いまから2年前のこと。当時小学5年生だった奈津美(菅野)は、学校に置き忘れてしまった笛を取りに戻った。奈津美が音楽室に向かうと、室内からピアノの音が漏れ聞こえてきた。先生が残っていて弾いているのだろう、と思い、名前を名乗って戸をノックする奈津美。しかし、演奏は止まらなかった。奈津美は、仕方なしに音楽室に入るが、その途端、ピアノの音が止む。部屋には誰もいなかった。奈津美は、怪訝に思いながらも、笛を探して部屋を出ようとすると、ピアノの前に女性(上江田)が座っていた。その不気味な姿から、目を離すことが出来ない奈津美。と、その瞬間、女性の姿が消えた。奈津美は、一瞬困惑しながらも、出口に向かって振り返ると、目の前には、さっきまでピアノの前に座っていたあの女性が立っており…。
数年前の夏、恭子(和希)は、恋人・俊(藤沢)の車で、夜景を見に行った。俊が恭子を連れて行った場所は、立ち入り禁止のロープが張られた場所だった。何か嫌な雰囲気を感じた恭子は、その中に入るのをためらうが、俊にうながされてそのロープを越える。目の前に広がる綺麗な夜景に、ようやく笑顔を見せる恭子。すると、どこからか赤ん坊の笑い声が聞こえてきた。その声は、どんどん近づいてきているようだった。俊は、恭子の異変に気づき、彼女の手を握って、その場を離れようとした。が、足が重くなり、思うように歩けない恭子。すると、またしても赤ん坊の笑い声が聞こえてきた。その声は、少しずつ近づいてきていた。振り返ることも出来ず、必死に前へ進もうとする恭子。ようやくロープまでたどり着いた恭子がそれをまたぐと、その瞬間、笑い声が止んだ。「行こう…」と恭子の手を引く俊。が、その時、反対側で恭子を引っ張るいくつもの手が! 恭子は悲鳴を上げ…。
後で分かったことだが、実は、俊にもあの笑い声が聞こえていたのだという。
中古車会社に入ったばかりの誠(岡田)は、年齢は下だが先輩従業員である明(山根)と一緒に、事故車なども運ばれてくる駐車場で働き始める。そこで誠は、ここはいわくつきの駐車場だと明から教えられるが、その時は、新人を脅すための冗談だと思い、さほど気にもしなかった。それから半年後、タバコを吸おうと表に出た誠は、奇妙な足音に気づく。誠は、不審に思って音のするガレージの方へ向かうが、人影はなかった。その時、落としたタバコを拾おうとしてかがみ込んだ誠は、車の向こう側に人の足があることに気づくが、立ち上がるとやはり誰もいなかった。数日後、誠は、人手が足りないため、お盆にもかかわらず夜勤に出る。仮眠の時間になり、駐車場にあった1台の車の中で眠り始めた誠は、女性のうめき声のような音で目を覚ます。飛び起きた誠は、辺りを見渡してみるが、何の異常もなかった。誠がホッと息をついたその瞬間、背後から突然女が現れ、誠の耳元に唇を寄せると「一緒に死んで…」と囁き…。
晴子(大島)は、夫の康夫(永井)とともに、青果店を営んでいた。ある夜、三島家に病院から電話が入った。長いこと入院生活を送っていた義父(伊藤)が、危篤状態に陥ったという知らせだった。康夫と長女の恵子(近野)は、すぐ病院へと向かった。ひとり残って店を閉めた晴子は、戸締まりなどをすると、病院へ向かおうとした。が、居間の蛍光灯を消そうとした途端、ふいに明かりが消えてしまう。晴子は、停電かと思い、うんざりしながら電気のブレーカーがある方向に向かうと、誰かが勝手口のドアを叩いた。「いま開けますから」と晴子が応えても、ドアを叩く音は止まない。晴子は、恐る恐るドアを開けるが、玄関先には誰もいない。怪訝に辺りを見回し、踵を返す晴子。その途端、晴子は息を飲んだ。居間に、こちらを向いて座っている老人がいたのだ。それは、義父(伊藤)だった。するとその老人は、畳に指をついて、ゆっくりと晴子に頭を下げた。次の瞬間、部屋の明かりがついた。義父の姿はすでになかった。その時、電話が鳴った。それは、義父の死を告げる、康夫からの電話だった。晴子は、涙をぬぐいながらそこに座ると、義父が正座していた場所に向かってゆっくりと礼をした。仏壇の2本のロウソクには何故か火がともっていた…。