インタビュー

後藤博幸プロデューサーインタビュー
この企画を立ち上げるにあたって、後藤さんが一番こだわった部分はどこですか?
後藤プロデューサー 1999年にこの企画を立ち上げた時、「徹底的に怖いものにしよう」「わかりやすいものにしよう」「エンタテインメントとして面白いものにしよう」という3本の柱があったんです。怖くて、わかりやすくて、面白い…この3本の柱は絶対に崩したくないと思っていました。そういう中で、「金曜エンタテインメント」枠から土曜19時という枠でやろうと思った時に、中途半端なものを持ってきても数字の取れない枠だということはわかっていましたので、その3本の柱に加えて、「とにかく思いっきり振り切ったものにしよう」と…。それで受け入れてもらえなかったらしょうがない、というスタンスで臨みました。それはいまのところ何とか守ってこれたかな、と思うんですが(笑)。
BBSには「良質の番組なので、続けてほしい」というような書き込みも多いのですが、「振り切った番組」を作る、というのは、どんな反応が返ってくるか予測できない怖さもあったのでは?
そうですね。ただ、怖いものを作る、振り切る、とはいっても、土曜19時バージョンの怖さ、っていう基準のようなものが自分の中にあるんです。これは、レベルが高い低いの話ではありませんし、子ども向けに作っているというわけではないので誤解していただきたくないのですが、この演出は「ほん怖」にはふさわしくない、この演出はOK、というのが毎回編集室で繰り広げられてて(笑)、場合によっては撮り直しをしたこともありました。そこが、本当のコアなホラーファンにしては物足りないんじゃないかな、という不安もありましたね。あくまでも「ほん怖」土曜19時バージョンの怖さ、ですから…。ただ、むしろ怖いものが苦手な方にも楽しんで貰えてるようなので、それは意外でしたが…。
ギリギリのバランスを保ってきた、ということですね。
まさにその表現が的確だと思います。今回は特殊なスタイルで、ドラマはドラマチーム、ほん怖クラブはほん怖クラブチーム、と完全に別々のチームで作っているので、その間に立っているのが僕だと決めていましたから。先導役が何人もいると決まるものも決まらないし、ギリギリのバランスを保つのはこの方法がベストだと思ったので、自分が大変なのは重々承知の上で、敢えてそうしたんです。だから、自分の中の基準を保つために、時には厳しいことも言わなければいけなかったし…。ドラマスタッフがOKだと思うものを作ってきても、怖さのベクトルが違うこともありましたし…。たとえて言えば、「呪怨」にはしたくなかったし、「リング」にもしたくなかったんです。もちろん、どちらの作品も僕は大好きですけどね(笑)。同様に、スタジオ部分に関しても、演出について常に話し合っていましたし…。
これまで放送されたドラマの中で、後藤さんが特に印象に残っているものはどれですか?
ひとつに絞るのはむずかしいんですが…。振り返ってみると、第1回とか第2回あたりには、インパクトが強い話を入れましたね。1話の冒頭にやった「廃屋の少女」は、オンエア上は少し愛嬌のある感じにしたんですけど、本来はもっと怖い話なんですよね。もし自分が遭遇したら失神するであろう話なんです(笑)。「さがしもの」とか「最期の声」もそうですね。なにせ、1万通以上ある体験談から、絞り込んだものですから…。
放送が始まってから、恐怖体験や心霊写真の投稿も増えたのでは?
5話目あたりを過ぎて、一気に増えましたね。この間も、スタッフが手さげ袋ふたつ分の心霊写真を持ってきて(笑)。すでに3000点を超えてるんです。まあ、中には心霊写真ではないものも含まれていますが……。

送られてきたものはどうしているんですか?
もちろん、すべて鑑定してもらっています。結果的に番組で採用されなかった写真なども、最終的には全部まとめてお炊きあげをして、先生に供養していただきます。心霊写真でなくてもね。そのもようは、4月3日の特別編の最後に紹介する予定です。
心霊現象を扱う番組では、収録中に変なことが起きたりするとよく言われますが、この番組ではどうでしたか?
実はこれから先生に相談しようと思ってることがあるんです。三浦理恵子さん主演の「京子ちゃん」を撮影している時、彼女が自分のマンションに入ろうとするカットがあったんですけど、玄関横にある台所の磨りガラスに、幽霊らしきものが映っているカットがとうとう撮れてしまいまして(笑)。それが本物かどうかはこれから鑑定してもらうんですけど、現場のスタッフによると「明らかにそうだ」と…。もちろんスタッフが映り込んだということではないので、もしそれが本物だったら、番組の中でやることも考えています。心霊写真じゃなくて、心霊ビデオとして…。11回の中ではむずかしいかもしれませんけど、今クールだけで終わらせてしまいたくもないので。あと、これは霊の仕業かどうかわからないんですけど、最終的に(ドラマ・パートとほん怖クラブ・パートを)1本化する編集の時に、入っていないはずの音が入っていて再編集したり、逆に7秒間、無音状態になっていたりしたこともありました。これも原因不明なんです…。
ほん怖クラブのメンバーに関してはいかがですか?
吾郎さんもそうだと思うんですけど、1回目の収録の時は、子どもたちがやっぱり緊張してて…。それは良い面もあれば悪い面もあるんです。良い面というのは、「新鮮」ということですね。それが回を追う毎に、吾郎さんも顔と名前を覚えて、あの子はこういうキャラクターだから、こういう時はこの子に振ろう、というのがわかってきたんだと思います。尺の問題で、一部しかお見せできないのが残念なんですけど、吾郎さんがボケて、子どもたちがツッコむなんていう場面も多いですし(笑)。
毎回、メンバーの顔ぶれや座る場所が変わるのは?
鮮度を保つためです。完全に固定メンバーでやる、という手法もあるんでしょうけど、鮮度がなくなったら、ほん怖クラブの子どもたちの存在する意味がなくなってしまうような気がするので…。だから、毎回微妙に入れ替えています。
最後に、最終回と特別編のみどころを教えてください。
最終回のドラマに関しては、ベスト3をそろえました(笑)。ひとつは、山崎樹範さんが主演の「幽霊アパート」。これは、1999年にパート1をやった時から候補にあがっていたものなんですけど、映像化がむずかしいんじゃないか、と言われていたものなんです。オチは誰にも予測できないものになっていると思いますよ(笑)。ふたつ目は、上原美佐さんが主演の「誰かが囁いている」。これは、ある日をきっかけに自分のまわりで不幸なことが立て続けに起こり始めて…という話なんですけど、これは朝日ソノラマの原作ではなくて、実際に投稿されたものの中で一番インパクトがあったものなんです。ラストは、雛形あきこさん主演の「訪う人々」。亡くなったお父さん、お母さんと、残された娘の絆を描いたものです。一番泣ける話を11話のラストにしたかったんです(笑)。
4月3日の特別編に関しては、稲垣吾郎さんの「犬神家の一族」が後ろにあるので、何かしらそれと連動した、洒落たものをやろうと思っています。そして、3000枚を超える心霊写真の中から 恐怖順位49をお送りします。これは、吾郎さんとほん怖クラブのメンバーの目線で選んだものなんです。ドラマは2本に絞る予定です。1本はMEGUMIさん主演の「影の同調」。もう1本は、まだタイトルは未定ですが、小栗旬さん主演のかなり怖いストーリーです。是非、ご覧になってください。


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