Muscat~フジテレビの番組情報

2017.05.31更新

『新しい波24』『ネタパレ』『もろもろのハナシ』 深夜に30分浸る優しい笑い

深夜バラエティ3番組を解説

芸人にとって「ネタ」は、自分たちを知ってもらうための「名刺」でもある。

かつてネタ番組不遇の時代があり、若手芸人が全国ネットでネタを披露できる機会はとても少なかった。2001年に始まった『M-1グランプリ』(テレビ朝日)をきっかけに、若手芸人に「ネタから知名度をあげる」という道が開き始める。最近では他の芸人に向けてネタを書く『オワライターズ』(フジテレビ)や、芸人が書いたネタを役者が演じる『笑×演』(テレビ朝日)など、「ネタ」そのものを主題に置いた番組も出てきた。

2017年4月から始まった『新しい波24』も、番組が「ネタ」から始まる。披露するのは毎週4組ほどの「無名の若手芸人」たちだ。

ゆとり世代を褒めて伸ばす『新しい波24』

『新しい波』はお笑い界のビッグスターは8年ごとに誕生するという「お笑い8年周期説」に基づき、1992年から8年周期で放送されている。コンセプトは若手芸人からのスター発掘。『新しい波』(1992年)にはナインティナインや極楽とんぼ、『新しい波8』(2000年)にはキングコングやロバート、『新しい波16』(2008年)には銀シャリやニッチェが出演していた。

2017年の『新しい波24』では、オーディションから選ばれた全29組の「波24(なみにじ)メンバー」が週替わりで出演。番組では挨拶代わりにネタを披露したあと、全員でひな壇でのトークになる。テレビに慣れていない無名芸人たちのトークを回すのは、頼りになる「先輩」ナインティナイン岡村隆史だ。

岡村隆史は初代『新しい波』のメンバー。24年の時を経て、若手のネタに笑い、トークを盛り上げ、キャラを引き出していく。『ぐるナイ』(日本テレビ)の「おもしろ荘」をはじめ、岡村がネタを見るまなざしは優しい。加えて、ますだおかだ岡田やTKO木元といった中堅芸人もゲストで出演し、自ら手本を見せることもある。若手芸人はほとんどが「ゆとり世代」、厳しい戦場ではなく褒めて伸ばしていく方針だ。

意外な芸人に出会える『ネタパレ』

フースーヤや四千頭身など、一部の「波24」メンバーは『ネタパレ』にも出演している。『ネタパレ』は南原清隆が「劇場支配人」となり、ゲストに「今見ていただきたいネタ」を見てもらうネタ番組。劇場を模したセットや、ネタ開始と同時に出演者が後方のステージに向き合う演出は、内村光良が「支配人」だった『THE THREE THEATER』『爆笑レッドシアター』を彷彿とさせる。

これまで『ネタパレ』でネタを披露した芸人は、シソンヌやロバートといった実力派をはじめ、カミナリやチョコレートプラネットなどの若手、インパルス板倉のピンネタなど幅広い。前身番組の『爆笑キャラパレード』で反響を呼んだ、野性爆弾くっきーの「邦彦おじさん」もしれっと復活している。

『ネタパレ』にはゲストの好みから芸人をオススメするコーナーがある。5月12日(金)放送の回では、ゲストのヒロミが好きな芸人として「横山やすし・西川きよし」「ちびっこギャング」「爆笑問題」の名前を挙げていた。その3組から導き出されたのは双子漫才のダイタク。関東芸人のヒロミがやすきよを挙げるのは意外だし、そこからダイタクが出てくるのも面白い。お笑い好きに新たな発見をくれる番組でもある。

ネタを「やめた」『もろもろのハナシ』

ここまで芸人とネタの話でつないできたが、その一方で「ネタをやめた」のが『もろもろのハナシ』。

『もろもろのハナシ』は、バナナマン、おぎやはぎ、オードリーの3組によるトーク番組。過去2回放送された特番や、レギュラー化初回では、番組冒頭にそれぞれがネタを披露する流れがお約束になっていた。無茶ぶりから始まった習慣だったが、回を追うごとに新ネタを仕込み始める3組。いよいよ負担になったのか、5月10日(水)の放送では全員一致で「やめよう」という結論になった。それぞれメインMCの番組を持つ身。今さら「名刺」を出す必要はないのだった。

バナナマンとおぎやはぎは無名時代からの旧知の仲であり、かつて「宇田川フリーコースターズ」というユニットを組んでライブを開催したこともある。オードリーは一世代下。この構図は『しゃべくり007』(日本テレビ)にも似ている(ボキャブラ世代のくりぃむしちゅー&ネプチューンと、一世代下のチュートリアル)。

ただ、『もろもろのハナシ』が醸し出す空気はとても和やかだ。隙あらば笑いを取ろうと前に出るスタンスを「体育会系」とするならば、『もろもろ〜』は「文化系」のノリ。リラックスした雰囲気で、番組が出すお題についてお互いにゲラゲラ笑いながら話している。ある時は春日のアパートを八王子に移築させる計画を立てたり、またある時は小木がセレクトした洋服を若林に着せてみたり。その裏で、流れと関係なく日村にいたずらする設楽がいたり。気がつけば30分の番組が終わっている。

『新しい波24』『ネタパレ』『もろもろのハナシ』の3番組には「深夜の30分番組」という共通点がある。このまま終わりたくない夜に、そっと優しく笑いをくれる。初めて名前を知った若手のネタを反芻して、またテレビで見られたらいいなと願いながら眠りにつくのだった。

文◯井上マサキ

番組情報

『新しい波24』
<放送>
毎週月曜 24時25分〜24時55分
<出演>
岡村隆史(ナインティナイン)
ほか
『ネタパレ』
<放送>
毎週金曜 23時30分~23時58分
<出演>
南原清隆
陣内智則
増田貴久(NEWS)
ほか
『もろもろのハナシ』
<放送>
毎週水曜 24時25分~24時55分
<出演>
バナナマン(設楽統、日村勇紀)
おぎやはぎ(小木博明、矢作兼)
オードリー(若林正恭、春日俊彰)

掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。