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スタッフインタビュー

[演出]

西浦正記

先日、撮影を終えたばかりですが、想像以上にいいものが撮れたと手ごたえを感じています。スタッフは知恵を絞り、1950年代という時代の考証――衣装、風俗、建物の感じなど、できる限り忠実に再現してくれました。今回、出演者のみなさんにお伝えしたのは、カッコよく、きれいに見えてほしいということ。そのうえで、妬みや愛憎を含めて、感情を隠さずに出してくれとお願いし、そこから引き算をしていくような演出をしています。時代の躍動感やエネルギッシュな人々を表現したいとの狙いからです。
主演の松嶋菜々子さんは、役に関しての理解が深く、常に式子というひとりの女性の気持ちを紡いでいく作業に集中されていました。撮影する時代が行き来したとしても、お芝居のポイントを整然と決めていらっしゃるからか、迷うこともなく式子の感情を見事に表現してくださいました。微妙な感情のコントロールが素晴らしかったです。松嶋さんは、どうすれば視聴者の方が楽しめるかということを、すごく考えている女優さん。客観的でちょっと演出家に近い感覚をお持ちなので、僕自身もすごく助けられました。
第二夜の重要なシーンの舞台となるパリでの撮影でも、とてもいい画が撮れました。特に早朝のエッフェル塔は美しく、新しい挑戦をしようと思っている式子の心情ともマッチしていて印象に残っています。
このドラマは、式子という世間知らずのお嬢さんが夢を持って生きていくうちに、最終的にひとりの男性に翻弄されてしまうという、どの時代でも起こりうる、どの時代にも通じる物語です。視聴者のみなさんご自身が、登場人物の中に入って、熱を持って生きるということを感じていただければと思っています。

[スタイルディレクター]

大沼こずえ

松嶋菜々子さん演じる式子は、洋裁学校を立ち上げ、やがてデザイナーとして成功していく女性ということで、今回、通常のドラマの何倍にもなる衣装を着用しています。その数は、オーダーメイドで製作した10着ほど、合計60着ほどになります。
物語の設定は、既製服が少しずつ出始めていた1950年代。一般の方は、自分で洋服や着物をあつらえたり、布団でさえも綿を入れて打つのが当たり前の時代です。式子は、裕福な家庭の出身で、ファッション業界での成功を夢見る女性ですが、そのあたりの時代背景も考慮しながら衣装を決めていきました。
ドラマで描かれる式子の年齢は、30代後半から40歳頃まで。学長としてセレモニーで挨拶をしたり、銀四郎さん(玉木宏)との恋愛があったり、ファッションデザイナーとしてショーに出席したりと、年齢とともに彼女を取りまく環境が変化していくのもポイントです。

監督はもちろん、松嶋さんとも「この時の式子なら、こういう色味がいいのでは」と式子の生き様や思いを踏まえた上で相談しながら選んでいきました。前半には、松嶋さんが「少し恥ずかしい」とおっしゃるような若々しいものや、銀四郎さんとの恋愛の前後では、女性らしい心情が表れた衣装も登場します。
衣装デザインを担当してくださったELZA  WINKLER  の中井さんとも松嶋さんのスタイルに合わせ、デザイン、生地、柄を選び、さらにそれぞれのシーンに合わせて松嶋さん演じる式子の揺れ動いていく女性としての感情なども考慮に入れながら、同時に中井さんの得意とするデザインを大事にして中井さんらしさを式子の衣装作りに取り組みました。
その他の衣装も、中井さんのデザインとあまりかけ離れない様なものを選びました。
松嶋さんの美しいスタイル、身長を考えスカート丈は、ミモレ丈(膝下丈)、ウェストマークを意識して、ベルト使いを工夫しています。

コーディネートのポイントとして挙げられるのは、色合わせです。
敢えて、バック、靴、帽子で差し色を入れたり、ワントーンコーディネートになっていたり、地味になり過ぎない、女性らしい色バランスに仕上げました。

[衣装]

加藤哲也(松竹衣裳)

僕が、今回担当させていただいたのは、松嶋菜々子さん、浅野ゆう子さん以外の、エキストラを含むみなさんの衣装です。中でも、式子さん(松嶋)の弟子である女性陣(ミムラ、相武紗季、木南晴夏)のメインとなる衣装、銀四郎(玉木宏)の衣装は、デザイン画を描いてオリジナルで製作しました。作ったもの以外では、現代の既製服、ビンテージショップなどで探した時代物の服、松竹衣裳が在庫として持っている服を組み合わせてスタイリングしていきました。西浦(正記)監督から言われたのは、「ドラマの舞台となる1950年代に絶対になかった服以外は取り入れよう」ということ。当時と今では、俳優さん方のプロポーションも違いますし、厳密にすべて当時のもので揃えてしまうと、逆に違和感が出てしまうからです。雰囲気が合うものならば、時代を問わず使用していこう、と決まりました。

そんな中で、特に注意したのが、バランスといいますか、俯瞰(ふかん)で見たときに、全体の調和が取れているかどうかということ。松嶋さん、玉木さん、3人のお弟子さんという5人がメインとなり、その周りにエキストラの方がいるようなシーンも多かったのですが、メインの方を自然と浮き上がらせるためにはどうすればいいか、ということは常に考えましたし、もっとも難しかったポイントですね。色味も、素材感でも主張のある生地を使った衣装が多いですし、そこに帽子を着用している場合もあると、にぎやかになり過ぎて、人物が浮き出なくなってしまうのです。そこは衣装合わせを重ね、現場でも注意を払いながら、作っていきました。
ファッション業界が舞台になっているドラマとはいえ、これだけだけの着数が登場し、衣装にこだわったドラマもあまりないと思います。僕自身、今回このプロジェクトに参加させていただき50年代の服に接してみて、いろいろな発見がありましたし、この時代の服の“かわいらしさ”にも気づきました。視聴者のみなさんにも楽しんで見ていただけたら、と思います。