8月31日 オンエア
野良猫 ボブの素敵な魔法
 
 
photo  イギリス・ロンドン、ここに世界中で話題となった猫がいる。 その名も、野良猫ボブ。
「幸せを運んでくれる猫なのよ」 「とても感動したわ まさに奇跡の猫よ」
ごく普通の茶トラの猫がなぜこんなにも注目を浴びているのか?
 人生に絶望していた孤独な男と…みすぼらしい野良猫。 彼らの不思議な出会いが、後に世界中を感動させる、大きな奇跡を生むことになる。
 
 
photo  人口一千万人の大都市、イギリス・ロンドン。 今から10年前、28歳の青年ジェームズ・ボーエンは、最悪の人生を送っていた。 職業は売れないストリート・ミュージシャン。 朝から晩まで演奏し続けても、稼ぎは1日3000円がやっと。 ロックスターになるという夢はとっく消え失せ、毎日ただ食べていくためだけに、路上で演奏を続けていた。
 さらにジェームズは、重度のヘロイン中毒だった。 路上で行き倒れていたところ、ボランティア団体のサポートを受け、公営アパートに入居。 薬物依存更生プログラムを受け始めたばかりだった。 薬物依存を克服する手段の一つに、医師が処方する合成麻薬を飲む方法がある。 徐々に強いものから、弱いものへと変えていくのだが、ジェームズは、未だに強い合成麻薬から抜けだせないでいた。
 
 
photo  そんなある日のこと。 アパートの前に一匹の野良猫がいた。 翌日も、その野良猫はいた。 よく見ると、ネコは傷を負っていた。 ジェームズはネコと自分がタブって見えた。
 イギリスで生まれたジェームズは、3歳の時に両親が離婚。 母と共にオーストラリアに移住したのだが、ジェームズは、転校する先々でいじめにあった。 さらに、母の再婚相手とも折り合いが悪く、学校にも家にも居場所がなかった。
 そして18歳で、ロックミュージシャンを目指し、逃げるようにロンドンに旅立ったものの、すぐに挫折。 路上生活を続けるうち、寒さと孤独を紛らわせるため、ヘロインに手を出してしまったのだ。
 
 
photo  ジェームズは、ネコを病院に連れて行った。 治療代は22ポンド(約3600円)、それはジェームズの持ち金の全てだった。 そして、ジェームズは、ネコの傷が治るまでの2週間、ネコの世話をすることにした。
 だが、いつしかジェームズは、ネコとの生活を楽しく感じるようになっていた。 しかし、あっという間に2週間が過ぎた。 ネコを飼う余裕のないジェームズは、ネコを遠い公園まで連れて行き、置いていった。
 その日、帰宅すると、ネコは数キロ離れた公園からアパートに戻ってきていた。 そして2人は一緒に暮らし始めた。 ジェームズは野良猫に『ボブ』と名付けた。 大都会ロンドンで孤独に生きてきた2人にとって、お互い初めて出来た友達だった。
 
 
photo  ある日、ボブを連れてストリートで演奏していた。 いつもは何時間演奏しても見向きもされなのだが、この日は普段の3倍の収入があった。
 それからジェームズは、毎日ボブと一緒に行動した。 バスに乗るのも一緒、片時も側を離れることはなかった。
 そして、ボブの不思議な魅力に引き寄せられ、多くの人が足を止めてくれるようになった。 ジェームズの生活は一変した。 クリスマスが近づく頃には、多くの常連客がつくようになったのである。
 
 
photo  だが、その幸福は長くは続かなかった。 突然、ジェームズは、脅迫罪の容疑で逮捕されてしまった。 客に謝礼を強要しているのを見たという通報があったというのだ。 ジェームズのことをよく思っていない駅員の通報だった。
 ジェームズのいい分は聞き入れてもらえず、有罪に。 執行猶予はついたものの、もう一度捕まれば懲役刑になる。 路上で歌うことは禁じられてしまった。 ミュージシャンの夢は完全に絶たれた。 そのストレスから、強い合成麻薬に手が伸びてしまう。
 
 
photo  このままでは生活ができない、そう考えたジェームズは、ある雑誌の販売を始めた。 その雑誌のは、ホームレスなど生活困難者の自立を支援する団体によって、発行されているカルチャー情報誌、日本でも販売されている。 支援の仕組みは、販売員が1部1ポンドで本部から購入し、2ポンドで販売。 つまり一冊売れば、1ポンドの利益になる。 ジェームズは、その正式な販売員となり、街頭に立ち始めた。
 ジェームズは、仕事を始めてわずか2週間あまりで、トップクラスの売り上げに。 収入はストリートミュージシャンの時より少なかったが、ボブと食べていければ、それで十分だった。
 
 
photo  だが、またしてもジェームズを悲劇が襲った! ジェームズが自分の受け持ち地区以外で雑誌を販売しているとして、本部に他の販売員から苦情が入ったのだ。 そして、本部に出頭するように勧告されてしまった。
 もちろん、規則違反などしていない。 だが、ジェームズには思い当たる節があった。 自分の受け持ちの地区に移動するまでの間に、ボブと一緒にいる姿を写真に撮りたいなどと声をかけられることがあった。 そんなつもりは無くても、成績の良いジェームズは、他の販売員から強い嫉妬を受けていたのだ。
 本部に出頭し、もし販売許可証を取り上げられたら、再び路上生活に舞い戻ってしまう。 先が見えない不安から、薬の量も増えていった。
 
 
photo  ジェームズは、本部に出頭できずにいた。 監視の目を気にしながら、毎日、逃げるようにロンドン市内を渡り歩いた。
 だが、自分を見つめるボブの目を見ていたら…「君は間違っている 逃げちゃダメだ」と言っているように思えた。 そしてジェームズは、雑誌販売の本部に赴き、謝罪することに決めた。 どんな罰も受ける覚悟だった。 だが、与えられた罰は、数週間販売する時間を制限するだけだった。
 
 
photo  ジェームズは、合成麻薬を医師に返し、48時間の禁断症状に耐えることを決意した。 だが、その苦しみは想像以上だった。 体の中を虫が這いずり回るような不快感に襲われた。 さらに、幻聴や幻覚。
 薬の禁断症状が極限にまで達する中、ボブはずっと見守り続けてくれた。 ジェームズは、苦痛に耐え続けた・・・ボブとの生活のために。  こうして、ジェームズは、薬物依存から抜け出すことができた。 ふたりの絆は、揺るぎないものになっていた。
 
 
photo  そして、二人の物語が本になった! きっかけは、路上で雑誌を売るジェームズとボブの様子が編集者の目に止まったことだった。
 この本はイギリスで出版されるや瞬く間に話題となった。 以来、日本を始め30を超える地域で翻訳・出版され、世界中で1000万部を超える大ヒットを記録した。
 さらに、二人の物語が映画化されたのだ。 しかも出演しているこの猫は…何を隠そうボブだ。 野良猫だった彼はスクリーンデビューまで果たした。
 
 
photo  現在、二人はロンドンで生活している。 自分と同じような立場の人々の手助けをしたい、その思いからジェームズは動物愛護団体の資金集めに協力したり、薬物依存症から更生中の人々のサポートをしたりといった活動をしている。