昭和39年、間もなく開催されるアジア初のオリンピック東京大会に向け、日本中が沸き立っていた頃――。切り取られた奈良の寺の芳名帖の一部が男の絞殺死体の近くで発見される。

芳名帖に書かれてあった名前をあたっていた本庁の鈴木刑事補(江口洋介)と世田谷署の添田刑事(生田斗真)は、野上久美子(比嘉愛未)の父親・野上顕一郞(田村正和)と同じ筆跡が残されていることを不審に思う。
しかし野上は昭和19年、外交官としてヨーロッパへ赴任し、その地で病死していた。
捜査が進み、被害者は奈良に住む伊東忠介(相島一之)で、何者かと会うために上京したことが品川の旅館の主人(小日向文世)からの聞き込みでわかった。
また、伊東は野上と共に当時中立国の公使館にいた陸軍武官だった事も判明する。
久美子の親類・節子(木村多江)やその夫・亮一(萩原聖人)、そして野上の妻であり、久美子の母・孝子(風吹ジュン)は捜査に何度もやってくる刑事達に困惑していた。
だが、同じ公使館にいた村尾(佐野史郎)と、特派員だった滝(草刈正雄)達は、何故か野上の死について語りたがらなかった。
村尾は、しつこく追い掛け回す鈴木達に、「そんなに知りたければ、ウィンストン・チャーチルに聞きたまえ」と言葉を残して去って行った。
久美子は、一度だけ歌舞伎座ですれ違った滝と村尾からデッサンのモデルを依頼される。ところがその画伯が謎の死を遂げてしまう。
やがて、“死んだはずの父親”が生きているのではないかと疑惑を持ち始めていた久美子は、何者かに京都の南禅寺にひとり呼び出される。
その夜、久美子が宿泊したホテルで発砲事件が起きる。銃弾に倒れたのは村尾だった。そこには滝の姿もあった。
刑事達も全ての事件は野上顕一郞によって繋がっているのではないか? と本格的に捜査に乗り出す。
そして、鈴木警部補の発言に捜査本部は凍りつく――。
「幽霊を指名手配しろと言うのか?」と佐々木本部長(永島敏行)達は驚きを隠せないでいた。
しかし、鈴木と添田は深く頷く。
果たして、死んだはずの野上は生きているのか? ならば何故、野上は妻子を捨て、国籍を消滅し、“死亡”したと発表させたのか?
これら全ての事件の根幹は、終戦間際の公使館にあった。
この一人の男の生涯を通じ、戦争がいかに様々な人々に不幸な人生を生み出したのか、その悲哀を清張サスペンスで追って行く。



