7月24日 オンエア
新婚夫婦を惨殺★密室に侵入した男!?
 
 
photo  1975年5月。 この日、新婚の杉本俊夫・小百合(仮名)夫妻が関西地方にある団地に引っ越して来た。 夫婦が引っ越して来たのは、元々違う家主が購入して暮らしていた部屋だった。
 家主は大手企業で管理職を勤める、田中浩市(仮名)さん。 彼は団地の一部屋をマイホームとして購入したのだが、あいにく転勤することになってしまったため、部屋を貸し出すことにしたのだ。
 
 
photo  しかし、新婚生活が始まってわずか3ヶ月、信じられない悲劇が起こる! その夜、関西地方に暴風雨が吹き荒れていた。
 女性の声で110番通報があったのは、夜が明けた早朝。 その後、声が途切れてしまったが、逆探知によって場所が突き止められた。 俊夫さんと小百合さん夫妻の部屋だった。 駆けつけた警察官が呼びかけても応答はなく、ドアには鍵がかけられていた。
 
 
photo  警察は隣の部屋の住人に許可をもらい、ベランダ伝いに新婚夫婦の部屋に移動した。 しかし、ベランダのサッシもしっかりと施錠されていた。 やむを得ず、窓ガラスを割って部屋に入ると・・・大量の血痕! そして、寝室の布団の上に滅多切りにされ、瀕死の俊夫さんの姿があった。 さらに、電話の前にも深い傷を負った、妻・小百合さんの姿があった。
 小百合さんは110番通報で力尽きたのか、間もなく命を落とした。 俊夫さんも、懸命の手当もかなわず、翌日、亡くなった。
 
 警察が現場を調べたところ、凶器の手オノがソファーのクッションの下から発見された。 しかし、指紋など犯人に結びつく物は見つからなかった。 警察はすぐさま捜査本部を設けた。
 瀕死の俊夫さんがハンチング帽を被った見知らぬ男に襲われたという証言を残していた。
 
photo さらに、刑事たちが近隣住人に聞き込みを行ったところ、 夜中の3時頃、杉本夫妻の部屋の前でウロウロしていた不審なハンチング帽を被った男が目撃されていたのだ。
 ハンチング帽を被った謎の男。 この男が新婚夫婦を殺害したのは間違いないだろう。 しかし、ドアには鍵がかかっており、ピッキングされた跡もなかった。 またベランダのサッシも施錠されており、部屋は完全な密室だった。 男は一体どうやって侵入し、2人を殺害したのか?
 
 
photo  団地を販売した不動産業者に確認したところ、この部屋の玄関のオリジナルの鍵は3つ存在し、その全てを大家である田中さんが持っていた。 その3つの鍵 すべて、新婚夫婦へと渡されていた。 警察は、よく新居を訪れていた妻・小百合さんの母親にも確認をとった。 母親の証言によると、鍵は3つあり、そのうちの1つを母親が預かっているという。 残る2つは、新婚の2人がひとつずつ使っていた。
 夫婦は家にいる時、テレビの上に鍵を置いていた。 しかし、事件があった日、その鍵にちょっとした異変が起きていた。 新婚の2人が使っていた2個の鍵のうち、1個はリビングのテレビの上にあったのだが、なぜかもう1個は玄関に落ちていたのだ。 そのため警察は、犯人は夫婦に致命的な傷を負わせた後、リビングから鍵を取り、施錠したあと郵便受けから鍵を投函したと考えた。
 
 
photo  3つの部屋の鍵は新婚夫婦と小百合さんの両親が持っていることが確認され、入居してから合鍵が作られた形跡もない。 さらに現場には夫婦の財布が残されていた。 そのため金銭目的ではなく、嫉妬など感情のもつれや、えん恨が犯行の原因だと考えられた。 ということは、夫婦の2人か、あるいは妻か夫のどちらかが犯人を招き入れた可能性が高いと現場の刑事は推理した。
 ところが、夫の俊夫さんは犯人は知らない男だと証言している。 犯行の行われた深夜に、俊夫さんが知らない男を招き入れたとは考えにくい。 しかも彼は、普段から真面目に事務の仕事をこなし、恨まれるようなことは一切なかった。
 残された可能性は、妻の小百合さんが何らかの理由で犯人を家に入れたということ。 その直後、犯人は俊夫さんに深手を負わせ、小百合さんと何か込み入った話をしているうちにカッとなり、彼女のことも斬りつけたのではないか、こうした推理が浮上したのだ。
 
 
photo  捜査当局は、妻の顔見知り、えん恨の線で絞り込み、捜査を進めることにした。 小百合さんは結婚前、俊夫さんの会社の近くにあるタバコ屋の看板娘だった。 気さくで男性客に人気があり、俊夫さんも彼女に憧れていた。 小百合さんもまた、俊夫さんの真面目な人柄に惹かれ、人生の伴侶に選んだ。
 だが、男性客の中に彼女への思いを勝手に募らせ、つきまとっていた人物はいないのか? 小百合さんの周囲の男性関係について、警察は徹底的に調べた。 しかし、小百合さんにやましいところは一切なく、浮ついた話は出てこなかった。 またストーカーのような男も見つからなかった。
 警察は念のため、彼女の両親からも話を聞いた。 だが、小百合さんは奥手で俊夫さんと出会うまで、男性とつき合った事はなかったという。
 
 
photo  両親から話を聞いた時、刑事は夫妻から預かった鍵を見せてもらった。
その時、刑事は何かに気がついた!!
 夫婦が持っていた2つの鍵と両親が預かっていた鍵は、メーカーの刻印が異なっていた。 それぞれを調べてみたところ、両親の鍵はスペアキー。 つまり、合鍵であったことが判明した。 当時は一般の人が鍵に記された刻印を気にする事などほとんどなかった。 新婚夫婦と両親は、それぞれオリジナルの鍵だと思っていても不思議なことではない。
 だが、不動産業者によれば、オリジナルの鍵は3つ存在したはず。 なぜその1つがスペアキーに変わっていたのか?
 
 
photo  刑事たちは大家の田中さんの元を訪ねた。 大家である田中さんは 転勤する1年前、同僚達と飲んだあと、電車とタクシーを乗り継いで団地に帰宅した。 だが、帰宅途中にクレジットカードや身分証、そして鍵などを入れていた定期入れを落としたというのだ。 その時、クレジットカードを悪用され、被害総額は100万円を軽く超えてしまったという。
 捜査当局はすぐに裏付けをとった。 遺失物届けも出されており、大家の田中さんが鍵を失くしたのは間違いなかった。 今より防犯意識が高くなかったこの時代、鍵を失くしても錠前ごと交換する家庭は少なかった。
 
 
photo  犯人は落とした鍵を拾った人物に間違いない。 犯人は一緒に拾ったクレジットカードで高級時計を20個以上購入していた。 そのことから、金に換えるのが目的だと思われた。 そこで警察は質屋をあたることにした。
 質屋を利用する時、必ず書く事になる取り引きカードには、住所氏名の記入の他に、指印を押す必要があった。 犯人は身元がバレないようにクレジットカードと一緒に拾った田中さんの身分証を使っている可能性が高い。 だとすれば、田中さんの名を騙った人物の指紋が手に入れば、その尻尾をつかめるはず。 しかし、取り引きカードに押された指印は、指紋の照合が出来ないよう、巧妙にずらしてあったのだ! 指紋を割り出されるのを警戒して指印をずらすのは、前科者によく見られる手口だった。
 
 
photo  刑事たちは、さらに入念に捜査を続け、近隣の質屋をしらみつぶしにあたった。 すると・・・ある質屋で、指紋の照合が出来る指紋が見つかった!! 犯人の押した指印が不鮮明だったため、店主は2度もやり直しをさせていた。
 犯人のはっきりとした指紋が手に入った! そして指紋を照合した結果、警察はある人物を逮捕した。 38歳の元タクシー運転手、鈴木祐介(仮名)。 鈴木は、窃盗の常習犯で18回もの逮捕歴がある。 10社近いタクシー会社を転々としていた。
 
 刑事たちは、鈴木が働いていたタクシー会社を捜索。 すると、大家の田中さんが鍵を失くした日に、タクシーに乗車した区間と同じ区間、鈴木が客を乗せていた事が判明! 大家の田中さんは、鈴木が運転するタクシーに乗り、そこに鍵の入った定期入れを落としたとみて間違いなかった。
 
photo  鈴木は、クレジットカードを悪用したことは認めたが、夫婦の殺害は否定。 警察の取り調べに慣れていた鈴木は不適な態度だった。
 しかし、鈴木が逮捕されたというニュースを見て、事件のあった夜、鈴木を乗せたというタクシー運転手が警察に連絡してきていた。 しかも、この男性はかつて鈴木が勤めていたタクシー会社の元同僚だったのだ! 事件があった あの夜、鈴木のほうは運転手の男性に気づいていなかったため、声はかけなかったという。 追いつめられた鈴木は、新婚夫婦殺害を認め、全てを自供した。
 
 鍵と一緒に拾った身分証から、家主の田中さんが大企業に勤めていたことは知っていた。 さらに身分証には自宅の住所も記載されていた。 鈴木はそれを頼りにタクシーで団地へと向かったのだ。 紙袋の中に犯行に使う道具を詰め込んで。
 団地に到着すると、階段の片隅で手袋をはめ、変装用のハンチング帽を被った。
 
photo そして、田中さんの部屋に侵入しようとしたのだが、表札の名前は別人だった。 間違えたのかと思い、近くの部屋を確認した。 近隣住民が目撃していたのは、戸惑う鈴木の姿だったのだ。
 やがて、田中という表札がどこにもないことを確かめた鈴木は、試しに鍵を差し込んでみた。 すると、ドアが開いたのだ! ここまで来た以上、誰の家でも侵入するつもりだった。 何かあった時のための手オノもある。
 
 そして、預金通帳など大物を狙って物色をし始めた。 ところが、夫の俊夫さんが目を覚ました!! 騒がれる前に襲いかかった!! さらに、悲鳴を上げた妻の小百合さんにも手オノを振り下ろした。
 
photo  その後、部屋を物色したが、まとまった金や通帳は見つからない。
大金を狙っていたため、夫婦の財布などには手をつけなかった。
 結局そのまま夜が明け、鈴木は逃亡を決意。 テレビの上の鍵を見つけると、拾った鍵で侵入したことがバレないように、偽装工作をすることにした。 家の中にあった鍵を玄関先に置いて、何者かが部屋を出たあと鍵をかけ、出て行ってから投函したように見せかけた。 鈴木は、犯行に使った鍵も団地の片隅で投げ捨てたと供述。 供述通りの場所から鍵も発見された。
 
 
photo  元同僚によれば、優秀な運転手だったという鈴木。 そんな男がなぜ犯行に及んだのか? 実は、鈴木はこれまでタクシー会社をいくつも渡り歩き、就職と退職を繰り返していた。 そしていつしか、失業保険を不正に受給するようになっていたという。
 事件の数日前、その不正が発覚。 32万円(現在の価格で57万円に相当)の返還を求められた。 大金を急に工面できるはずがない。 その時、鈴木が思い出したのが1年前に拾った鍵だった。
 
 
photo  事件から2年後、裁判で鈴木に死刑判決が言い渡された。 その後、控訴上告するも、高裁はこれを棄却。 刑が確定した。
 そして、悲劇の夜からおよそ20年後、死刑は執行された。 幸せな新婚夫婦の命を奪いさるきっかけは、鍵の落とし物という誰にでも起こりそうな些細な出来事だった。 しかし・・・2人の未来はもう誰にも取り戻すことはできない。