PARA☆DO!

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対談後記

vol.6

文=田中ウルヴェ京

2016年10月25日

第6回「PARA☆DO!トーク×ライブ」
ゲスト:道下美里選手 (リオパラリンピック 女子マラソン視覚障害クラス 銀メダリスト)

2016年10月20日(木) 開催

田中ウルヴェ京さん

PARA☆DO!サポーターで、トークMCの
田中ウルヴェ 京さんによる対談後記をお届けします。

輝くような笑顔の裏にある、芯の強さを感じます。

輝くような笑顔の裏にある、芯の強さを感じます。

「リオでの道下選手とは違った魅力が、今日見えました」。会場にいらした、パラリンピックを長年取材されている某新聞記者さんのコメントです。確かにリオでの道下選手のマラソン姿は、凛々しく黙々と走っておられるイメージ。今回の対談では、快活で愛くるしい笑顔たっぷりの美里さんが会場を温かくしました。

そもそも美里さんと私、打合わせ部屋での初対面で、ハグしあいました。目が見えない選手とは、よく握手はしますが、握手の時に、美里さんから「良い匂いしますね」と言っていただき、私が調子に乗って、「じゃあハグ!」と強要しまして。その時に美里さん、おっしゃいました。「私、田中さんがシンクロ選手で出場されたソウル大会は、まだ目が見えていた小学生の時で、テレビで見た田中さんはもっと大きいイメージだったんですけど、ハグの位置、低いですね」

自分らしく生きたいという道下選手と、清貴さんの曲のメッセージがまさにマッチしました!

自分らしく生きたいという道下選手と、清貴さんの曲のメッセージがまさにマッチしました!

なるほど・・・「相手の身長情報」も身体感覚で察知できるんだ、と思いました。美里さんは、ご自身の見たもの、感じたものに対しての「言語表現」が明確で豊かです。もちろん目が見えないわけですから、ご自身が外界から受ける情報を様々な感覚で捉えられるのであろうことは想像できますが、ご自身の「内面状況」の出力にも秀でておられる。それはなぜだろうと思ったら、視覚障害マラソンでは重要な役目である伴走者の存在が理由なのだと学びました。美里さんは練習時では、約9名の方が伴走者として関わるそうです。その方々に対して、「今日の伴走は、ここが良かった、この言葉がけが助かった」というようにフィードバックをされるのだとか。それによって、誰が伴走をしても、常に「道下美里」という選手が効果的に向上し続けるチームを作れるようです。

ガイドロープ”絆”を持って、田中さんも伴走者を体験。

ガイドロープ”絆”を持って、田中さんも伴走者を体験。

心理屋の私が興味深いと思ったのは、美里さんにとっての「良い言葉がけは何か?」ということ。「後ろの走者が近づいてくるよ」という言葉よりは、「前の走者まであと少しだよ」の方が「良い」のだそう。これって、選手によって違います。メンタルトレーニング指導においても、「追いつかれるなどの、危機感を感じた方が頑張る選手」と「追いつこうといった未来を示した方が頑張る選手」がいます。美里さんは確実に「前を感じたい」ようでした。

「前へ前へ、もっと前へ」と遠い先を常に目指すかのように、キラキラした目で話す美里さんは、「常に自分らしくいたい、自分の中にある無限の可能性を信じている」ともおっしゃいました。「自分の今ある人生に覚悟を持つ」という主体性の強さを学んだ対談でした。