山田太一の『ありふれた奇跡』
第1回「連続ドラマ」
(2008/12/01)

連続ドラマを描くのは12年ぶりになります。中村(敏夫)プロデューサーから「連続ドラマを、もう1回やりませんか?」と声をかけていただいたのが始まりでした。

中村さんとは、「早春スケッチブック」(1983年)や「真夜中の匂い」(1984年)にはじまり、最近では単発ドラマ「星ひとつの夜」(2007年)もご一緒した長いお付き合いになります。さらに、「星ひとつの夜」では中村さんのほか、長部(聡介)プロデューサーや演出の田島大輔さんともご一緒しました。その時のスタッフがとても丁寧に、かつ真面目に作品に取り組んでくださり、その姿勢に感銘を受けたのを覚えています。今回お話をいただき、あの時のように真摯に作品に取り組んでくださるスタッフとなら安心できると、引き受けました。

もう連続ドラマは描かないと決めたのは、時代の変化を感じたからです。やはり連続ドラマにも時代の流れがあり、ある時ふと「自分は違うかな」と思った。1人の作家が、どの時代にも適応していくのは、むしろみっともないことのようにも思えたんです。流れから外れるからこそ作家であるという気持ちもありました。そうしているうちに12年が経ち、現在に至ります。ただし、その間もずっと単発ドラマは描いていたので、僕自身はテレビ界から離れていたという感覚はありません。

連続ドラマと単発ドラマの違いは、なんといっても"放送時間の長さ"。単発の場合、2時間ほどで物語を完結させなければならないから、どうしても中心の人物の話に集中してしまう。けれど連続ならば、主人公だけじゃなく、その周りを取り囲む人たちの物語を入れても許される長さがある。『ありふれた奇跡』は、若い男女の恋物語ではありますが、それだけではなく、それぞれの家族の話も描いています。そういう連続ドラマならではの良さを久しぶりに感じている作品です。

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