菊田早苗 VS. 瀧本誠 PRIDE男祭りで究極の寝業師対決!
文・李春成
すなわち菊田は、「宇宙の果て」の未体験ゾーンへ踏み込んでみたかったのだ。もちろん勝算があってのオファー受諾ではあるが、瀧本の胸を借りるという気持ちもぼんやりとながらあった。
「6月の田村さんと瀧本の試合では、田村さんの打撃に押されて判定負けしてしまいましたけど、僕はああいう形での試合は望んでいません。真っ向から仕掛けて一本を取りたいという気持ちが強いんで。ここ最近になって、具体的な戦略もだいたいできました。プロとしての僕のキャリアなんて関係ない。強い人ってのは、むっちゃくちゃ強いんですから。だから一格闘技者としてしか、瀧本を見てませんね」
GRABAKAの道場がある東京・落合にもそろそろ師走の風が吹き始めた12月初旬の夜だった。コートの襟を立てながら早稲田通りを歩く菊田は、いつのまにか口を真一文字に閉じていた。
最近凝っているというピアノで、彼は今夜もビリー・ジョエルを弾きながら、鋭利になった心を休ませるのだろうか。ニューヨーカーは歌う。I took the good times, I'll take the bad times……。楽しい時を受け入れてきたんだ。辛い時だって、気持ちよく受け入れていこうじゃないか。菊田早苗、34歳。プロファイターとしての正念場を迎える一戦が迫っている。
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