山田太一の『ありふれた奇跡』
第2回「タイトル」
(2009/01/06)

今の社会は人間の力がすべてという考えが強く、願ったことは必ず実現するとか、頑張れば何とかなるという思いが強い気がします。だから、人が何か失敗すると努力が足りないといわれてしまう。でも、本当にそうでしょうか。人はそれぞれ環境も容貌も親もお金のあり方も才能も違う、いわばぐちゃぐちゃの中で生きているわけで、みんな一斉に同じスタートラインに立ち、同じ条件で走り、勝ちを競っているわけじゃない。しかも人間の力が及ばないことがたくさん我々を取り囲んでいて、人間の力なんてごくわずか、あとはラッキーで成り立っているんじゃないかとさえ思う。たとえば生まれる年であったり、生まれる国、容姿容貌もそう。今の日本に生まれたからこうして平和に生きているけれど、戦場となっている国に生まれていたら毎日を死の恐怖に怯えて暮らしていたかもしれない。そういった、どうにもならないものに囲まれて僕たちは生きているんです。

そう考えると、こうして生きてることが、もしかしたら奇跡かもしれないし、この世は"ありふれた奇跡"に満ちているとすら思える。すべての出来事を"奇跡"とくくってしまうことなどできませんが、でもそういう見方で人生を見ると、いまの日本人の多くが"ありふれた奇跡"の中で生きているという気もします。同じように、ドラマの登場人物たちもみなありふれた奇跡の中で生きてもいるんです。

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