Muscat~フジテレビの番組情報

2017.10.01更新

『神ギ問』『ダレトク!?』『脱力タイムズ』芸人たちは番組をどう仕切るか

ベテラン芸人が仕切るバラエティ番組を比較

芸人が「バラエティを仕切る」とき、その芸人の人間性を垣間見ることができる。

一口にバラエティのMCといっても様々なタイプがある。場を完全に自分のものにする明石家さんまのようなタイプもいれば、空気のような存在に徹するタモリのようなタイプもいるだろう。

かつて萩本欽一は、『オールスター家族対抗歌合戦』で初めて司会のオファーがあった際、「隣に進行役の女の子を置くこと」を条件にして引き受けた(これが今の「番組アシスタント」の存在につながると言われている)。自分が場に参加するかしないか。参加するなら進行をどうするか。芸人の持つ特性によって番組の構成も変わってくるのだ。

例えば『さまぁ~ずの神ギ問』は、さまぁ~ずのフリートークが番組の肝となる部分を担っている。

さまぁ~ずのトークが要『さまぁ~ずの神ギ問』

『さまぁ~ずの神ギ問』は、視聴者から送られた様々な疑問を調査する番組。しかし取り上げる全ての疑問を調査するわけではない。「いい疑問=神ギ問かどうか」をさまぁ~ずとゲストが判定し、神ギ問に認定されたもののみ回答VTRが作られる。神ギ問に認定されなかった「グ問」については「スマホで検索してください」と潔い。

疑問を調査するVTRは『トリビアの泉』を彷彿とするが、この番組の肝は神ギ問を認定するトークにある。送られてくる疑問は「防犯カメラってなぜ画質が悪いの?」といった素朴な疑問から、「エステの初回無料、色んなとこの初回無料に行けばいいんじゃないの?」「昔は悪かったというおじさん、本当に悪いか徹底的に調べられない?」といった企画色の強い疑問まで様々。さまぁ~ずは疑問をお題に「別によくない?」「結局こうなんじゃない?」とフリートークを転がしていく。

二人の肩の力抜けたフリートークは、『さまぁ~ず×さまぁ~ず』(テレビ朝日)や『モヤモヤさまぁ~ず2』(テレビ東京)でも折り紙付き。最初は軽視されていた疑問が「やっぱりこれ気になるな」と神ギ問に変貌する流れは(逆にグ問に転落する流れも)、二人の話術がなせる技だ。

『さまぁ~ずの神ギ問』は10月からゴールデンタイム(土曜19時)に進出し、30分→1時間と放送時間が倍になる。かつて『トリビアの泉』も深夜の30分番組から1時間のゴールデンに進出して成功した。10月改編の台風の目となるか。

有吉が笑って楽しむ『有吉弘行のダレトク!?』

肩の力が抜けた進行といえば、『有吉弘行のダレトク!?』の有吉弘行にも同じ空気を感じる。『神ギ問』ではさまぁ~ずのフリートークが番組の要となっているが、『ダレトク』の有吉弘行はMCでありながらほとんど中心にいない。『有吉ゼミ』(日本テレビ)等のように仕切るわけでもなく、『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)のようにトークで切り込むわけでもない。

『ダレトク!?』は「キモうまグルメ」や「ダレトクトラップ」といった企画VTRや、「没メニューレストラン」などのスタジオ企画が不定期に放送されている。ワイプからツッコミをいれ、没メニューを美味しそうに頬張る有吉は、仕切るというよりむしろ「楽しんでいる」に近い。

コーナーを進行する高橋真麻の巨乳をいじり、ボケ倒す山崎弘也にニコニコし、キモうまグルメを豪快に吐き出すアンガールズ田中のVTRに腹を抱えて笑う。かと思えば、ここぞという時にロケに出て肩の強さを見せる。プロジェクトを引っ張るリーダー、というよりは、みんなを仲良くまとめる班長のような佇まいを感じる。

真顔の有田に怖いものなし『全力!脱力タイムズ』

『神ギ問』や『ダレトク!?』に自由な緩さを感じるのと対照的に、全てをガチガチに固めているのが『全力!脱力タイムズ』だろう。

『脱力タイムズ』はアリタ哲平(くりぃむしちゅーの有田哲平)がメインMCを務め、各界の識者がコメンテーターに並ぶ報道番組……のように見えて、台本が決められた壮大なコントになっている。が、ゲストに呼ばれた芸人だけがその流れを知らず、真顔でおかしなことを言っている有田に終始ツッコまざるをえない。かつてゲストとなった田村淳は「トリックが過ぎるよ」と嘆き、堀内健は「今日、オレ何点だ!?」と正解を見失うほど。まさに「全力」で追い込まれてしまう。

9月8日の放送では「放送100回記念1時間SP」と題し、広瀬すずと博多大吉をゲストに迎えた。今回はゲストに「ギリギリな質問100」に絶対答えてもらう企画と説明する有田。しかし、広瀬すずには「スーパーで買うものベスト3は?」など全く過激でない質問が続く。広瀬すずの回答に歓声をあげるコメンテーターたちだが、プロレスに関する質問に答える大吉には無視を決め込む始末。博多大吉、完全にアウェイである。

ようやくエンディングを迎えたころ、ここで重大な誤報があったと有田はオープニングを撮り直す。なんと100回記念ではなく「95回記念」だったと言うのだ。「ちょうど95回を迎えまして」と悪びれもなく進行する有田に、大吉は「ちょうど!?」「斜めの角度が急すぎるんですよ」と戸惑うばかり。

思えば『今夜はナゾトレ』など他のくりぃむしちゅーの番組でも、真顔でボケる有田に上田がツッコむ場面をよく見る。「有田の真顔」をとことん極めた結果、芸人が迷い込む「異世界」まで構築するに至っているのだ。

緩く進行するか、ガチガチに仕切るか、場を自分のものにするか。もちろん、これらを巧みに使い分ける芸人もいる。MCに注目して番組を見てみると、またバラエティが楽しくなる。

文=井上マサキ

番組情報

『さまぁ~ずの神ギ問』
<放送>
毎週土曜19時~(10月より)
<出演>
【MC】
さまぁ~ず
宮司愛海(フジテレビアナウンサー)
『有吉弘行のダレトク!?』
<放送>
毎週火曜 22時~
<出演>
【MC】
有吉弘行
高橋真麻
『全力!脱力タイムズ』
<放送>
毎週金曜 23時〜
<出演>
【メインキャスター】
アリタ哲平(くりぃむしちゅー 有田哲平)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。