財政悪化なぜ起きた?自治体と議会の責任は
第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品『みのたけ 〜富山県高岡市財政再建への道のり〜』(制作:富山テレビ)
10月5日(金)27時5分〜28時

2017年11月、富山県第二の都市・高岡市で突如、市の財政難が発覚しました。市長は「新幹線関連事業に対する身の丈を超えた投資が要因」と謝罪しましたが、突然の公表に市民からは怒りの声が相次ぎました。新年度、財政再建策として打ち出されたのは、コミュ二ティーバスの廃止など市民生活に直結するものでした。市はなぜこのタイミングで財政難に陥ったのか、そして行政を監視すべき市議会の役割は果たされていたのか。高岡市財政再建の道のりを俯瞰します。

「身の丈」。取材を通じて、市当局や市民から最も多く聞いた言葉です。悲願だった北陸新幹線の開業から3年足らずの2017年11月。地元紙が「高岡市40億円の財源不足」と報じました。どの自治体でも予算を編成するときは、歳出と歳入のギャップ、いわゆる財源不足が生じることはあると、当初、市民や私自身もそれほど問題視はしていませんでした。しかし、その一カ月後、高橋市長が発表したのは、市が当面の目玉事業として掲げていた新総合体育館の建設中止と、「財政健全化緊急プログラム」という災害でも発生したかのような対応でした。なぜ財政難に陥ったのか。今まで考えもしなかった事態に、市民の不安や不満の声が急速に高まるのを強く感じました。そして、本格的に高岡市当局や市議会への取材に入ると、さまざまな問題点に気づかされました。

まずは、北陸新幹線開業に合わせ整備された二つの駅です。新幹線整備では、市は新幹線駅・在来線駅の併設を調節できず、二カ所に分離しました。ハード事業だけで250億円超の投資。中でも、市が重視したのは、市の玄関口となる在来線駅の整備でした。新幹線をきっかけに駅周辺の活性化を狙い、空中経路や地下街など、都会をまねた立体的な構造にしましたが、効果は薄く商店街は閑散としたままです。

次に、平成の大合併です。2005年、人口16万人だった高岡市は、隣接する人口1万4000人福岡町との合併にこぎつけました。「当時の財政のためには"合併特例債"が欲しかった…」合併調印した前高岡市長の橘衆院議員と元福岡町長の石澤氏は語ります。その特例債を使って建設された「ハコモノ」の維持管理費は、今もボディブローのように財政を圧迫し続けます。改めて市内を見渡すと、その他にも立派な施設が多く存在し、市長や市民の言う「身の丈を超えた」という言葉に納得しました。

その頃、市は新年度予算の策定作業に取り組んでいましたが、なぜか緊張感が感じられず、市民の怒りを真摯に受け止めているのか、疑問を感じました。一方、市議会議員の定数は27人、うち20人が自民会派です。2018年3月、市が提案した新年度予算は議会で原案通りに可決されました。これまで新年度予算が否決されたことはないと言います。市議会の最大会派自民同志会の会長にこの点をただすと、「今まで市当局とは水面下で議論を重ねてきた」と答えました。議会とは何のための場なのか、行政だけでなく、議会にも疑問を感じざるを得ませんでした。

新年度予算では、当初案の通り、市民に親しまれ、必要とされてきたコミュニティーバスが廃止されました。「今までバスで美容院に行っていたのも、今はタクシーを使っていかなければならない」交通費は何倍にも増したと市民は嘆いています。今後、5年間かけて取り組む財政健全化緊急プログラム。しかし、市が示した策を検証すればするほど、市民生活へのしわ寄せと借金返済の先延ばしに過ぎない実態が浮き彫りとなってきます。借金にあたる市債1100億円も残ったままです。私たちの生活を決める市と市議会はいかにあるべきなのか、番組を通して考えます。


【コメント】
■ディレクター・日高寛章(富山テレビ放送 報道制作部)
「東京都でも東京五輪に向け、大型施設の整備など投資の時期だと聞きます。どの地方でも、あるきっかけで多額の投資を行い、活性化を期待することは理解できますが、投資がもたらす負担は市民が背負い、次世代の若者たちが背負うことを、きちんと理解する必要があります。私は現在、27歳。恥ずかしながら、自分の住む街がどのくらいの予算規模で、どの事業に投資しているのかなど、報道に携わるまで考えたことはありませんでした。首長や議員を選ぶのも市民です。行政や議会への関心を高め、私たちが暮らす街について考えなければならないという思いで制作しました」

【番組概要】
■タイトル
第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
『みのたけ 〜富山県高岡市財政再建への道のり〜』(制作:富山テレビ)

■放送日時
10月5日(金)27時5分〜28時

■スタッフ
□制作統括
飯野宏之(富山テレビ報道制作局)
□プロデューサー
徳中正史(富山テレビ報道制作部)
□ディレクター
日高寛章(富山テレビ報道制作部)
□撮影
小島崇義(富山テレビ放送)
□ナレーター
目黒光祐(シグマセブン)
□MA
妻藤卓也(東京サウンドプロダクション)
北條玄隆(東京サウンドプロダクション)
□美術
右近千代美(富山テレビ放送)
□CG
波房恵樹(富山テレビ放送)

番組・イベント情報へ
0.とれたてフジテレビ TOP

※古い機種では表示が崩れている場合があります。その場合は、パソコンまたはスマートフォンで閲覧ください。

(C)フジテレビジョン