ほんとにあった怖い話
-ほん怖ファイル-

「影の同調」

加奈(MEGUMI)は、幼い頃からの夢を実現するために、両親を説得して東京の美容学校に通い始めた。入学して5ヵ月が経ったが、厳しい実習と、女子寮での生活になじめずにいた加奈は、次第に自信を失いつつあった。そんな折、加奈は、自分がスイッチを入れると寮の廊下の電球がすぐに切れてしまうことに気づく。その話を聞いた同僚のゆかり(山岡)は、偶然だと笑うが、加奈にはこの出来事が自分の将来を暗示しているような気がしてならない。
あくる朝、洗面所に行くと、加奈の棚にあった洗面器や歯ブラシなどが床に散乱していた。その次の日も、また次の日も、同じことが起きていた。誰かが嫌がらせをしているのでは、という疑いが頭から離れず、実習にも身が入らない加奈。思いつめた加奈は、やがて美容学校を辞めようと決意する。
事情を知ったゆかりは、加奈に嫌がらせをしている犯人を見つけようと、加奈と一緒に物陰に潜んで洗面所を見張っていた。すると、突然ガシャンという音が響いた。が、ふたりが駆けつけるとそこには誰もいない。その時、風呂場からシャワーの音が聞こえてきた。「中にいるよ」ゆかりはそう言うと勢いよくドアを開けるが、やはりそこには人影はなく、シャワーだけが勢いよく吹き出していた…。
加奈とゆかりは、先輩の絵理(楊原)に相談した。絵理によると、かつてこの寮で自殺した女性がいるのだという。その女性・秀実(白川)も、加奈と同じように美容師になる夢を抱えて上京したものの、内気だったが故に、誰にも悩みを打ち明けることができず、自分を追い詰めてしまったらしい。
その夜、眠れずにいた加奈は部屋を出て洗面所に向かった。「どうして美容師になりたいなんて思ったの?私なんか、全然ダメ…」。鏡に映る自分の姿を見つめ、弱音を吐く加奈。その時、加奈の背後に人影が現れた。秀実だった。加奈は「死んだら楽になるの?」と秀実に問いかけた。すると、ガシャンと加奈の洗面器が落ち、秀実は厳しい目で加奈を見つめていた。その時、加奈はすべてを悟った。秀実は、くじけそうになっている加奈の心の弱さを諌めようとしていたのだということを…
その日以来、加奈は、洗面器を落とされることもなく、秀実の気配も感じなくなっていた。やがて美容学校を卒業した加奈は、都内の美容院で働き始める。元気に働き続けることが秀実への供養にもなる、という思いを胸に…。

脚本/小川智子
演出/鶴田法男

多田加奈…MEGUMI

安藤ゆかり…山岡由実
菅原絵理…楊原京子
桑原亜佐美…加賀野泉
伊藤秀実…白川みなみ
川上公子…島田珠代

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