NONFIX -BOOK-

「ぼくらはみんなハゲている~マイライフアズアハゲ」


ハゲはなぜ“ゆるされない”んだろう? 僕の、ハゲをめぐる出会いの旅が始まる―――
2004年『NONFIX』で放映され、大反響を呼んだ「ぼくらはみんなハゲている~マイライフアズアハゲ」が、本になりました。全国書店にて発売中。

太田出版刊
定価:1,554円(税込)
問合せ:太田出版 / TEL.03-3359-6262

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 若ハゲである僕は、ただそれだけの理由で、突然、勤務するテレビ制作会社から「ハゲの番組を作れ」と命令された。こうなったらいっそ、スタッフ全員ハゲで揃えた、ハゲによるハゲのための番組を作ってみよう。こうして僕の、「ハゲゆく人々」との出会いの旅が始まった。
 毎日自分の脱毛本数を数えているハゲ。モテないハゲ。自分のカツラをネタにする芸人。カツラのまま若者にナンパ術を教えるモテモテのハゲ。カツラであることをカミングアウトして堂々とカツラをかぶるハゲ。そして、ハゲてないハゲ……。「ハゲ」と「非ハゲ」の境界線は、そうはっきりとは引けない。決められるのはハゲている本人それぞれだけだ。そして僕は、ずさんな植毛手術を何度も繰り返されて頭がボロボロになったハゲに出会った。そもそも人は、なぜそこまでしてハゲを嫌がるのだろうか? そうさせているのは誰なんだ?
 続いて僕は、ハゲは「治すべきもの」だとCMで宣伝し続ける、アデランス、アートネイチャー、リーブ21という、国内3大カツラメーカーの、カツラビギナー向け「ヘアチェック」を体験・比較してみた。どこも言うことは基本的には同じ。頭をマッサージして、毛穴に詰まった脂を取るんです―――でも、生えるか生えないかは、結局やってみなければわからなかった。必ず生えるというメーカーもあったが、それを試すのに支払う金は、下手をすれば数百万円する。しかも、その方法には疑問を示す医者もいる。なかにはカツラメーカー相手に、たった1人で7年間も裁判を闘った人もいた。カツラのせいで、何もかぶらないときよりも脱毛が進んでしまったというのだ。
 日本のハゲ産業の始まりは、1960年代のこと。その隆盛は、この国の高度経済成長と完全にリンクしていた。当時のカツラメーカーでは、客の満足度などかえりみず、ひたすら新規客を増やしていくことが目標とされていた。そしてそれでも、食べるものに困らなくなった多くの人は、自分の「見た目」のコンプレックスを解決してくれそうなものに、金を払い続けたのだった。コンプレックスビジネス大国・日本。ぼくたちはこのコンプレックスビジネスという資本主義に食い物にされつつ、また自らも加担していたのだ。
 ハゲが「不自由」なのは、確かに社会の仕組みのせいかもしれない。しかし、その社会を住みやすいように創造できるのは、結局ハゲであろうとなかろうと、僕ら自身しかいない。もちろん、誰だって完全ではない。「ぼくらはみんなハゲている」のだ。まずは、不完全な自分を認めることから始めよう。

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