妻・加奈子(内田有紀)に暴力を振るう夫・達郎は、佐藤さんのイメージからはかけ離れた役です。「嫌われ役に徹したい」と話していましたが、実際に演じていていかがですか?
達郎は、分かりやすいキャラクターですが、DVをする役を演じるのは初めてですし、作品の中で自分がどう色づいて見えるのか分からない部分もありましたので、最初はすごく緊張しました。全体を通してみると暴力のシーンは多くはないものの、直美(広末涼子)と加奈子が達郎の殺害を計画し、視聴者の方にもふたりの気持ちを理解していただくところまで加奈子を追い込まなければいけない役ですので、暴力のシーンではインパクトを残せるように演じるのも大事なことだと思います。ただ暴力を振るうだけではなく、冷酷さを出すのは予想以上に難しいものだと痛感しています。ですが、加奈子を演じる内田有紀さんが、すごくコミュニケーションを取って、やりやすい環境を作ってくださる方なので、芝居の内容(DV)に関しては「もう嫌だ」と思うことはあっても、芝居を作る過程は、楽しんでできています。そこは、内田さんに本当に感謝しています。
達郎の気持ちはどう理解して演じていますか?
達郎は、特に仕事では努力して努力して今の地位を築き上げたと自負しているストイックな人。自分がひたむきに努力してきた分、相手にもパーフェクトを求めるんだろうな、と思っています。1話で腐らせてしまった洋ナシを加奈子の口に突っ込むシーンがありましたが、達郎としては、「俺は仕事でこんなに頑張っているのに、お前はなんでこんな簡単なことができないんだ!」と怒りのスイッチが入ってしまった。そこからどんどんストレスが溜まるようになって、止められなくなっているんだろうと思います。暴力は絶対に肯定はしませんが、でも、そういう彼を演じていると、映画の『スターウォーズ』じゃないですけど、一気にダークサイドに落ちることもあるかもしれないな、と思ってしまうんです。人間には誰しもそういう危険があるんだろうな、と感じて、怖くなることもあります。
直美と加奈子は、そんな達郎を殺害しようと計画しますが、そんな女性ふたりを佐藤さんご自身はどう見ますか?
原作を読んだときから、いけないことなんだけれども、読んでいるうちに自分も共犯者になっていく感じがして、ふたりを応援してしまいました。その高揚感と圧倒的なスピード感は、僕らがドラマを作るうえでも視聴者の方に感じていただきたいところです。殺される達郎を演じる僕としては、演じている間は直美と加奈子に対しての憎さはあるものの、カットがかかればふたりに「負けないで欲しい」と思います。とはいえ、直美と加奈子に共感する部分もあれば、共感できない部分もあって。今後、達郎の姉の陽子(吉田羊)が脅威となっていきますし、そういう意味では、僕の気持ちは、直美と加奈子を応援したり、陽子にいったりと、ブレるんですよね。そこも面白いと思います。
一方で、達郎の替え玉となる林さんは中国人ということで、また違った難しさがありそうですね。
達郎と林さん、自分のなかでは、感情を変えて表現しているつもりでも、画面で見ると「もっと濃く差を付けたほうがいいのかな」と悩むこともあり、まさに悪戦苦闘しながら演じています。一日の撮影で、達郎→林さん→達郎という順番で演じたことがあって、その日は混乱しましたね(笑)。あとは、林さんのときのつたない日本語が難しいです。本当にちょっとしたトーンの違いで、リアルに見えたり、逆にコントに見えたりしてしまいますから。(中国人役の)高畑淳子さんも、そうおっしゃっていたと聞きましたが、ちょっとしたさじ加減が大事になりますので、優しくて素朴な人の役ですが、毎シーンどころか、セリフごとに勝負する気持ちで挑戦しています。
今後、そんな林さんと加奈子が心を通わすという展開も気になります。
そこはドラマのオリジナルで、まだ台本が出来上がっていないので分かりませんが、達郎がいたことで苦しい日々を送っていた加奈子が、林さんによって癒されたらいいなと思いますし、自分としても、達郎とは違う温かみを感じさせる存在にできればと思っています。加奈子が、スーツを着た林さんを見て達郎を思い出して恐怖を感じるように、暴力を振るわれて殺してしまおうと思った人とうり二つの人を好きになるというのはハードルが高いことだと思いますので、柔らかい優しさを持って包み込めるよう演じないといけないと思っています。
本当に大変な二役ですね。
すごく忙しいですね(笑)。ですが、ドラマのキーマンとなる役ですし、そこに自分の名前を挙げてもらったということに、本当に感謝しています。そこに少しでも応えられるように、という思いで演じています。
最後に、視聴者のみなさまにメッセージをお願いします!
台本を読んでいると、ものすごいスピードで物語が展開していきますので、見ていて飽きることのない作品だと思いますし、自分たちもその心意気で作っています。今後、自分は林さんとしての登場が多くなりますので、見守って応援していただければな、と思っています。