2018.06.07更新
単行本累計発行部数は100万部越え。“けだもの男子”によるちょっと刺激的な恋愛シーンが人気を集めたヒット作「花にけだもの」(杉山美和子/小学館)がFODとdTVの共同制作によってドラマ化。FODで限定配信されていましたが、大きな反響を集め4月から地上波でも放送が始まりました。
(C)杉山美和子/小学館(Sho-Comiフラワーコミックス) フジテレビジョン・エイベックス通信放送
中村ゆりかさん演じる主人公の熊倉久実(くまくらくみ)は純真無垢な女子高生。転校先の学校「蓮高」を“下見”していると、杉野遥亮さん演じる柿木園豹(かきぞのひょう)に出会います。優しくて格好いい王子様みたいな豹くんにファーストキスを奪われた久美。恋に落ちるも、翌朝登校してびっくり。豹くんは学校で一番のプレイボーイで、大変な女たらしだったのでした。
ピュアな久美に次第に惹かれる豹くん、そんな二人のすれ違いながらも想い合う姿にきゅんきゅんする本作。他にも、久美の友達の大神カンナ(AKB48・入山杏奈さん)に恋をする日吉竜生(ひよしたつき) <甲斐翔真さん>や、密かに久美に想いを寄せる和泉千隼(いずみ・ちはや)<超特急・松尾太陽さん>など、けだもの男子によるときめきポイントは盛りだくさん。
当作品のドラマ化をプロデュースしたのは、『最高の離婚』や『のだめカンタービレ』の清水一幸プロデューサーです。今回はそんな清水Pに『花にけだもの』をドラマ化した経緯や、少女マンガを実写化することの苦労やこだわり、そしてネット配信だからこその強みなどのお話を伺いました。
清水一幸プロデューサー
――『花にけだもの』は2012年に完結した作品ですよね。このタイミングでドラマ化をしようと思った経緯を教えてください。
「もともとは、FOD×dTV共同製作で原作モノの実写化ドラマを作ろうという話が出たことがきっかけでした。まだ映像化されていないけど、たくさんのファンがいる作品をいくつもピックアップしていく中で、最終的にこれでいこうと決めたのが『花にけだもの』という作品だったんです」
――決め手はなんだったんですか?
「一番のポイントはやっぱり『キュンキュンするかどうか』ですね。FODは特に若い女性の視聴者が多いため、そこに標準を当てるのは前提になるので」
――清水Pも読んでキュンキュンしたってことですか……?
「僕は40歳を優に過ぎたおじさんなので、さすがにキュンキュンはしないですけど(笑)。キュンキュンするだろうな、というのは直感でありましたよ。“けだもの男子”という強引な王子様キャラクターは、若い女の子たちにウケるだろうな、と。もちろん高校生のストーリーだから20、30代の女性には子どもっぽく感じる恋愛かもしれないけど、それでも『ああこういう時期あったな』とか『昔こういうマンガ読んでたな』という風に感じてもらえそうだな、と。そういう部分も含めてこの作品を選びました」
――配役はオーディションですか?
「いや、製作陣の中で相談してキャスティングしました。キャラクターに合ったビジュアルや雰囲気をもっているか、演技ができるかどうか、他のキャストとのバランスはとれているか、などを総合的にみながら決めましたね。特に、メインとなる男の子、杉野遥亮さんと松尾太陽さん、甲斐翔真さんの3人は長身でイケメンかつ、タイプがかぶっていないかどうかも意識しました」
――今回は連ドラ初出演の松尾太陽さんなどもいましたが、製作を通して印象的だったことはありますか?
「期待値をこめて、若手の演者をメインキャストにしましたが、だからこその相乗効果のようなものを感じましたね。放送し始めてから『お!』と思ったのは、キャストのみんなが揃っていろいろなところに露出してくれたこと。それによりファンも喜んでくれたので、結果的に彼らでよかったなと思います。ネット配信だとやはりコアなファンをもっている人たちを入れることが多く、そういう意味で超特急の松尾太陽さんやAKB48の入山杏奈さんをキャスティングしましたが、二人とも配役にはまっていて視聴者からも好評でしたね」
――『花にけだもの』の地上波放送ももう折り返しましたが、ネット配信のときと比べて反応に違いなどはありますか?
「ネット配信を楽しんでくれていた方々がもう一度見てくれている印象が強いですね。Twitterなどの反応を見ていると、『ネット配信のときと比べて短い?(※地上波の枠に合わせて短く編集しています)』とか『そうそうこの場面が……』みたいな意見が多くて、地上波でももう一回リピートで見てくれているのは嬉しいですね」
――今回はネット配信がまずあったわけですが、地上波のドラマと作り方や意識するところに違いなどはあるんでしょうか?
「地上波ではなかなか突き抜けられない演出が、ネット配信だとやりやすい、というのはありますね。地上波ってやっぱり、小さい子からお年寄りまで誰でも見るというのが前提に作られているんです。でも、ネット配信だと視聴者側がお金を払って選んで見る。映画館に映画を観に行くのと一緒ですよね。そうすると、もっと狭いターゲットに向けて、その人たちが喜ぶような方向性で突き抜けた方がいいんじゃないかなと思うんです。たとえば今回の『花にけだもの』でいえば、豹くんが正面を向いて(視聴者の目線に合わせて)『好きだよ』と言ったり、キスをしようとするシーンがありますが、地上波だったらまず無理な演出でしょうね。通常のドラマでキャラクターがカメラの正面を向くというのは、普通なかなかありえません(笑)」
――でもネット配信だとそれが可能になるんですね。
「まず、FODを見る人たちは、若い女性が多いです。そういう人たちに向けたコンテンツも充実している。また、視聴者はスマホで見る人が多い。そういう環境でどういった演出がウケるか、を考えるんです。スマホの画面で王子様が『愛してる』って囁くのは、どこか恋愛ゲームでときめく瞬間と似ている。そこはひとつ視聴者の喜ぶポイントになると思うので、監督には恥ずかしがらずに演出してくださいとお願いしました。もちろんそれが全てになったらドラマとしては成立しないですから、バランスを見て要所要所を押さえていく形ですね」
――そうやって考えると、スマホで観られるネット配信と、キュンキュンが楽しめる少女マンガの実写化って親和性が高そうですね。今回はネット配信の時点で反響が大きかったというお話を伺いましたが、リアルタイムの反応などはどうやって確認していたのでしょうか?
「これはむしろ地上波のときよりもシビアに数字に出るんですよ。視聴率はひとつのサンプルでしかないですけど、ネット配信は一話ごとの再生回数が翌日には出てしまうので。一話よりも二話以降はどうしても下がるんですが、それが一気に下がるのか、なめらかなのか、という点でも反応を見ることはできます。あとは、ネット配信という人目につきにくいところで流れている作品の名前がネット上あるいはTwitterなどSNSで見られると手応えはやはり感じますよね」
取材・文=園田菜々
掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。