フジテレビバスケットボール

第9回 大阪エヴェッサ・木下博之選手

「ベテランとしての経験値を武器に、6%まで体脂肪を絞り込んだキレのある身体で今季に臨む」

体脂肪を落としたことで、今季はよりキレのあるドライブが見られるかも

B1のポイントガードにはベテランが多い。その代表格として、田臥勇太(栃木ブレックス)、五十嵐圭(新潟アルビレックスBB)の名前が出てくる。しかし、昨シーズンのB1最年長の先発ガードが、大阪エヴェッサの木下博之なのはあまり知られてない。 ケガで11試合欠場したといえ、出場した49試合中48試合で先発し、出場時間24分で平均7.1点をマーク。 ランク入りするためのリーグ基準に届いていなかったといえ、3.2アシストはトップ15に入る数字であり、出場時間で木下より短くてアベレージで上回るのは、田臥と篠山竜青(川崎ブレイブサンダース)のみ。 日立(現サンロッカーズ渋谷)での一昨シーズンよりもわずか0.5分出場時間が伸びただけで、得点が2、アシストで0.4本も数字を伸ばしていることでも、37歳の大ベテランになっても貴重な戦力であることに疑いの余地はない。

37歳になっても経験豊富な司令塔として、先発PGの座を維持している

「一番いいときから今に至るまでを知っていて、すごく刺激にはなりますね。プレースタイルも知っていますし、どうチームを引っ張っているのか、プレー以外の部分でも見るようにはしていますね」

1学年下といえ1980年生まれの田臥は、木下にとっていい刺激を与える存在であると同時に、若い選手にまだまだ負けないという強い意識をもたらす。
衰えを感じつつも進行させない身体作り、長年のプレーで得た経験値を武器に賢いプレーをすることが、トップリーグで生き残っていける要因。
信頼される戦力であり続けるために木下が重要視しているのは、「バロメーターは体重あたりで、体のバランスも長年の経験で大体わかる。そういったところをトレーナーと相談しながら、いい状態を保てるように心がけています」という日頃のトレーニングと身体のケアだ。
「動けないレベルではないですけど、ひざが悪いので、そこへの負担を避けるためです。今年は走り込みが多いですね」と話す木下は、このオフに体脂肪を6%まで落とすことに成功。
昨シーズン途中で故障し、戦列から離れてしまってチームに迷惑をかけたという悔しさ、ケガなくフルシーズン戦えるための準備に力を入れてきた。それは、チームの勝利に貢献したいという強い気持の表れでしかない。

昨シーズンのエヴェッサは、終盤に勝てる試合を何度も落とし、土壇場でbjリーグ時代からのライバルである琉球ゴールデンキングスにチャンピオンシップの出場権を明け渡す屈辱を味わった。
しかし、今季のチームはブレックスで優勝を経験した熊谷尚也、岩手ビッグブルズで桶谷大コーチの下でプレーしていた寒竹隼人の加入で、スモールフォワードのサイズアップに成功。
サンロッカーズから移籍してきた藤髙宗一郎は、熊谷とともに運動能力の高さをチームにもたらす。
ただし、外国籍選手の3人も新加入ということもあって、8月の練習はチームのケミストリーを構築している状態。
「課題だらけですね。どこのチームもそうだと思いますけど、(選手が)集まってきたチームというはまだ呼吸が合っていないとか、遠慮といったものが最初絶対あると思うので、徐々に徐々に、少し急がなければならないけど、いいチームにしていかなければと思っています」と、木下は現状をこう説明する。

しかし、サイズと身体能力を兼備した日本人選手が増えたことで、ディフェンス力の向上を期待できるのは確か。
機動力のある外国籍選手が加わっただけに、「リーグで戦っていくにはこのサイズと身体能力、走力があるのだったら、ディフェンスから組み立てられるチームが理想かなと個人的には思っています」という司令塔の言葉からすれば、今シーズンのエヴェッサはタフなディフェンスからのトランジションで得点する機会が増えるかもしれない。
エディオンアリーナ大阪で開催される関西アーリーカップについては、「リーグ戦もそうですけど、最初ってどのチームも結構バラバラなんですよね、経験上。優勝するようなチームでも、開幕あたりは試合感覚がなかったり、バラバラなんですけど、それをこのアーリーカップで試せるのは、すごくいい機会だなと思います」とコメント。
これは、今シーズンに向けていい準備ができていることを示すと同時に、勝つことが自信を積み重ねるうえでの第一歩になることを意味する。もちろん、木下の目標がB1の頂点であることは言うまでもない…。

視野の広さを生かしたアシストは持ち味の一つ