おとといの水曜日、わたしたちの年にいちばんの大仕事『FNS歌謡祭』が終わりました。30年目を迎えた今年はなんと4時間半の生放送でしたが、視聴率も平均21.2%と他局を圧倒、『トリビアの泉』『ワールドカップバレー』などで勢いが出てきたフジテレビに、音楽班としてやっと貢献できたように思います。
今年はなにより楽曲を優先しようと、例年になく闘ってきました。視聴率が毎年20%を超えていた3年前までの『FNS』は、新曲のプロモーションの場でなく、みんなが知っている年度代表曲をちりばめた、宝石箱のような音楽番組でした。近年『紅白』がそうであるように、テレビ局(番組)と出演者(所属事務所/レコード会社)とのパワーバランスが変わって、年末の大規模な音楽番組もみんな、出る側はその時期の新曲の楽曲プロモーションのために出演するようになりました。それで1年を総括するような音楽番組は成立しにくくなってきて、全体的な音楽番組の視聴率低下傾向も加速してきた感があります。今年の『FNS歌謡祭』はそこをがんばって、お茶の間で誰もがたのしめるヒットメロディーとか時代の名曲とか、いいうたを放送することに相当な努力をしてきました。
SMAP「世界に一つだけの花」や森山直太朗くんの「さくら」をはじめとした名曲の数々は、自戒の意味も込めて、近年の民放の歌番組を見なくなったであろう「お茶の間」で家族そろってたのしんでいただくために、必要であり充分な楽曲でありました。
そしてもうひとつは、そのキラ星の楽曲たちを「音楽」番組の制作者として、胸を張って放送すること。テレビではカラオケをつかっての演奏が前提となってしまっている今日このごろ、あえて生演奏を意識してつくりこみました。女子十二楽坊はもちろん、SMAPも48人もの大編成のストリングスと生で共演、中島美嘉さんはアコースティックギター1本の生演奏でどっきどきに切ない「雪の華」を、一青窈さんの「もらい泣き」はLOVE LOVE ALL STARSのバンマスだった武部聡志さんにもピアノを弾いてもらってのバンド演奏。そして森山くんは「さくら」を1コーラスまるまるアカペラで歌いきって、そのあと48人のコーラス隊と合唱、総計74名の生演奏で圧倒してくれました。
Every Little Thingには一昨年の大ヒット曲「flagile」をテレビではふつうありえないフルコーラスでうたってもらいました。通常『HEY!HEY!HEY!』や他局の夜8時の歌番組では、トーク部分で毎分視聴率が上がって、歌がはじまると下がるというのが悲しい現実ですが、この日のELTは4分超の長い曲中に、視聴率をずっと上げ続けるという快挙でありました。
安室奈美恵さん、SPEED、モーニング娘。のみなさんにはなかなかテレビでは聴けない貴重なスーパーヒットメドレーを演っていただきました。平井堅くんは「見上げてごらん夜の星を」を坂本九さんの貴重な映像とデュエット、柏木由紀子さんもいらしてくださいました。そして復活のMr.Children、テレビ初出演の I WiSH、ともりだくさんの名曲を、板谷ディレクターの丁寧な演出でつくりこみました。
正直4時間半もの長丁場には不安も少々ありましたが、なんていうのか、音楽の神様っているもんだ、と思いました。なかなかテレビの世界は、いいものをつくったからいい視聴率がとれる、とは限らないのですが、今回、自信を持ってサイコーの音楽番組をつくりあげて、そして長時間にわたって高い視聴率を得たことは誇りに思いますし、ご協力いただいた関係者のみなさん、それから制作・美術・技術ほかすべてのわたしたちのスタッフに感謝してやみません。
また来年、今度はもっと高いクオリティをめざし、そしてよりたくさんのお茶の間のみなさんに見て聴いていただけるように、板谷ディレクターとともにがんばります。
フジテレビ きくち
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