ほんとにあった怖い話
-ほん怖ファイル-

「さよなら俊彦」

信子(佐藤)は、ある事情から大学を中退して、就職した。5年前から母・菊恵(朝加)の体調が悪くなり、入退院を繰り返していたからだ。
ある日、仕事を終えて菊恵が入院している病院を訪れた信子は、菊恵から妙な話を聞かされる。5年前、バイクの事故で亡くなった弟の俊彦(小林)が病院に来たというのだ。俊彦は、昨夜もやってきて、菊恵のことを睨んでいたらしい。
そんな話を聞いた信子は、俊彦のことを思い出していた。父を早くに亡くしたこともあり、信子は、まるで父親のように厳しく俊彦に接していた。事故があった夜も、俊彦と喧嘩してしまったのだ。弟は、きっとまだ私たちを恨んでいるに違いない――信子はそう思っていた。
信子が家に戻ると、信子と菊恵の写真が入っていた写真立てのガラスに突然ヒビが入った。ヒビは、ちょうど菊恵の顔あたりに入っていた。するとそこに、菊恵の容態が急変した、という知らせが。信子は、慌てて壁に掛けておいた車のキーをとろうとしたが、どこにもない。信子は、俊彦の遺影に目をやり、どうしてそんなことをするのか、と叫んだ。すると、背後で音がして、テーブルの上に車のキーが…。信子は、それを掴むと、慌てて飛び出した。
信子が車を走らせていると、前方で交通事故が起きていた。行く手をふさがれた信子は、わき道に入り、病院へと急いだ。信子が病院に到着すると、そこに俊彦の姿があった。菊恵がいる、集中治療室に入っていく俊彦。俊彦は、菊恵の傍らに立つと、その手を握り締め、信子の方を向いてうなずいた。
その姿を見た信子は、すべてを理解した。俊彦が病室に現れたり、ガラスにヒビが入ったりしたのは、菊恵の体の変化を知らせようとしていたのだ。そして、車のキーを隠したのも、信子を事故から守るためだったということを…。
菊恵は、危険な状態を脱し、命を取りとめた。信子は、それ以来、俊彦の姿を見ることはなかったが、いまも彼が信子や菊恵を見守ってくれている、と信じていた。

脚本/林民夫
演出/鶴田法男

松村信子…佐藤仁美
松村俊彦…小林且弥
松村菊恵…朝加真由美

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