レポート

TV LIFE 連載:KIKCHY FACTORY
#104(04/06/09)インタビュー
×佐野元春さん
2004年5月15日 夕方
『僕らの音楽』収録のあと
お台場 フジテレビ 楽屋でインタビュー

きくち
今日はお疲れさまでした。「ロックンロール・ナイト」を聴いた今、自分の中にいろんな思いが押し寄せてきて…ちょっと言葉が見つかりません。
佐野
あの曲は聴く人それぞれが自分を投影してくれる曲ですからね。だからライブでは誰に聴かせるでもなく、天に向かって歌うようにしてるんです。
きくち
楽曲としてはもうかれこれ、20年以上前の曲なんですよね。
佐野
ええ、当時20代前半だった僕の怒りや喜びが、たくさん詰まってます。それをどうにかまとめようと思ったら、あんな長丁場の曲(8分41秒)になっちゃったんですけど(笑)。あれは若かりし頃にしか書けなかった、レアな曲だと自分で思ってますね。
きくち
もう1曲「サムデイ」は、いろんな人たちにとって思い入れの深い曲で…松本人志さんも、昔新幹線の中で聴いた思い出の曲だと。なんていうか…2004年の「サムデイ」は大人になりましたね。
佐野
そうかもしれない。曲自身は変わらないけど、僕が過ごしてきた20数年の歳月、人生の経験が歌に表れてきますよね。だから昔の「サムデイ」とは違うかもしれないけど、その時の年齢の「サムデイ」を素直に歌おうと。むしろ、今だから初めて発せられるメッセージもあると思うんです。
きくち
今日も「サムデイ」を聴くために、社内外からいろんな人がスタジオに来てましたよ。「いやあ、これだけは聴いておかないと」って(笑)。
佐野
そうですね(笑)、今日の「サムデイ」は今日だけのものですから。
きくち
昔から元春ファンの人と逢うと必ず話題になるのが、アルバム『VISITORS』をどうとらえたか。20年過ぎた今でもあつくなります。1984年当時ラップやヒップホップを取り入れた、あのアルバムは斬新すぎて。ちなみにわたしは“肯定派”でしたけれど(笑)。
佐野
ええ、本当に真っ二つに割れてね(笑)。でも次の世代のクリエーターは、「ああ、音楽は何でもありなんだ」と思ってくれたみたいで。
きくち
確かにそうですね。ほかにも佐野さんはポエトリーリーディングのカセットブック『ELECTRIC GARDEN』を出したり、本当に何でもありな気がします。今度のアルバム『THE SUN』も実験精神にあふれたものなんですか?
佐野
実験というより、僕のソングライターとしての原点に帰ろうかなと。もう10代でも20代でもないし、彼らの心情や生活をわかったふりもできない。今の僕のままで、20代や30代の人たちをバックアップしたいと思ったんです。
きくち
今の佐野さんのリアリティというか、メッセージ?
佐野
そうですね。離婚した女性の詞や、子供がいる主婦の自由を求める詞、それに君は国のために準備ができているか、というようなね。14曲、14のストーリーに、夢見る力の大切さみたいなものを、メッセージに紡いでいきました。
きくち
昔、佐野さんの曲を聴いて、大人になったときのこととかイメージして「たどり着いているだろうか」とか考えて。それが今、リアルに。
佐野
僕は今、見つけたんだろうか。その問いは僕の中にもありますからね。まあ、サウンド的には昔と共通する部分もありますよ。例えば「月夜を往け」の編曲は「サムデイ」や「ロックンロール・ナイト」と同じ手法なんです。だから今日のオーケストレイテッドなサウンドにも、自然に乗るかなあと。
きくち
そうですね。今日の演奏はとてもスムースな流れでした。
佐野
はい。まあこんなハードな時代にね、「月夜を往け」の詞はちょっとロマンティック過ぎるかなとも思ったんですが。でも夢見る力を失ってしまっては、僕たちは生きてはいけませんから。やっぱりここで、音楽の王道に戻ってみようと思ったんです。
きくち
このアルバムを引っ提げて行う、秋からのツアーも楽しみにしてます。


-- 戻る --

コピー禁止 このページに掲載されている写真はすべて著作権管理ソフトで保護され、掲載期限を過ぎたものについては削除されます。無断で転載、加工などを行うと、著作権に基づく処罰の対象になる場合もあります。なお、『フジテレビホームページをご利用される方へ』もご覧下さい。
著作権について