都内の総合病院に勤務する看護士のかなえ(石橋)は、入院中の少女・あゆみ(田村)から奇妙な話を聞かされる。きのうの夜中、あゆみの病室に老人がやってきて、「杖を見なかったか」と聞かれたというのだ。かなえからその話を聞いた後輩看護士の友美(藤原)は、あゆみの病室に来た老人とは今日亡くなった竹内(矢田)という患者のことではないか、と思い当たる。見回りに行かなければならなかった友美は怖がっていたが、この手の話を全く信じないかなえは笑って友美を送り出す。ところが、それから間もなく、友美が血相を変えてナースステーションに戻ってきた。霊安室の中で、何かが倒れる音がしたのだという。友美の代わりに見回りに出たかなえは、その霊安室入った。室内は変わった様子はなかった。ところが、かなえが部屋を出ようとすると、横たわっていた竹内の遺体が起きあがり…。それ以来、かなえも友美も、決してその一件を話そうとはしなかった。そうでもしないと、もう看護士の仕事を続けられなくなってしまうからだった。
深夜のドライブを楽しんだ和子(岡本)と健二(田中)は、明け方近くにとある場所を訪れる。和子は気乗りがしなかったが、健二が半ば強引に誘ったのだ。その場所には、姉を追いかけて道路に飛び出し、トラックにひかれてこの世を去った弟が残した文字があるというのだという。そこで、「!」の標識を発見し、大騒ぎの健二。それは、原因は不明だが、何かが起こることがあるから注意せよ、という標識らしい。やがて和子は、ガードレールに花束が添えられていることに気づき、手を合わせて目を閉じた。が、和子が目を開くと、歩道には血痕のようなものが…。和子は、「もういや!」と言うと、その場を立ち去ろうとした。慌てて和子を追いかける健二。走り出した車の中で、和子はふとサイドミラーに目をやった。すると、ひび割れが入った建物の壁面が写った。そしてそのひび割れは、まるで誰かが書いた文字のようだった。「姉さん」と…。
千秋(真木)は、あまり付き合いのなかった叔母・春江(中島)の葬儀に出ていた。春江は、脳梗塞で倒れた夫の看病に疲れ、首つり自殺をしたのだった。その夜、千秋がなかなか眠りにつけないでいると、さっきまで閉まっていたはずの押入れの襖が開いていた。薄気味悪さを感じながらも、布団から上半身を起こして襖を閉める千秋。すると、祭壇の方で物音がした。千秋は、恐る恐る様子をうかがったが、これといって変わった様子はない。が、千秋が再び布団に横になると、閉めたはずの襖がまた開いていた。その時、突然押入れの中から青白い腕が伸びてきて、千秋の腕を掴んだ。千秋は、悲鳴を上げながら抵抗し、何とか腕を振り払った。ところが、振り払ったはずの自分の腕に、今度はタオルが巻きついていた。それは、春江が自殺に使ったものだった。押入れに引きずり込まれそうになりながら、必死に抵抗する千秋。その時、押入れの暗闇の中には、春江の顔が…。「やめて、叔母さん…私は一緒には行けないの…」。泣きじゃくりながら千秋がそう言うと、次の瞬間、千秋の手首からタオルがはずれた。勢いあまって倒れる千秋。押入れを見ると、何事もなかったかのように襖が閉まっていた。が、千秋の手首はアザのように赤紫色に変色していた。
骨董市に出店していた祐二(森山)と浩二(内田)の元に、コート姿の老人・牧山義弘(小鹿)がやってきた。大きな狸の焼き物に興味を示し、売ってほしいという義弘。祐二は、まさか売れるとは思っていなかったものだけに、戸惑いを隠せない。すると義弘は、昔、家の庭にもう少し小さな狸の置物があったが、盗まれてしまったのでずっと代わりを探していたのだという。浅井は、義弘から家の地図を受け取り、明後日に届けると約束した。
祐二たちは、約束どおり義弘の家に置物を届けに行った。すると、その家ではお葬式を出していた。迷いながらも、受付の男性に届け物があることを伝える祐二たち。その家から出てきた和夫(渡辺)と妻の安江(増子)は、祐二たちが持っていた手書きの地図を見て、困惑している様子だった。ふたりは、和夫の指示に従って狸の置物を庭まで運んだ。それを見た和夫の母親・郁恵(市川)は、愛おしそうに狸に触れ、泣き崩れた。「いつだったか盗まれてしまって以来、いつか一緒に代わりのものを買いに行こうって話していたんだけど…まさかこんな形で約束を守ってくれるなんて…」と涙ながらに話す郁恵。祐二たちが思っていた通り、それは義弘の葬儀だった。祐二と浩二は、焼香をして義弘の遺影に手を合わせた。が、和夫から、義弘の話を聞いた祐二たちは驚いた。義弘は、一昨日の朝、この世を去ったのだという。義弘は、家族との約束を果たすために、魂となって祐二たちの前に現れたのだった…。