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ファイナルを迎えるにあたり、 主人公・火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を 演じ続けた中村吉右衛門による 記者会見が行われました

平成元年に産声をあげた『鬼平犯科帳』は、放送開始から28年、今年12月2日(金)放送の『鬼平犯科帳THE FINAL前編 五年目の客』、12月3日(土)放送の『鬼平犯科帳THE FINAL後編 雲竜剣』(ともに、夜9時から放送)をもって、いよいよファイナルを迎えます。ファイナルを迎えるにあたり、主人公・火付盗賊改方長官・長谷川平蔵を演じ続けた中村吉右衛門さんによる記者会見が、先日都内ホテルで行われました。中村吉右衛門さんは和服姿で会見場に登場、28年間の思い出を振り返りました。

 印象に残った作品について聞かれると、「あまりにも忙しくて(笑)」としながらも、シリーズ1作目の『暗剣白梅香』(1989年7月12日放送)が印象に残っていると語り、監督に「走る、走る、走る、走る、その中で立ち回りをするということで、大変肉体的にも大変でした」と初回の収録を振り返りました。さらに、鬼平の魅力について聞かれると、「理想の上司に鬼平が選ばれたこともありますが、この人について行こう、ついて行ける人物というのはなかなか難しいことだと思います。鬼平はそういう人物に描かれていますので、理想の上司にも選ばれたのだと思います。そこが鬼平の魅力だと思います」と、現代も愛され続けるその秘密を語りました。

記者会見の最後に、視聴者へのメッセージを求められると、「長い間、見ていただいてありがとうございました。これも一重に、池波正太郎先生の小説のお力に頼ってやってまいりました。最後の立ち回りの時に、殺陣師の方が僕のところに来て『これで終わっちゃうんですね』と、ぼろぼろと涙を流して、大の男が大泣きに泣かれた。それだけ皆さんが家族的感覚で撮って下さったのをその時に感じて、本当にありがたかったと思っています。そういったすばらしい方々に囲まれて、28年間作れましたことは本当に感謝しております。次はどなたがやられるか分かりませんが、そういう雰囲気は継いでもらいたいと思います。本当に皆さまのおかげでございます。改めて御礼申し上げます。ありがとうございました」と語りました。

コメント

あいさつ
こういう会見の席を設けていただくと、何かこれから始まるんではという気も致しますが、そうではなくて(笑)。また後ほどご質問をお受けしたいと思います。どうぞ宜しくお願い致します
平成元年に産声をあげた『鬼平犯科帳』は、放送開始から28年、今年12月放送の『鬼平犯科帳THE FINAL前後編』をもって、いよいよファイナルを迎えることとなりましたが、今現在の心境について聞かせて下さい。
“あぁ、終わったんだなぁ”という感じがしております。28年というのは長いですが、シリーズの最初の頃は2、3本を掛け持ちで、台本を3冊持って、次はこれ、次はこれとやっておりましたので、あっという間にすぎてしまいました
28年間という長きにわたり、主人公・長谷川平蔵を演じ続けてこられたわけですが、演じるにあたって気をつけていらっしゃったことなどがございましたら聞かせて下さい。
一番気をつけたのは、やはり体調ですね。私が倒れますと、撮影が中止になりますので。皮肉なことに『鬼平犯科帳』を撮る時期は、舞台がお休みの時で、俗に“二八(にっぱち)”と申しまして、寒い時期と暑い時期。京都の極寒の雪がまだ残る中、長い間、次のシーンのために待っていたり。それも足袋にわらじ履きですから、直にその寒さがきます。夏は京都の暑さの中を、次のシーンを待っている。そんなことも、今は懐かしく思い出しております
長きにわたり、演じ続けてこられた、長谷川平蔵というキャラクターが、ご自身の人生や芸に影響を及ぼしたことなどがございましたら聞かせて下さい
芸と言いますと、私の場合は歌舞伎の舞台ですが、その舞台にどういう影響があったかは自分では分かりません。見ていらっしゃる方が良くなったとか、あるいは芸が荒れたとかおっしゃって下さると、“あぁそうかな”と思ったりしましたね
やはり、歌舞伎の世界とは全く違うものでしたか。
舞台と映像は、全く違いますね。同じだと思われる方もいらっしゃるかと思いますが、私の場合には全く違うものでございました
演じるにあたって鬼平の生き様はどのように感じますか?
鬼平みたいに生きられたらいいでしょうね。あこがれますよ。自分の信念というものを貫き通せる。悪を倒すだけではなくて、悪の中に善を見いだして、それを更正させたり助けてやったり、人間としてこんなにすばらしいことはない。高見に立ってではなく、同じ人間として相手が盗賊であろうが、侍であろうが、偉い人であろうが、そうでない人であろうが。そういう人物でいられるのは、彼の子供の時からのいろいろな苦労がそうさせるのでしょうが、すばらしい人物だと思っています。平蔵みたいになれたらいいなと、いつも思っています
これまでの撮影を振り返っていただき、印象に残っていらっしゃるエピソードなどがございましたら聞かせて下さい。
雪の中で待っていて、おなかが痛くなったりというのは印象に残っていますし、クーラーが壊れてしまった時は大変な思いを致しました。また、ご存じのように、空は雲がかかってしまうと、明かりの具合が違いますから、それを待たなければいけない。暑い中、晴れるまで待たなければいけないといった、苦労と言えば苦労ですが、スタッフの方が大変なことであったと思います
『鬼平犯科帳』の主人公・長谷川平蔵は、池波正太郎先生が、中村吉右衛門さんの実父の初代・松本白鸚(まつもと・はくおう)さんをモデルにされたと聞いております。その点につきまして、意識されていたことなどがございましたら聞かせて下さい。
池波先生も実父も震災、戦災という大変な状況をくぐってきた人でございますのでね、私のような戦後を育ったものとは違いまして、我慢強いと言いますか、頑固と言えば頑固ですし。いつも話すことでございますが、私が40歳になった時、次の鬼平をやれと言われ、それをお断りしてしまいまして、池波先生もさぞお怒りになったと思うんです。作家の方が“こいつがいい”と言って下さっているのに、断るとはなんだと思われたことでしょう。それでも我慢して下さった。それで45歳の時に再びお話をいただき、お引き受けしたわけですが、本当に良くかわいがってくださったと思います。鬼平というのは実父がモデルだと先生もおっしゃいますが、池波先生ご自分もモデルであったのではないかなと思います。それは、池波先生の本を読んだ際に“こういう世界で生きていらしたのか”と感じることがございまして、鬼平と相通ずるような方々とお付き合いがあったところもあるのかなと。鬼平が先生の一部ではないかと思ったりしました
40歳の時に、オファーをお断りになったということですが。
昔の方というのは皆さん老けていらして、40歳でもどっしりとした大人のような雰囲気を持っていらっしゃる方が多かった。私たちは40歳というと小僧っ子でございまして、酸いも甘いもかみ分けた、人生の裏表も知っているような、そんな大人ではございませんでした。本当に若造でございました。やはり、鬼平というイメージは池波先生、あるいは実父のような本当の大人というイメージを持っていましたので、とてもとてもできないと思って、40歳の時にはお断りをしてしまいました
そして45歳の時に、引き受けられたと言うことですね。
本当にお怒りにもならず、またご指名をいただきまして。原作者の池波先生から、二度もご指名をいただいて、まだその時も45歳ではどうにもならないと思っていましたが
今回の『鬼平犯科帳 THE FINAL』には、フィナーレを飾るにふさわしく、豪華ゲスト陣が集結しました。そのゲストの方々との共演について聞かせていただきたいと思います。
まずは「前編・五年目の客」にご出演頂きました「お吉」役の若村麻由美さんとの共演については、いかがでしたでしょうか?
もともと、舞台出身の方ですし、私との共通点もございますので、気心知れると言いますか、“こうしてほしいなぁ”という時にはそうしてくれますし、役にのめり込んでやって下さいまして、とてもありがたかったです。ファイナルにふさわしい演技をしてくださったと思います
前後編に登場された「石動虎太郎」役の尾上菊之助さんとの共演はいかがでしたか。
せがれであり、婿でございますが、最後だというので賑やかしに出てくれまして、一生懸命やってくれました。1対1の立ち回りもありまして、親が切られてはどうしようもないですから、せがれを切ることになりました(笑)
今回の『鬼平犯科帳THE FINAL』の手応えについてお聞かせください。
私は、ともかくいつも通りやっていましたが、なんとか監督さんが丁寧に撮って下さいましたので、作品としてはいいものになったのではないかと思っております
『鬼平犯科帳』のどういったところが、これだけ多くの方に愛されてきた理由だとお考えでしょうか。
理想の上司に、鬼平が選ばれたこともありますが、この人について行こう、ついて行ける人物というのはなかなか難しいことだと思います。鬼平はそういう人物に描かれていますので、理想の上司にも選ばれたのだと思います。そこが鬼平の魅力だと思います
印象に残っている作品は?
最初の『暗剣白梅香』は、第一回でございますし、45歳で若かったものですから、監督にめったやたらに走らされまして(笑)。アクションを専門にやっていらっしゃった監督さんで、そういうのがお好きな方で、はだしで走ればいいのですが、草履を履いて走りまして、走る、走る、走る、走る・・・。その中で、立ち回りまでございまして(笑)。肉体的に“今やれ”と言われてもできないことをやらされましたので、それはとても印象に残っています
『鬼平犯科帳』のストーリーの魅力は、どういうところにあると思われますか。
池波先生の作品そのものの魅力だと僕は思います。“日本のハードボイルド”だと言われたりしますが、それは池波先生が舞台をやっていらっしゃったこともあり、セリフというのをとても大事にされる方でした。小説の中でも、短いセリフをぽつりと言わせている。的を射た、これ以外にないというようなセリフが書かれておりまして、それが読む方によって、いろいろと発想できる作品になっている理由ではないかと思います。ですから、それから私が演じさせさせていただく際に、テレビも池波先生の本に沿ってシナリオも作って下さいと、常々お願いしていました
最後に、28年間にわたって、『鬼平犯科帳』を愛し、テレビを見て下さった方々に向け、メッセージをいただけたらと思います。
長い間、見ていただきまして、ありがとうございました。これも一重に、池波正太郎先生の小説のお力に頼ってやってまいりました。最後の立ち回りの時に、殺陣師の方が僕のところに来て『これで終わっちゃうんですね』と、ぼろぼろと涙を流して、大の男が大泣きに泣かれた。それだけ皆さんが家族的感覚で撮って下さったのをその時に感じて、本当にありがたかったと思っています。そういったすばらしい方々に囲まれて28年間作れましたことは本当に感謝しております。次はどなたがやられるか分かりませんが、そういう雰囲気は継いでもらいたいと思います。本当に皆さまのおかげでございます。改めて御礼申し上げます。ありがとうございました

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