第18回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『生きてほしい 〜進まない臓器移植と意思表示〜』
(制作:富山テレビ)
<2009年7月3日(金)深夜3時20分〜4時15分放送>
重い心臓病で移植が必要となった松原大樹さん(19)。彼は法的には国内で手術を受けられるが、移植件数が少ない国内では待つだけの時間がない。生きるため海外での移植の道を選んだが、それには高額な医療費が掛かり、地元の仲間たちが募金活動で資金を集めることになった。
しかし国際的には「自国の移植希望者は自国のドナーで賄うべき」として、渡航移植を制限する動きもみられる。臓器移植法成立から12年、遅々として進まない臓器移植と日本人の意思表示の現実に迫る。
富山県氷見市の松原大樹さん、19歳。小学校から野球一筋、高校では4番を務めるほどのスポーツマンだったが、家族が撮影した映像を通して初めて見た、病院のベッドで横になる彼の姿にその面影はなかった。
彼に告げられた病名は、「劇症型心筋炎」。助かるには心臓移植しかなくなったが、そんな彼の前に、今度は進まない日本の臓器移植の現状が立ちはだかった。
心臓移植を待つ134人の待機登録者に対し、国内の移植件数は年間10件ほど。平均2年4カ月待たなければならず、大樹さんにはその猶予はない。残された道は海外での移植。しかし、それにも1億円以上という高額な医療費が掛かるため、地元の有志や同級生たちが募金活動を行い、資金を集めることに。
番組では、不安と希望を抱きながら移植を待つ大樹さんの思いや、彼の命を救うために意思を示すことを迫られた家族や仲間たちの思い、そして、これまで臓器移植にかかわった人たちの思いを通して、法的には国内で移植が受けられるはずの男性が、海外に行かなければならないという、異常とも言える今の国内の臓器移植の現状を問う。
それにしても、日本では臓器移植法が施行されてから12年が経つが、なぜ臓器移植が進まないのだろうか。
取材した関係者などによると日本人の臓器提供への意識は日増しに高まっているという。しかし、現実を見ると意思表示カードの所持率は低い。高まっている意識に反して、カードを持つまでに至らないのは、どう意思を表示すればよいかが分からない、そして、「他人ごと感」がまだ抜けきれていないということが原因の一つとみられる。
さらに亡くなった方が意思表示カードを持っていても連絡の不備で提供に至らないケースがあったり、ガイドライン上は臓器提供可能施設とされていても、体制が整っていないなどの理由で、実際には臓器提供を行えない施設も多いという。せっかくの意識の高まりに、臓器提供のシステムが追いついていないというのも日本の臓器移植が進まない一つの要因と言える。
取材が大きく動いたのは、大樹さんがアメリカで移植手術を受け、取材も終盤に差し掛かろうとしていた今年4月。すでに国際移植学会は去年5月、「自国の移植希望者は自国のドナーで賄うべき」とするイスタンブール宣言を発表していたが、WHOでも今後、海外への渡航移植に制限を設ける方針ということだった。大樹さん家族も渡航移植に国際的な厳しい視線が注がれていることは承知していた。できることなら国内で移植を受けたかったが、息子に生きてもらうためにはそうせざるを得なかった。また、大樹さんの渡航したアメリカには日本から渡航してきた家族を支援するボランティア団体があるが、そのメンバーたちも日本国内の移植医療が充実し、自分たちが早く解散できることを望んでいる。
国際社会の批判という後押しもあり、ようやく臓器移植の件数を増やすための法整備が進み始めた。しかし、どのようなシステムであれ、臓器移植は本人、家族のいずれかが何らかの意思表示を迫られるものだ。ただシステム整備すれば、良いというものではない。大事なのは、国民一人ひとりの意識の持ち方であり、問題は他人事として見過ごしてしまう無関心さにある。
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