
プロ野球やサッカーの視聴率が低迷しているが、スポーツジャーナリストの 二宮清純氏は、「“スポーツ離れ"について、我々が子供の頃見るのはプロ野球かプロレス中継と決まっていたが、今は興味が細分化し、スポーツだけが選ばれる時代ではなくなった。」と語った。
イベント的なスポーツ中継が高視聴率をとっていることについて、「視聴者が ワクワク、ハラハラし、『今日負けたらおしまい』というものは見るが、 プロ野球のレギュラーシーズンは、『今日負けたっていい』という感じになっているところが原因。スポーツは“地域密着"ということで、巨人戦という 一極集中型から、いろんなスポーツ中継や地域という分散型になってきて いる。」と話した。
「野球中継に関係のない出演者は出さないでほしい、実況と解説者だけでいい」という視聴者の意見を紹介したところ、立教大・砂川准教授は、「タレントを 出すことによって普段見ない層にも見てもらうことができる効用もある。バランスは難しいが。」と話した。 二宮氏は、「タレントを使うことは悪いことではないが、タレントを使わないと視聴率が悪いという根拠となるデータもないのではないか。視聴者を育てることはテレビ局も団体側もやっていかなきゃいけない。スポーツというコンテンツそのものにテレビ局が自信がない気がする。テレビとスポーツは親和性がある。地上波の役割はまだ終わってはいないが、今のままではいけない。スポーツは埋蔵量のたくさんある油田のようなもので、まだ掘り尽くしていない。掘っていくと、もっと新しいドラマができる。制作者も五感を働かせることが大事。」と語った。
去年11月、自宅前の自動車事故に端を発した世界一のプロゴルファー、 タイガー・ウッズの不倫騒動について、テレビプロデューサーのデーブ・スペクター氏は、大手メディアの報じ方が、「ゴシップ紙やインターネットサイトの後追いだった。 それも当たり前で、大手媒体は、ウッズもエリン夫人も出てこないが、何十時間もフロリダの自宅に取材陣を置いておくことが出来ないから、結局、フリーの記者やパパラッチでないとそうした取材ができない。また、今回はウェブサイトが先行していた。」と話した。
また、視聴者の受け止め方については、「ちょっと迂闊、軽率だとか、奥さんがかわいそうだとの意見はあるが、誰も怒っていない。それなのに、こんなに長くなぜやったかというと、タイガー・ウッズ本人が雲隠れして出てこなかった。 本人が出てこないから、次々と出てくる愛人が目立った。それで必要以上に長く続いてしまった。」と話した。 番組内で募集したアンケートでは、「タイガー・ウッズ報道をどう思うか」の質問に、「騒ぎすぎ」55%、「興味がない」20%、「妥当である」13%、「おもしろい」7%、「もっと見たい」5%だった。もう一つの「タイガー・ウッズの復帰をどう思うか」という質問については、「妥当」が69%、「早すぎる」が31%だった。
松野教授はこのアンケート結果について、「最初は情報があまり出てこなくて知りたいという気持ちだったのが、次々と愛人が出てきたところから、過剰な報道になり、嫌悪感が出てきて騒ぎすぎと思うようになった。」と分析した。 デーブ氏は、「タイガー・ウッズのイメージが完璧で、清潔な申し分のない人だった。あまりにも外向けのイメージと報道された実際の姿が違っていて世界中が驚いた。確かに騒ぎすぎだったが、PGAに復帰してからは終息してきた。 もうアメリカでのタイガー・ウッズの報道はスポーツ面に戻ってきた。でも、日本でもテレビや新聞も見たい人がいなければすぐに止めるわけで、まだ見たいという人がいるから取り上げているはず。視聴者の見たいという意識がまだあるから報道している。」と語った。
『ゼロ年代の想像力』などの評論で知られる新進気鋭の評論家、宇野常寛氏は、「今の2010年「‘10年代」の若者の特徴は、コミュニケーションそのものが目的になっている。ネットやケータイという武器を手に入れたことによって、コミュニケーションそれ自体を消費するという文化が完全に日本社会を覆っている。これだけコミュニケーションの力が強くなってくると、コンテンツの力が弱くなってくる。
例えば、深夜のアニメで少々出来が良くない作品でも、アニメファンはツイッターなどで実況して突っ込んで楽しむ。アニメそのもののクオリティは低くても、引っかかるポイントやツッコミどころが多くてコミュニケーションが盛り上がれば楽しめちゃう。」と語った。
コメンテーターの法政大学教授 稲増龍夫氏は、「昔は作る人たちが圧倒的に偉くて、『どうだ、こんなすごいもの作ったんだ、見ろ!』という感じだった。今は視聴者が見て、それを勝手に解釈して、別に送り手が思ってもいないことを勝手に遊んでいる。」と解説した。「テレビは価値観の多様化に対応できないと言われていたのが、テレビはインターネットを取り込むことによって、人と繋がることがもう一度可能になった。」と話した。
番組内で募集したアンケート「テレビ局がメインでターゲットにするべき世代は?」の質問には、30代、20代、40代の順で多かった。「あなたの年齢は?」の質問には、20代、30代、40代の順で多かった。
この結果に宇野氏は、「日本は高齢社会なので、マーケティングのことだけを考えたら50代、60代向けが正しい。しかし、20代、30代をどう取り込んでいくかを真剣に考えて行かなくてはいけない。そのための最大のポイントがテレビの消費の仕方の変化ということ。」と話した。
宇野氏は、「いい作品を作るということは、もちろん大事だが、その時にテレビの向こう側にいるユーザーたちの消費の力を取り込むのか、コミュニケーションしようとする力を取り込むのかを、考えて作っていくことがすごく重要だ。」と語った。
Twitterの伝道師とも言われるメディアジャーナリストの津田大介氏は、Twitterについて「140字以内の言葉で不特定多数の人に発信できる『Twitter』。その特徴は、短文ですぐに投稿できる気軽さとレスポンスの良さ、世界と繋がっていると認識できるリアルタイム性の高さ。自分の流した情報がすごい勢いで広まっていく強力な伝播力も大きな魅力。」と説明した。
Twitterが社会を変えるかとの質問には、「電気やガス、あるいはメールやFAX、電話のような社会的なインフラになっていくもの。手段としては非常に有効だと思う。」と語った。
番組内で募集したアンケートでは「Twitterを利用していますか?」の質問に、「利用している」と答えた人が58%、「利用していない」が42%だった。「誰の“つぶやき"を聞きたいですか?」の質問には、芸能人が29%、文化人が14%、友人・知人が11%、政治家が10%、経済人が8%、その他が27%だった。この結果に津田氏は、「『その他』は友人・知人ではないが、知らない人ではないつぶやきの気に入った一般人。Twitterの特徴に、自分のタイムラインに気に入った人のつぶやきを登録でき、一緒に表示できることがある。」と話した。
音教授は、「Twitterという新しいメディアのリアルタイム性はすごい。今日はTwitterのつぶやきを見ながら進めているが、非常に緊張感がある。テレビとTwitterがセットになることでいろいろなことができると感じた。」と語った。
津田氏は、「新しいメディア体系として、テレビとTwitterを一緒に見ている層が出てきている。今後制作にも相当影響してくると思うし、ジャーナリズムの世界に大きく影響してくる。それはこれまでは報道やニュース自体が検証されることがなかったが、時間的な制限で抜け落ちるニュースもあった。それがニュースとTwitterを一緒に見ることによって、補足情報やその情報の見方を知ることで、そのニュースの価値も上がるし、視聴者のメディアリテラシーを育てることにもなる。それは報道する側にとって質が上がることになると思う。」と語った。