結婚証明書と、ネット上に公開されているゾディアックの手紙を筆跡鑑定にかけることにしたのだ!
photo  専門家は、結婚証明書とゾディアックの手紙の中で、特徴のある筆跡のアルファベットとして特に『J』と『E』に注目した。 『J』については、結婚証明書からは『Judith(ジュディス)』の『J』を抜き出し、そしてゾディアックの手紙からは『July』の『J』を抜き出した。 重ねてみると、文字の構造は一緒だった。
 『E』については、結婚証明書からは『Earl V. Best(アール ヴァン ベスト)』の『E』を、ゾディアックの手紙からは封筒の裏に書かれた『Editor』の『E』を抜き出した。 これも重ねてみると、やはり文字の構造は一緒だった。
 
 
photo  鑑定を行ったマイケル・ワクシュル氏は、同じ人物が書いた可能性が高いと分析した。 ゲーリーさんは、ヴァンがゾディアックであるという確証を得たと感じた。 そして、ジュディスさんの警察の知人がヴァンの調査を止めるようにアドバイスしたのは、ヴァンがゾディアックである可能性が高いからだと考えた。 だが、ゾディアック事件は未だ解決には至っていない。
 
 
photo  ゲーリーさんは、父親が葬られているメキシコの墓地にも行ってみたが、そこには、墓石さえ立っていなかった。 あまりにも殺風景な場所。
 ゲーリーさんさんは、ヴァンを巡る長い旅を振り返り、こう話してくれた。
「私の人生の出発点は、実の父親に捨てられるというひどいものでした。でも養父母にも恵まれ、実の母とも再会し、たくさんの愛情に溢れた人生を送っています。たとえ受け入れがたい過去に傷つき悲しむようなことがあっても、愛があれば きっと幸せになれる。そのことを同じような経験をしている人に伝えていきたいんです。」 ヴァンを巡る旅は、家族の愛情を見つめ直す、心の旅だった。
 
 
 ゲーリーさんさんの調査を誰よりも間近で見ていた人物、それは息子のザックさんだった。 ゲーリーさんさんとジュディスさんが再会した時、まだ10歳だったザックさんは、現在、結婚して子供を授かり、幸せな家庭を築いている。 photo そんなザックさんは、父親から大きなものを受け継いでいた。
 ザックさんはこう話してくれた。 「父がやっていたことはポジティブなことだと感じていました。自分が何者かを探すために苛酷な現実にも目を背けず、立ち向かっていた。勇気あることだと思うし、見習いたいと思っています。」 愛に支えられた強い心は、ゲーリーさんの家族に受け継がれている。