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中村吉右衛門主演『鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸』放送決定!

江戸時代後期、盗賊・凶賊たちから「鬼の平蔵」と恐れられた、火付盗賊改方(ひつけとうぞくあらためかた)長官・長谷川平蔵を描いた池波正太郎の人気小説「鬼平犯科帳」(文春文庫刊)。
1989年7月に中村吉右衛門主演でドラマがスタートしてから、2001年5月まで連続ドラマとして全137本、2005年2月放送の『鬼平犯科帳スペシャル 山吹屋お勝』から今年1月放送の『鬼平犯科帳スペシャル 密告』まで単発のスペシャルドラマとして11本、計148本を放送してきました。
これまで長きにわたって、時代劇ファンのみならず、数多くの視聴者を魅了し続けてきた『鬼平犯科帳』ですが、今年12月18日(金)放送の『鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸』(シリーズ149本目)、そして来年2016年夏に撮影予定、2016年末から2017年初頭に放送予定の『鬼平犯科帳スペシャル』(前後編2本/シリーズ150本目)をもってフィナーレを飾ることが明らかになりました。

今回の決定の背景には、ドラマ『鬼平犯科帳』の制作にあたって、これまで「原作にないものはやってくれるな」という原作者・池波正太郎氏の遺言を守り、映像化可能と思われる作品を全て使用した後は、複数の原作を組み合わせたり、過去に1時間ドラマとして放送した内容にアレンジを加え、2時間のスペシャルドラマとして放送したりという工夫を重ねてきたものの、近年ではその作業も限界を迎えてきていたことが大きな要因となっています。
また、来年2016年夏に撮影予定、2016年末から2017年初頭に放送予定の『鬼平犯科帳スペシャル』(前後編2本)が、シリーズ150本目という大きな節目にあたること、さらには1989年の放送開始から絶大な人気を誇り、テレビドラマの歴史に金字塔を打ち立てた中村吉右衛門主演の『鬼平犯科帳』を理想的な形で終了し、有終の美を飾りたいという思いもあり、あと2作品をもってフィナーレとすることを決定しました。
今回の発表のタイミングに関しても、キャスト、スタッフをはじめ、『鬼平犯科帳』に携わる全ての関係者が、1989年から連綿と続いてきた『鬼平犯科帳』の歴史・伝統を背負い、気持ちを一つにしてシリーズ最終作の撮影に臨みたいという思いから、シリーズ149本目となる『鬼平犯科帳スペシャル 浅草・御厩河岸』の放送を前にした、このタイミングでの発表としました。

シリーズ150本という節目の放送をもって、フィナーレを飾る『鬼平犯科帳』。
これまで、人間国宝・中村吉右衛門をはじめ、多岐川裕美、梶芽衣子ら、レギュラー出演者たちや、豪華なゲスト陣の確かな演技によって、江戸に生きる市井の人々の義理人情を丁寧に描いた、濃密で情緒あふれる人間ドラマとして高い評価を得てきた同作も、あと2作品でついに大団円を迎えます。

テレビドラマの歴史に金字塔を打ち立てた『鬼平犯科帳』の有終の美を見届けてください。

コメント

中村吉右衛門さん

『鬼平犯科帳』がフィナーレを迎えることについての思いをお聞かせ下さい。
長いようで短かったです。多くの役者さんに出演していただいて、感謝しております。
26年という長い年月をかけて、長谷川平蔵という一人の人物を演じ続けてこられましたが、改めて長谷川平蔵という人物について、吉右衛門さん自身が抱いてらっしゃる思いをお聞かせ下さい。
原作に描かれているような人物のまま演じられたらいいなと、常々思いながら演らせていただいておりました。
これまでの『鬼平犯科帳』シリーズの中で、最も印象に残っている作品がございましたら、理由と共にお聞かせ下さい。
『暗剣白梅香』です。長谷川平蔵は、自ら行動する人物として描かれています。まだ若かったのですが、体力の限界まで使い切った作品です。その思いが強く残っております。
※「暗剣白梅香」は、1989年7月12日に放送された、第一シリーズ・第一話。
『鬼平犯科帳』には、表情豊かで愛すべき人物たちが登場しますが、特に印象に残っている人物がいらっしゃればお教え下さい。
『むかしの女』で山田五十鈴さんが演じられた“おろく”、『血頭の丹兵衛』で島田正吾さんが演じられた“蓑火の喜之助”が印象深いです。
※「むかしの女」は、1990年10月17日に放送された、第二シリーズ・第四話。
※「血頭の丹兵衛」は、1989年8月2日に放送された、第一シリーズ・第四話。
原作の池波先生が亡くなって、今年で25年となります。池波先生への思いをお聞かせ下さい。
実父の八代目松本幸四郎の『鬼平犯科帳』に、平蔵の息子・辰蔵役で出演させていただいた際に、先生にご指導いただきました。その後、40歳になった時に、『鬼平犯科帳』のお話しをいただいたのですが、まだ年齢的に若かったですし、どうしても実父・八代目松本幸四郎の『鬼平犯科帳』のイメージが強かったもので、今考えると本当に失礼な話なのですが“できません”とお断りをしてしまいました。それでも5年もお待ちいただいて、45歳の時に改めてお話しをいただき、長谷川平蔵も45歳で火付盗賊改方に就任したこともあり、やらせていただいた次第です。放送が終わって池波先生に“どうでしたか?”とお電話をさせていただいた際には、先生から“いいよ、良かったよ”とおっしゃっていただきました。私のことを大変気遣って下さって本当にありがたかったなぁと、いつも思い出します。
26年という長い期間、長谷川平蔵を演じ続けてこられた吉右衛門さんに、もし池波先生がお声をかけて下さるとすれば、どんなお言葉だと思われますか?
“ご苦労さま”と言って下さるのではないでしょうか。
中村吉右衛門プロフィール

昭和19年5月22日生まれ。東京都出身。初代松本白鸚の次男。母方の祖父・初代中村吉右衛門の養子となる。屋号は播磨屋。昭和23年6月東京劇場『御存俎板長兵衛』の長松ほかで中村萬之助を名乗り初舞台。昭和41年10月帝国劇場『金閣寺』の此下東吉ほかで二代目中村吉右衛門を襲名。
歌舞伎界を代表する立役の一人であり、時代物、世話物、新歌舞伎、舞踊など幅広い芸域で数多くの当り役をもつ。平成14年日本芸術院会員。平成23年重要無形文化財保持者(人間国宝)。
初代中村吉右衛門の俳名を冠した興行「秀山祭」(しゅうざんさい)は、初代の生誕120年にあたる平成18年から行われている。
松貫四の名で自ら筆をとり『再桜遇清水』、『藤戸』、『日向嶋景清』の上演を手がける。
平成18年から24年まで、文化庁による舞台芸術体験事業に参加。小学生に歌舞伎の楽しさを教える活動を行う。
昭和59年度第39回芸術祭優秀賞、第41回日本芸術院賞。平成14年度第57回芸術祭大賞など受賞多数。

プロデューサー 能村庸一

『鬼平犯科帳』が放送を開始した平成元年は1980年代最後の年でもあり、〈ベルリンの壁崩壊〉など世界に大きな変革の見られた年でした。また国内では〈バブル〉と共に〈トレンディ〉が流行語で、若者たちが久々にテレビに戻った一方で時代劇人気が低迷し、フジもレギュラー編成を休止していた頃です。そんな中での正統派時代劇の復活は勇気ある決断として世間の注目を浴びておりましたから、図らずも番組のプロデューサーを命じられた私としては、大きな期待と共にチョッピリ不安もありました。

 しかし番組がスタートするや、幸いにも視聴率は回を重ねる度に上昇し、作品のクオリティの高さが各方面から評価されました。
 中でも原作者からの再三に及ぶ要望に応え、満を持して登場した中村吉右衛門丈の長谷川平蔵は、本格的な時代劇を渇望していたファンや池波正太郎作品の愛読者から絶賛されましたし、そのスタイリッシュな名演は多くの女性層を魅了しました。また、〈善と悪とは紙一重〉といった池波哲学が若者の共感を呼びましたし、熟年層では、平蔵の配下への接し方に学ぶものがあるとして、いわゆるエグゼクティブの方たちにも人気の番組となりました。

 『鬼平』を取り巻く密偵や与力・同心などを演じた多彩なレギュラーにはそれぞれのファンが付きましたし、他番組ではめったに見られない大物ゲストも話題でした。さらに、江戸料理の権威に御指導頂いた日本の食文化へのこだわりや、四季の彩りで構成したエンディングのタイトルバックとそこに流れるジプシー・キングスのテーマ曲など、様々なチャーミング・ポイントが〈鬼平現象〉とも言うべきブームを呼んだのでした。

 そんな名番組を足掛け10年で終了したのは原作が尽きかけたからに他なりませんが、断腸の思いでした。やがて、“同窓会のつもりで一度やってみたい”との声が上り、二時間スペシャルを制作したところ、その『大川の隠居』が好評で、もう一度、さらにもう一度と回を重ねて今日に至りました。

 いま、私が何より思うこと。それは、歌舞伎界を背負う重鎮として超多忙な中で鬼平を演じ続けて下さった中村吉右衛門丈を始め、それぞれの持ち役をかくも長きにわたり、ライフワークのごとく勤めて下さったキャストの皆様への感謝の気持ちです。

 そしてもう一つ、あえて申し上げたいのは、私共この番組に関わった全ての者たちの幸せです。『鬼平犯科帳』の制作に携わったことは多くの感動をもたらしてくれましたし、誇りでもありました。それを支えて下さったのは他でもない、『鬼平』を愛する全国の視聴者の皆様であることは今さら申し上げるまでもありません。

 平成という時代と共に歩んだ『鬼平犯科帳』。来年夏に制作予定の150作目で、七度目のオリンピックイヤーを迎えることになります。

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