ほんとにあった怖い話
-ほん怖ファイル-

「共演者」

舞台の仕事で地方公演をしていた萩原は、ある夜、若手の役者やスタッフたちと飲み、怪談話で盛り上がった。その席で萩原は、いま自分たちが使っている劇場でもおかしなことがあった、と言い出す。
数日前、劇場入りした萩原がトイレに入ると、背後から誰かが「流行さん…」と声をかけてきた。が、萩原が後ろを振り向くと、そこには誰もいなかったのだという。さらに、舞台の下見に行った萩原は、ふいに客席の隅から女性のすすり泣く声が聞こえ、何者かがドアから出て行くのを目撃。後を追ったが、その女性が入っていった部屋のドアを開けるとそこには誰もおらず、次の瞬間、小道具として置いてあったオルゴールが鳴り出した、というのだ。最初は萩原の話を半信半疑で聞いていた若い役者たちも、そのオルゴールが壊れていることを思い出し、青ざめた。さらに萩原は、本番中、ある席に、じっと座っている不気味な人影があったことも告げた。しかもその人影には、何人かの役者も気づいていたというのだ。
すると、萩原の話に聞き入っていたひとりの女性が、言いづらそうにしながら口を開いた。実は、彼女を含む何人もの役者が、本番中にもうひとつの異変を目撃していたのだ。それは、舞台のクライマックスである、萩原の長台詞の場面で起きていた。なんと、演じている萩原の目と鼻の先に、もの凄い形相をした女が、顔をつき合わせるようにして立っていたというのだ。 その話を聞いて凍りついた萩原は、部屋に戻り、布団に入ろうとした。すると、視界の先に戸袋が見え、わずかに開いていた。なんとなくそれが気になった萩原は、戸を閉めてもう一度布団に潜った。すると、閉めたはずの戸がまた開いていた。萩原は、意を決してそれを閉めたが、その瞬間、畳の中から男の手が突き出して彼の手首を掴んだ。慌てて振りほどこうとするが、男の手は離れず、どんどん畳の中に引きずり込まれていく萩原。渾身の力をこめて萩原が腕を引き抜くと、なんと、男の黒い上半身が抜け出てきた。萩原は、恐怖のあまり気を失った。そして、目を覚ましたときには、すでに夜は明けていたという。。

脚本/三宅隆太
演出/鶴田法男

萩原流行…萩原流行

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