きょうのわんこスペシャル
『別れ～１５年目の卒業式～』
りんちゃん メス １５才 （雑種）
春の日差しを浴びながらのんびりとたたずむ一匹のわんこ。１５才を迎えた今年の春はいつもと違う春です。
皆さん、覚えていますか？今から２年前、「わんこスペシャル」に登場した「りん」。高知県の「高知農業高校」の近くの川で流されていたところを保護され、そのまま学校で暮らすようになったわんこです。
先生や校長先生、そして生徒達に愛され学校の行事に参加して地域の人たちの間でも人気者。学校のパンフレットや教職員の名簿にも載っている＜農業高校の顔＞として活躍。時には母親を亡くした子豚を母も同然に世話して育てた生徒たちの手本となるようなわんこでした。
毎年行われる入学式ではおめでとうのメッセージを下げて緊張気味の新入生たちを迎えていました。
あれから２年。再び、「りん」に会いに行きました。「りん」が暮らす高知県は大政奉還と明治維新から１５０年という事で高知城を臨む歴史博物館を中心に県内２４ヵ所で幕末維新博の真っ最中。そんな歴史イベントで盛り上がる高知県の南国市にある「高知農業高校」。
１５才になった「りん」は今も変わらずいつもの場所でのんびり。でも、２年前わんこスタッフが取材したすぐ後に「りん」の体に異変が起きたんです。
「りん」の手術費は先生や保護者、そして生徒会が工面してくれたおかげで以前と変わらない暮らしが出来るようになりました。
そんな「りん」に今年もこの学校で一緒に暮らしてきた生徒たちとの別れの季節がやって来ました。もうすぐ卒業していく「りん」の世話をしてくれた３年生たち。こうやってみんなと一緒に散歩をするのも今日が最後です。
夕方。いつもの場所でのんびりしていると校長先生が車でやって来ました。今日はいつもと違い校長先生とある所に向かいます。車に乗り込み出発。普段、あまり車に乗る事がない「りん」はちょっと落ち着かない様子。
走る事１０分である所に到着。そこは校長先生の家。
間もなく定年を迎える校長先生が残された時間を少しでも「りん」と一緒に過ごしたいと、家に泊めてくれているんです。わずかな時間ですが普通の家で暮らすわんこの様に散歩を楽しむ「りん」
「りん」にとって校長先生は命の恩人のような存在。家に帰るとご飯の時間。もうすぐ校長先生ともお別れ。でも、今日は「りん」にとってとても幸せなひと時を過ごす事が出来たんです。
翌朝、校長先生と一緒に登校した「りん」が向かった先はグラウンド。実は校長先生は全国高校駅伝に何度も出場している陸上部の出身。度々、後輩の練習を「りん」と一緒に見に来ているんです。
次に向かったのは野球部のグラウンド。校長先生が見守る中、ここで思いっきり走らせて貰うのも「りん」の楽しみのひとつ。こんな楽しい時間ももうすぐ終わりです。
３年生、そして校長先生との別れの日がやってきました。卒業式の様子に耳を澄ましている「りん」の事を校長先生がみんなに話してくれました。
卒業式が終わりに近づき、松岡先生がやって来ました。一緒に卒業式が行われている体育館のあの場所へ。そして・・・首からメッセージを下げてみんなのことを待ちます。
卒業生たちを見送った後もずっとある人のことを待ち続ける「りん」。
そう、待っていたのは校長先生。ちょっと寂しい１５年目の春を迎えた「りん」なのでした。
