ケイタは僕が小学校のときの同級生で、親友の1人だ。
彼は8年前、突如病に倒れた。
病名は「全身性エリテマトーデス」「抗リン脂質抗体症候群」「アンチトロンビン3欠乏症」。3つの難病の合併症。よくは分からないが、大変な病気で完治が難しい、ということは聞いていた。
当時の僕は入社1年目の駆け出しAD。テレビの人間として何か出来ないだろうかと、その頃からずっと考えていた。それはもちろん彼を「撮る」ことだ。
でも、それは病気で苦しんでいる友人を「ネタ」にすることでもある。そう考えると、「撮らせてほしい」とは言えなかった。
そもそも何のために撮るんだ。それは、結局自分の表現欲のためじゃないか。
でも、ちょうど1年前のある日。ケイタが僕の家まで来て「今度結婚するんだ。だから結婚式の撮影をお願いしたい。」という話をした。相手は僕もよく知っている、同じ小学校の同級生だ。ずっと病気で苦しんでいた彼に、ようやく訪れた幸せな話。しかも、子供まで生まれるという。結婚式から始まって、出産までの幸福な物語。これならば撮影しても構わないかもしれない。
「結婚式の後も撮影を続けさせてほしい。」そう申し出た僕にケイタは「それは構わないけど、見せてない部分が多すぎるから…それを見せても、まだ友達でいられるかどうか分からないよ?まあ、でも任せるよ。」と言った。
実はケイタの病は、遺伝する可能性がある。
それでも子どもを産む。それは、確かにそんな簡単な話じゃないかもしれない。
その覚悟とは…どういうことなのだろうか?
友人としての思いなのか、ディレクターとしての思いなのか、分からない。
ただ、見届けたいと思った。撮らなければいけないような気がした。
1ヶ月悩んだ末、撮影することを決めた。
僕のエゴなのかもしれない。多分、そうだ。
撮影を始めて待っていたのは、想像を超える激しい戦いの世界だった。