4月9日 オンエア
女性の失踪!衝撃事件の幕開け
 
 
photo  今から62年前。 とある民家から、煙とともに異様な臭気が漂っていた。 それが、日本を揺るがす連続殺人、負の連鎖の狼煙だと、この時 気付くものはいなかった。
 約20年後、一人の女性が地元の警察署を訪れた。 半年前から姉と連絡が取れなくなったというのだ。 姉の嫁ぎ先に電話したら、姉は男を作って出て行ったと言われたという。 だが 妹は、浮気していたのは姉ではなく夫の方だったと主張、調べて欲しいと訴えた。
 
 
photo  実は8ヶ月ほど前、失踪届のあった藤森圭子さんは、夫に首を絞められ 殺されそうになったと、同じ警察署に駆け込んでいたのだ。 夫の裕治は金融業と不動産仲介業を営んでいて、債務者に対し 厳しい取り立てを行うことで知られていた。 しかし、その時の殺人未遂騒ぎは、結局 夫婦喧嘩ということで処理されていた。
 妹が圭子さんと連絡が取れなくなったというのは、殺人未遂騒ぎの2か月後。 警察が夫・裕治の元を訪ねると…圭子さんは「他の人と暮らす」という置き手紙を残して出て行ったという。 警察は、また派手な夫婦喧嘩をして、嫌気がさした圭子さんが家出したと判断。 妹が出した失踪届けを、すぐに対処する必要のある事柄とは捉えなかった。
 
 
photo  そうして三か月が過ぎたころ… 新しい管理官がこの警察署の捜査一課に赴任して来た。 管理官というのは捜査の陣頭指揮をとる人物である。 その管理官は、圭子さんの失踪の件をもっと詳しく調べる様に、担当刑事たちに指示を出した。
 実は…彼は 以前、家出人を捜索する部署のトップを務めたことのある敏腕刑事だったのだ。 圭子さんの失踪について、裕治のもっともらしい説明だけでは、納得出来なかったのだ。
 
 
photo  こうして捜査は大きく動き始めた。 するとまもなく…謎めいたひき逃げ事件が見つかった。 それは圭子さんの失踪届が出される、およそ2年前のこと。 深夜の国道で初老の女性がひき逃げ事故にあったという通報が入ったのだが、その女性というのは…裕治の母親だった。
 裕治は母親と一緒に実家に住んでいて、事故はちょうど家の前の国道で起こった。 実家の敷地内には、裕治の兄・清の家もあった。 事故のあった日はたまたま姉が遊びに来ていた。 兄も家の前で起きた事故ということもあり、飛び出してきていた。 母親は頭部を激しく打っていて、救急搬送されたが 手の施しようもなく、その後命を落とした。
 
 一家全員がその場に居合わせたため、裕治の妻・圭子さんもそこにいた。 事故を目撃したのは姉の和代だった。 遊びに来ていた和代は、兄の清の家から自転車を借りて帰ろうとしていたという。 その時、母親が家の外まで見送りに出たのだが、和代は手提げ袋を忘れたことに気づいて、いったん家の中に戻った。 母親は和代が乗って帰ろうとした自転車を支えて、道路の脇で待っていたという。
 
photo  姉の和代は…トラックが通り過ぎる音と同時に自転車が倒れる音がした。慌てて家から飛び出たら、母が倒れていた。それからトラックのナンバーを確認したと、駆けつけた警官に証言。 そして、問題のトラックは、4キロほど離れた路上を走っているところを発見され、運転手の身柄も確保された。
 しかし、ドライバーは当たった感触がないと、ひき逃げを否定。 また、トラックにも自転車や人とぶつかった痕跡は、見あたらなかった。 それでも警察は、裕治の母親がトラックに煽られて倒れた可能性などもあると考え、運転手をひき逃げで起訴した。 しかし、裁判所は証拠不十分として、運転手を不起訴処分としたのだ。
 
 
photo  管理官は…「ひき逃げ事件の前後に、裕治の周りで何かが起こっていたはずだ」と、あくまでも裕治にこだわった。 すると…ある事実が発覚する。 ひき逃げ事故の少し前…不動産の売買を引き受けた裕治は、取引の際 不正に金を着服したと、横領の罪で裁判所に告発されていたのだ。 だが…判決がでる直前、裕治は突然 全額支払いをしたという。 そのため、裕治は刑務所に入らずにすんだのだ。
 さらに、亡くなった母親は生命保険に入っており、裕治は4000万円近くの金を手に入れていた。 それで、横領した金の埋め合わせしたのではないか? もし、母親の死が『ひき逃げ事故を装った殺人』なら、裕治の姉の和代も怪しい…
 
 
photo  管理官は、さらに4人の刑事を専属の捜査員として加え、疑惑の解明に挑んだ。 裕治の母親は、事故で死んだと思われていたため、しっかりとした鑑定は行われていなかった。 そこで、事故直後の母親を写した写真を医者に見てもらった。 すると…トラックのひき逃げ事件にしては、不自然だと言う。
 もし、トラックにぶつかったり、煽られたりして道路に頭を打ったなら、傷は頭の上部ではなく、側面にできる可能性が高い。 しかし、裕治の母親の傷は、頭の上部に集中していた。 写真での鑑定だったため、確実とは言えないが、またひとつ疑惑が深まった。
 
 圭子さんの失踪届から8ヶ月。 さらに、刑事たちの地道な捜査と聞き込みよって、裕治の一家の全体像も浮かび上がってきた。 裕治には前科があり、大学生の時、交際していた女性の両親に結婚を反対されたため、カッとなってナイフで相手の両親にケガを負わせていた。
 
photo しかし、母親は溺愛しており、傷害事件が起こった後も、相変わらず甘やかしてしていた。
 一家の結束は固かったが、近所からは孤立していた。 母親と裕治、そして姉の和代は特に親密だった。 三人は勝ち気な性格で頭の回転も速く、よく似ていたという。
 一方、長男の清は、堅実で穏やか性格で、10年ほど前、鍛冶屋だった父親がなくなったあと、仕事を引き継いでいた。 作業場は、実家の敷地の片隅にあった。 そして、裕治は 真面目な清をバカにするような素振りをみせることもあったという。
 
 
photo  一方、圭子さんの失踪について捜査を進めていた警察は、その行方について、なかなか手がかりを掴めずにいた。 圭子さんの失踪届を出した妹の元を、刑事たちは度々訪れ、様子を伺っていた。 その時、妹の様子がおかしいと感じた刑事たちは、「何かあったのなら、是非、聞かせてください」と言った。
 すると…妹は、ずっと言えなかったことがあると言うのだ。 実は、圭子さんは連絡が取れなくなる前に、「裕治の〝秘密〟を知っている。命が狙われるかもしれない」と言ったという。 さらに、圭子さんは裕治の母親が亡くなった夜のことを、妹に打ち明けていたというのだ。
 
 
photo  事故のあった夜、裕治と和代、母親は遅くまで居間で話しをしていたという。 夜の10時頃、圭子さんはお風呂に入った。 すると、悲鳴が聞こえたため、気になった圭子さんが様子を見に行くと、玄関のところで裕治の母親が倒れており、裕治の手には血の付いた鈍器があったという。 裕治は、「これがバレたら死刑になる。見なかったことにしてくれ。これで必要な金が入ってくるんだ」と圭子さんに言ったという。
 そして、圭子さんの話しは恐ろしかったが、何より、母親の死を裕治と和代がひき逃げ事故に見せかけたことを警察が簡単に信じたことが恐ろしかったという。 そのため、今まで警察に話すことができなかったという。
 謎めいたひき逃げは事故ではなく、殺人。 妹の証言により、裕治の犯行の全貌が浮かび上がってきた。 しかし…事故は3年も前、決定的な証拠を見つけることは困難。 しかも裕治と和代が、口をそろえてウソをつけば、妹の話の信憑性は、揺らいでしまう。 突破口となる、何かが必要だった。
 
 
photo  警察は、一度、裕治と和代の二人を呼び、任意で取り調べを行ってみることにした。 2人の供述は口裏を合わせたように一致していた。 観念させるためには、証言の矛盾を見つけ、突き崩すしかない。
 そんな中、刑事たちは、聞き込みを強化するとともに、ひき逃げ事故や裕治たち一家について集められた、情報を徹底的に洗い直した。 そして、あることに気がついた! その証拠に目をつけた捜査本部は、裕治たちの言うひき逃げ事故を再現して実際に検証した。
 
 
photo  そしてついに、捜査員の逆襲が始まる。 刑事は、トラックの運行情報の記録を和代に見せた。 事業用に使用されるトラックやバスなどには、運行記録計と呼ばれる計器の装着が義務付けられている。 これによって何時何分に、どのくらいのスピードで走行していたかが、自動的にグラフとして この円形の紙に記録される仕組みとなっていた。
 この運行記録のグラフを改めて分析してみたところ、事故があったという時間、トラックは時速40キロで走っていたこと分かった。 和代は玄関先で自転車が倒れる音を聞いて道路までかけ出し、母親を抱き起こしてから、トラックのナンバーを確認したと証言していた。 警察が同じ場所で何度も検証実験を行なった結果、トラックのナンバーを見るまでに、最低でも10秒近くかかることが判明。 トラックは、時速40キロで走っている場合、1秒間に11メートル進む、10秒では、110メートル進んでいることになる。 それは、走り去る車のナンバーを目撃できる距離ではなかった。 最初からトラックのナンバーをチェックするためにその場にいた以外考えられなかった。 姉の和代は、ついに、ひき逃げ事故が偽装だったことを認めた。
 
 
photo  では一体なぜ姉弟は、母親の殺害という恐ろしい考えを抱くようになったのか? きっかけは裕治だった。 横領で告発された時、裕治は起訴を免れるため、母を利用しようとした。 横領した金を、母が失くしたことにして、犯罪ではなく あくまでも不慮の事故、そうごまかすつもりだった。 当初、母は裕治に協力した。
 しかし、警察の厳しい質問に耐えきれず…息子に頼まれたことを打ち明けてしまった。 裕治は激怒。とはいえこのまま何もしなければ、逮捕されてしまう。 そこで裕治はついに…保険金のため、母親の殺害を決意したのだ!
 
 
photo  母親殺害の半年前。 計画実行のため、姉と兄をドライブに誘いだした。 なんと裕治は、姉と兄の二人に母親殺害の計画をもちかけていた。 完全犯罪のためには、家族全員の協力が必要だと考えたのだ。 最初反対はしたものの、最終的に和代は協力することを決め、清は黙認することにした。
 
 
photo  そしてついにこの日、悪魔の計画が実行された。 裕治はコンクリートの塊のようなモノをタオルにくるみ…母を撲殺。 裕治は、妻の圭子に関しては、強引に丸め込めると高をくくっていた。 そして、家の前の国道を通りかかったトラックに ひき逃げされたことにした。
 姉は引き逃げした車のナンバーを目撃したと警察に話し、裕治と兄は、姉の言葉を裏付ける証言をした。 その場にいた兄弟全員が口裏を合わせた、完全犯罪だった。 トラックの運転手はその後、証拠不十分で不起訴になったが、裕治は4千万円近い母親の生命保険金を手にした。
 
 
photo  警察の捜査によって、ついに白日の下にさらされた母親殺し。
しかし、裕治は あくまでも容疑を否認し続けた。
 裕治と姉・和代が逮捕された二日後。 刑事たちは、兄・清の作業場を訪ねた。 実は、圭子さんが行方不明になったころ、この作業場に裕治が大きな段ボール箱を運び込んでいたという目撃情報があったのだ。 それは、裕治と姉の和代が逮捕されたというニュースが駆け巡ったあと、近隣住民からもたらされた情報だった。 さらに、作業場に穴を掘っていたようだという話しも出てきていた。
 
 
photo  逮捕から4日、裕治はあいかわらず容疑を否認し続けていた。 警察は、兄の家の強制捜査に踏み切り、作業場の床下を掘り起こした。 埋められたダンボールの中から、白骨化した圭子さんの遺体が発見された!
 偽装事故1年2ヶ月後。 殺害のきっかけは…裕治の女癖の悪さだった。 「さっさとあの女のところに行きなさいよ!その代わり、全部バラしてやる」 圭子さんは裏切られたショックで、つい、危険な言葉を口にするようになっていた。
 
 
photo  そして一ヶ月後…裕治は口封じのため、圭子さんの殺害を決意。 この時も、姉と兄は反対したが、最後は押し切られた。 裕治が圭子さんを殺害したのち、3人で協力して、遺体を処理することにした。
 ところが…圭子さんは、間一髪で裕治の手を逃れ警察に駆け込んだのだ。 裕治は、圭子さんの機嫌をとって、何とかその場をおさめた。
 しかし計画は終わらなかった。 今度は兄と二人がかりで、圭子さんに手をかけると…裕治は遺体を段ボール箱に詰めこんだ。 それから兄の作業場に運び、二人で埋めたという。 警察の不屈の捜査によって、三人の兄弟による恐るべき犯罪がついに明るみに出たのだ!
 
 
photo  だが、これですべてが終わったわけではなかった。 殺人の主犯は裕治だったが、姉の和代と兄の清は、なぜずるずると犯罪に引き込まれたのか? なぞを解くカギは、兄、清の作業場で圭子さんの遺体が見つかった際、思いがけない形で警察の耳に入った。
 その時、作業場の周囲には、近隣の住民が集まっていたのだが…
「あの……見つかったのは、圭子さんだけですか?」と、警察に聞いて来たのだ。
 近所の人によれば、今回の連続殺人事件の前から、裕治の家の敷地には死体が埋まっているのではないか? という噂が絶えなかったという。 そして、その噂のもとになる出来事が実際にあったというのだ!
 
 
photo  警察は、兄の清にその出来事について聞いてみた。 清は、もう隠し事をする必要はないと腹をくくったのか、静かに話しはじめた。
 その20年前の冬。 父親の清吉あてに運送会社の三輪車が荷物を運んできた。 送り主は、傷害事件を起こして 関西の大学を退学になったばかりの裕治だった。 その荷物を追うようにして裕治が帰宅すると、父親の指示で、作業場の土間に穴を掘って埋めたという。
 荷物の中身は…死体だった。 兄・清によると…裕治が人に頼まれて殺した男だったという。 そして、1年半ほどたったころ、死体を跡形もなく処理するために、掘り起こして焼くことにした。 作業場の中で焼きはじめたのだが、まもなく、変な臭いがすると近所の人が騒ぎだした。 火葬は中止されたが代わりに死体を砕き、硫酸をかけて溶かしたという。
 
 
photo  この話を聞いた捜査本部は、当時行方不明になった人物に該当する者はいないか、徹底的に調査。 だが遺体が発見されなかったこともあり、身元をつきとめることはできなかったという。 しかし、20年ほど前のこの出来事は、裕治の連続殺人を止めることができず、兄と姉が巻き込まれた 最初の事件である可能性が高いと警察は考えた。 だが殺人は…人としての一線をはるかに越えていた。 にも関わらず、父親は 息子の犯した罪を家族ぐるみで隠蔽。
 一家から殺人犯が出れば、世間の厳しい目にさらされ、他の子供たちの未来にも陰を落とす…そう考えたのかもしれない。 しかし、結果、一人よがりの行動に歯止めが利かなくなった。
 
 
photo  裕治は、安定した生活を守りたいという家族の願いにつけこみ、兄や姉を犯罪に巻き込んでいった。 協力してくれなければ、平穏な生活なんて望めなくなる。 将来だってめちゃくちゃだ。 彼にとって家族は、都合のよい存在でしかなかった。
 母親を横領事件に巻き込み、金に困れば保険金目的で殺す。 兄弟を加担させることにためらいもない。 そして、連続殺人事件によって、裕治の身勝手さは、ついに 一家を崩壊させたのだ!
 
 
photo  裁判で、兄の清と姉の和代には、懲役15年。 そして裕治には、死刑の判決が下った。 連続殺人事件から20年後、裕治の死刑は執行された。
 警察の不屈の捜査は、事件のナゾを解明しただけでなく、ある一家の底知れぬ闇まで明らかにした。 もし彼らがいなければ、完全犯罪が成立。 真相は未だ、藪の中だったかもしれない…