今年の春も家族と一緒に満開の桜のもとお花見を楽しんだ一匹のわんこ。
実はもうすぐ、この街を離れることになったんです。
名古屋市と隣接した人口およそ6万7000人の愛知県・津島市。その昔から「津島神社」の門前町として栄えた街。
この街でひとつ屋根の下、家族と共に暮らしている一匹のわんこがいます。名前は小太郎、通称「こた」。お母さんと娘の涼子さんと一緒に暮らしています。
今日はお母さんの仕事が休みの日。涼子さんを仕事へ送り出すとお母さんは家事に大忙し。「小太郎」も宿敵の掃除機相手に大奮闘。お母さんと過ごすいつもの時間です。
女手ひとつで3人の娘を育てたお母さん。三女の涼子さんは幼い頃からずっとわんこと一緒。歴代のわんこが亡くなり、ふたりの姉が嫁いで行った後、涼子さんが連れて来たのが、3代目の「小太郎」です。
その涼子さんはもうすぐ結婚する事になりました。そして、「小太郎」も一緒に嫁ぐことになったんです。
こうやってお母さんと一緒に住み慣れた街を歩くのもあとわずか。知らない土地へ嫁いで行く娘を支えて欲しい、これが、「小太郎」に込められた母の想いです。
2人と一匹で小さなテーブルを囲む夕食のひととき。今日もこうして「小太郎」と家族の一日が終わります。
5月のある日。「小太郎」は仕事が休みの涼子さんを引っ張って、近くの駅へと急いでいました。実は、今日は涼子さんの婚約者がひさしぶりにやってくる日なんです。
婚約者の黒岩さんは、千葉県で働いているので結婚後は涼子さんも「小太郎」を連れて千葉県で新しい生活をスタートさせることになっているんです。
もうすぐ結婚式。付き合い始めた頃から「小太郎」はいつもこうやってふたりを見守ってきました。
母と娘、そして「小太郎」の2人と1匹で暮らしてきたおよそ4年間。何の変哲もない当たり前の時間がとても大切な想い出に変わろうとしています。
6月2日「小太郎」は出席できませんでしたが、お母さんや親戚が見守る中、涼子さんは晴れてバリ島で結婚式をあげました。
そして、いよいよ、涼子さんが旦那さんと共に千葉県へ引っ越す日がやって来ました。
大切な娘への母の想いを託された「小太郎」。たとえ遠く離れても「小太郎」は家族の心と心をつなぐ存在なのでした。