
世界選手権で解説者を務める金丸雄介さんに、「シロウトでもわかる柔道の楽しい観方」を伺ってきました。
記者:
ということで、まずは私のような柔道ド素人のために、「柔道の醍醐味」を教えてください!
金丸:
正直、それを伝えるのが一番難しいんですよ(笑)。
記者:
そこを何とか!お願いします!
金丸:
そうですね…まず柔道は「相手を投げるスポーツ」ということは是非覚えてください。そして次に「人を投げる事がどれだけ難しい事なのか」を想像して観ると、柔道がグッと楽しくなると思います。
記者:
相手を投げるってのはさすがに知ってます。でも人を投げる事そのものは、頑張れば出来そうな気もしますけど…。

金丸:
多分、出来ます(笑)でも、柔道の選手は「いかに投げるか」と同時に、「いかに投げられないようにするか」を考えながら試合をしています。何も警戒していない相手なら、投げるのは簡単です。でも、投げられまいと必死に抵抗する相手を投げるってことは本当に難しいんですよ。友達に「抵抗していいから投げさせて!」って宣言してから襲い掛かってみてください。多分抵抗されたら投げられないと思います。
あ、本当に投げちゃダメですよ、危ないから(笑)
記者:
なるほど~。でも試合では投げたり投げられたりの場面があるわけですから不思議ですよね。

金丸:
そこがポイントです。抵抗する相手を投げるには、パワー、スピード、テクニック、タイミングなど様々な要素が必要です。
それらの要素を巧みにコントロールして相手を投げるのが「柔道の醍醐味」だと思いますし、実際に投げることが出来る柔道選手たちは本当に凄いんです。
それこそ世界選手権みたいなハイレベルな大会で相手を投げるってことは、本当に、本当~に!凄いことなんですよ(熱弁)
記者:
なるほど…。見た目にも派手ですもんね~。
金丸:
そうですね、投げが決まった時の「豪快さ」も柔道の魅力の一つですね。こっちのほうが皆さんには分かりやすいかもしれませんね。
記者:
ちなみに柔道にはたくさんの技がありますよね?技名とかよくわからないんですけど…。
金丸:
(笑)技の名前を無理して覚える必要はありませんよ。試合でよく見かける技の種類は、実はそこまで多くないので、興味を持って試合を見ていれば自然と覚えちゃうと思います。
記者:
ある程度「お決まりの技がある」ってことですか?
金丸:
はい、敢えて技の名前を挙げるなら「背負投」「内股」「大外刈」「大内刈」「小外刈」「小内刈」の6つでしょうか。この6つが分かれば大抵の試合は大丈夫です。分からない技を見たときは「今の技すごい!」って驚いてください(笑)
記者:
テレビの実況や選手のインタビューで出てくる「組手」ってのもよく分からないんですが…。
金丸:
「組手」が理解できたら、僕の代わりに解説者してください(笑)確かに組手は選手たちも相当意識して練習していますし、柔道において重要なポイントではあります。でも柔道を楽しく見るってことなら、そこまで意識しなくていいんじゃないでしょうか?
記者:
組手ってそんなに難しいんですか?

金丸:
多分、「奥が深い」んです。一言で言ってしまえば「組手」は、“いかに相手に掴ませずに、自分の掴みたい所を掴むか?”の争いです。
よくある例として「お互いにガッチリ組み合っているのに技も出さずにすぐ離れる」なんて場面を見かけると思うんですが、
「お互いにガッチリ組み合っている」状態は、「自分の掴みたい所を持っている」けど、「相手に掴まれたくないところを掴まれてる」状態でもあるんです。だから自分に有利な組手に組みなおすために、いったん離れて仕切り直すわけです。
記者:
…理解できたような、できないような。
金丸:
だから考えなくていいんですって(笑)ただ試合を見ていて「技、出てない!」とか「組み合ってない!」なんて思った時に、「なぜ技が出せていないのか?」「なぜ組み合えないのか?」その理由を考えてもらえると、こう着状態の地味な試合も、少しは楽しく見られるかもしれませんね。
記者:
ちょっと話は変わりますが、柔道には体重ごとに「階級」がありますよね?観方に違いはありますか?
金丸:
観方は変わりませんが、階級ごとの特徴はあります。軽い階級はスピード、重い階級はパワー、中間の階級はパワー・スピードを兼ね備えたバランスのいい選手が多いですね。
記者:
ということは、その特徴がそのまま勝敗の分かれ目になるんですね?
金丸:
いやいや、それがそうでもないんです。
記者:
え?違うんですか?

金丸:
例えば軽量級だと「よりスピードのある選手が勝つ」と誤解されるかもしれません。でも見方を変えれば「軽量級は早くて当たり前の階級」とも言えます。だからスピードで相手を圧倒しようとスピードを鍛えてもそこまで大きな差を付けられないことが多いんです。各階級の特徴と合わせて、それ以外の「武器」を持っているか、これが勝敗を分けるポイントになると思います。
記者:
具体的にはどんなことですか?
金丸:
軽量級なら、世界のトップ選手は「パワー」を磨いていますね。重量級の選手よりもムキムキの体をしている選手も多いですよ。逆に重量級のパワーある選手が「スピード」も持っていたら、ものすごく強みになります。世界のトップ選手それぞれが磨いている「武器」が何なのか?そんな視点で世界選手権を見ると、日本人選手以外の試合でも楽しく観られるかもしれませんよ。
記者:
実際に戦っている柔道家の観点で「ここを観てほしい!」って所はありますか?
金丸:
あるんですかね?(笑)僕が会場やテレビで観ている時にいいなと思うのは、選手の入場前の顔ですね。覚悟を決めた、引き締まった表情はやっぱりカッコイイですから。
記者:
勝った時のガッツポーズとかもカッコイイですよね!
金丸:
そうですね。でも、実はガッツポーズは「優勝が決まった瞬間以外は見られない」はずなんです。
記者:
そうなんですか?

金丸:
柔道は基本的にトーナメント制ですから、決勝以外で喜んじゃうと「そこで満足しちゃった」みたいに見えちゃうので、皆、意識してしないようにしているはずです。
もし優勝シーン以外でガッツポーズが見られたら、ライバルに勝ったとか“ものすごく嬉しい理由があって、思わず出ちゃった”感じかと(笑)
記者:
柔道は展開も速いし、テレビで観るのが一番分かりやすいですか?
金丸:
分かりやすさだけなら、テレビでしょうね。でもやっぱり僕も選手だったので、ぜひ会場に足を運んで観てほしいです。会場の応援の声って、実は選手には結構届いてるんですよ。
記者:
そうなんですか!でも大して柔道知らないのに、なんて声かければいいのやら…。
金丸:
コレもある程度「お決まりの文句」があって(笑)試合開始直後なら「先に、先に!」、こう着状態なら「いけよ~!」、 組手を持ったら「ガッチリ~!」「離すな~!」、 後はどんなシチュエーションでも使える「○○選手ファイト~」 みたいな感じで(笑)
記者:
…会場で1人で声を出すのは、度胸が必要です…
金丸:
(笑)そういう時は「応援団」に近づいていくといいです。日本での試合の場合、選手それぞれに、会社や大学の応援団がきていますから、応援したい選手の応援団のそばで「○○選手ファイト~!」って応援していれば、多分応援用のハッピを貸してくれると思います。後は応援団に混ざって一緒に応援しちゃえばいいわけです(笑)
記者:
なるほど、盛り上がりそうです!では、金丸さん、最後に一言。
金丸:
判定になることもありますが、柔道は割と「白黒がつきやすいスポーツ」だと、僕は思います。どっちが勝ったかわかりやすいので、知識無しでも観ていられるスポーツじゃないかと。ですからあまり考えすぎずに、豪快さを「感じてほしい」ですね。あとは、今年の世界選手権は52年ぶりに東京開催ですし、ぜひ会場に足を運んで、トップレベルの熱い戦いを、リアルに体感してほしいです。
記者:
金丸さん、ありがとうございました!
~皆さんもぜひ、会場に足を運んで、世界の柔道を体感してくださいませ。
