インタビュー

深雪は、優秀なベビーシッターでありながら、何か企てもありそうな人物です。どんな気持ちで演じていらっしゃいますか?
この作品は、「昼顔」(14年フジテレビ)でもご一緒した井上由美子先生の脚本なのですが、今回の役も「昼顔」の時と同じようにミステリアスなので「あの人が出てくると怖い…」という声を聞くこともあって、多少なりともショックを受けています(笑)。ですが、この深雪役で視聴者のみなさんをゾワゾワさせて、暑い夏を少しでもヒンヤリさせることができたら(笑)、と思いながら精一杯演じています。
深雪には過去に辛い出来事があったんだろうと想像できます。
家庭や家族にまつわることで何か不幸な人生があったというのは、制作側の共通認識としてあるのですが、今の時点では、監督やプロデューサーから詳しいエピソードなどをお聞きしていないので、あくまで自分自身の想像で深雪に関するキャラクター設定をしています。今後、ご覧いただく上で邪魔になってしまうといけないので、あえてそこはあまりお話ししないほうがいいですね(笑)。深雪は、ベビーシッターとして3年のキャリアもありますし、仕事に関しては完璧な人。子供に対して本当に愛情があることも間違いはないですし、たとえお預かりしたお子さんであっても自分の子供と同じくらい愛を注ぐ熱心なシッターなのかな、と思っています。
一方で、奈津子(松嶋菜々子)の夫・浩太郎(原田泰造)へのアプローチは気になりますね。
人と人の関係は一方的ではないので、深雪だけが仕掛けているのではないのかなとも思っています。浩太郎さんは、奥さまが働くことに理解はあっても、定時には帰ってきてほしいと思っている方。だからこそ簡単にシッターを頼もうとする奈津子さんに不満を感じるのかもしれないですね。そんな時のちょっと寂しそうな背中を見て、深雪は共感する気持ちと同時に「自分が何かしてあげられないだろうか」と思ったのかなって。それに、浩太郎さんは必要以上に優しくて、シッターとしての仕事を褒めてくださった。深雪自身、あまり褒められるような人生を送ってこなかったのか、そこを認めてもらえたうれしさもあって、自分の身の上を話してしまったのかもしれませんね。5話で深雪があるセリフを言うのですが、それは本心からの言葉だろうと思いました。
それにしても、仕事と家庭を両立するのはいかに難しいことか、奈津子を見て感じる視聴者の方も多いと思いますが、伊藤さんご自身はいかがですか?
私も奈津子さんに共感する部分が多いですね。お子さんがいるスタッフの方が言っていましたけど、奈津子のセリフにもあるように「家庭のことを女性がやるのは当たり前」という風潮は、やっぱり未だに残っているものだって。同じことをやったお父さんは「ありがとう」と言われるけれど、お母さんが感謝されることは少なかったりする。わかっていても、日々の積み重ねがストレスになることもありますよね。奈津子さんに対しての斎藤常務(石丸幹二)の仕打ちを見ていても、「ひどいなぁ」って(苦笑)。個人的には、もう少し女性に対して思いやりのある、開けた社会になればいいなと思いますし、そういう大変な状況のなかで働いているママさんたちに、応援できるメッセージを発せられるドラマになればいいな、と思っています。
奈津子を演じる松嶋さんご自身もまさに働くママさんですね。
そうですよね。実際、菜々子さんもそういう状況で働いていらっしゃると思います。母としても女優としても、とても尊敬していますし、現場ではいろいろな話をお聞きしながら、日々勉強させていただいています。
奈津子と深雪の関係がどうなるのかも気になるところですが、伊藤さんはどこに注目していますか?
深雪のことでいうと、あまり幸せではないなかで、彼女なりに必死に生きていますが、ひとつボタンを掛け違えたことによって思いもよらない方向に行ってしまう危険がありそうです。そこに陥らないように、掛け違いに気づいて欲しいのですが、それが叶うのかどうか…ひやひやしています(笑)。奈津子さんに対しては、深雪が過剰に反応し過ぎている部分があるとはいえ、奈津子さんが仕事に打ち込むにしたがって、家庭の歯車が徐々に狂っていく…。それでも奮闘していくなかで、仕事や家庭がどうなっていくのか、一筋縄ではいかない展開に注目しています。