


スペシャルの時はシーン毎に演技を決めていたというか、印象に残る台詞も1シーン毎に出てきました。でも、連続ドラマでは長丁場ということもありますが、わりと自分の印象を消して、物語全体を考えるように演じるシーンが多かったですね。そんなシーンでは、台詞をあまり強く出さないで、比較的抑えめにしています。そして、スペシャルにも増して本当に痛々しいぐらいに姫川玲子を演じている竹内結子さんを、なんとか応援出来るようにと考えていました。
あまり科学捜査を信じない、古いタイプの刑事ですね。また、人間を性善…生まれつき善い生き物とも考えていません。昔は、桜田門(警視庁)のエリートコースにいて、高いところから日本の刑事機構を見下ろすような地位にいたようなんです。ですが、何かがガンテツにあったらしく、逆に出世コースにのった人間に対する反逆みたいなものを宿して、心が苛立ちの陽炎で揺れている男になってしまったんですね。
玲子は心理的にいとも簡単に犯罪者の気持ちが分かってしまう女刑事という設定です。対するガンテツは、ホシ(犯人)を追うためには身銭を切ってまで捜査にあたる刑事。玲子とは全く違う登り口を通って同じ山のてっぺんにたどり着くというか…犯人への迫り方が違う。そんなところに意見の相違も出てくるんだと思います。
設定が上手ですよ。女性特有の“柔らかい感性”で猟奇的な殺人事件に立ち向かっていくのではなく、同じ女性特有の感性でも“危険な感覚”を尖らせていくのが新しいですよね。竹内さんは、どちらかというと強さをアピールするタイプではなく柔らかく穏やかな表現が出来る日本では希少な女優さんだと思います。その竹内さんが“危険な感覚”を持つ玲子を演じて血まみれの事件の中に飛び込んでいくんですから。
俳優としては非常に台詞が覚えづらいドラマでした。刑事物が持っている独特の言葉があって…刑事たちが使う、いわゆる業界用語です。その業界用語と数式のような台詞の絡み合いなんです。だから、台詞をしゃべるんじゃなくて数式を言っているような感じになるんです。XとYとZという被害者がいる。この被害者たちを○○という事件で割ると、ひとつの共通点が出て来る…というようなイメージです。
このドラマは、映画で言うと『寅さん』シリーズではないんですよ。『七人の侍』なんです。侍が七人出て来て、山賊と戦う。その戦いの中で、次々に侍たちが死んでいく。その“死ぬ”ということに、ものすごく重大なストーリーと作品のテーマを持たせている…そんな作品だと思います。その上に、数式のような…物理学のようなサスペンスを重ねていく。それが今の若い方たちに受けているんだと思います。かつての刑事ドラマや小説の展開ではないんですね。犯罪者にものすごいドラマがあるのではなく、犯罪がゲーム感覚で行われる。刑事たちも、事件をゲームのように、まるで数式を解くかのように解決に導く。これが、このドラマの魅力ではないでしょうか。