KIKCHY FACTORY

TV LIFE 連載:KIKCHY FACTORY
#25(01/05/09)



「100年たったら」もう一度会おうよ

 河島英五さんが亡くなりました。

 逢って知る限りの河島英五さんは、ほんとうに男でした。自分とはジャンルの違う、自分が絶対になれやしない、大人の男のひとつの理想のありかたでした。幾度かお仕事をさせていただきました。いつも、やさしい男の悲しいうたを力まかせにうたってくれました。

 河島英五さんと出逢った曲はもちろん、言わずと知れた「酒と泪と男と女」だったのですが、衝撃を受けたのがそのB面「てんびんばかり」。聴いたのはちょっと遅れて高校時代、弓道の新人戦の会場から近くの駅までドリンク剤を買いに出かけたその帰り道、パチンコ屋から流れてきたのがこの曲。ショックでした。小学校のころ聴いた拓郎さんの「イメージの詩」みたいに、高2のわたしに突き刺さりました。そしてレコード屋さんで探してみつけてこずかいはたいた2枚組「LIVE てんびんばかり」。ほんとうに擦りきれるぐらい、この1曲、何度も何度も何度も聴きました。

 大学に入ってフォーク村というサークルに入って、そこで学んだ河島英五さん。定番だった「タンバリンをたたいておくれ」そして「100年たったら」。河島英五さん好きの先輩が何人もいて、ライブの度にそして酔うほどに、ギターかき鳴らしてうたっていました。原始共同社会?への漠然とした憧憬。仲間。友達。そしてお酒。たぶん「仔犬」だった、わたしのわたしたちの学生時代。出かけはじめたカラオケで「酒と泪と男と女」なんでだか就職がキマった夜にもうたっていました。

 会社に入って考える暇も浸る暇もなく、気がつけばディレクターとして河島英五さんとお仕事していました。言葉のやりとりが全部で何回あったのかそんなこともわからないけど、ライブでわたしを見かけたと話してくれました。なんかうれしかったな。

 友達の結婚式の前の晩、仲間がカラオケボックスで飲んで飲んで飲まれてうたった「時代おくれ」いいうたでした。うたはうまいへたじゃないよね。阿久悠さんはなんで河島英五さんのことばを書けたのだろう。これもまたずいぶん遅れて、わたしのテーマソングになりました。それをいいわけに「LOVE LOVE」のパーティでは「一年一度」酔っぱらって。ふだん上手に飲んでるとは言えませんが、もちろん。

 今ものすごく悲しいし信じられないし。でもなんかきっと飄々と、天国の庭で何もかも笑い飛ばしてるんだろう、って思えてしまう。ひさしぶりにアナログ盤を引っぱり出して、いつものように飲んでます。

 やすらかに。


フジテレビ きくち



モドル




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