普段は絶対入ることができない、地下鉄の線路を社会見学します。
最初に訪れたのは、半蔵門線 大手町駅。
一般の人は、絶対、立入禁止の線路内へ潜入!
東京メトロでは、線路からホームまでが約1.1mで統一されています。
車両が通るレールの脇に、もう1本レールが置かれていました。
レールは擦り減っていきます。そのため、レールの交換作業前後には、新品のレールや交換を終えたものがこうして線路脇に置かれてるのです。
整然と並ぶ、壁のおうとつ。
これは、トンネルが掘られた後に作られる模様です。
現在、トンネルを掘るのに使われているのは、シールド・マシーンという、いわば、巨大なモグラです。
1日に10m 以上も、掘り進むことができ、コンクリートの壁をはめ込んでいきます。それが先ほど見た模様です。
この装置はレールに油を撒く機械です。設置されているのはカーブの手前です。
電車がカーブを曲がる際、遠心力で車輪とレールに大きな負荷がかかります。
この設備はセンサーで電車を感知し、油を出すことで摩擦を減らしています。
さあ、ここからが問題!
歩いて来た道を振り返ると…線路が上り坂になっていて、ホームが上の方に見えます。
東京メトロでは40年以上前から、新しい駅を作るとき線路をあえて山なりにしています。
地下鉄は電気の力で動いてます。
車両は1両およそ30トン。
これを動かすためには、大きな電力が必要です。
東京メトロの一ヶ月の電気代は…
およそ10億円!
そのうち実に6億円が電車を動かす電気代です。
そこで、東京メトロでは、ホームを高い位置に造ることで、加速するための力を節電しています。
これでおよそ月600万円分の節電になるそうです。
ちなみに…停車する時には、上り坂で自然とスピードが落ちるため、車輪などのすり減りも減らせるというメリットもあるそうです。
次に訪れたのは上野駅です。
90年前にできた日本最古の地下鉄、銀座線。
現在は、渋谷から浅草まで14キロですが、開通した当時は、上野・浅草間のわずか2キロほどでした。
開通した当日は、物珍しさから4万人が押しかけ数時間待ちの行列ができたといいます。
当時からすでに3分おきに運行されていたといいますから驚きです。
こんな人気だったにも関わらず、開通した当時の切符は1枚も残っていません。
なぜなら、開通当時の運賃は定額で、機械にお金を入れれば、バーが動き、中に入れる仕組みになっていました。いわば、自動改札だったのです。
そんな歴史ある銀座線、上野から浅草まで2.2キロを、徒歩で社会見学!
すると、線路が分岐しています。真っ直ぐ行くと、浅草方面に向かいます。左側は、どこにつながっているかというと…
先ほどの分岐から300m先にあるのが…上野の車両基地です。
そして夜間、地下鉄が止まっているのは基地だけではありません。
上野と浅草の間、稲荷町駅に車両が止まっていました。始発に使う車両は、こうして駅で夜明けを待つ場合もあるのです。
深夜3時5分、突然、姿を表したのが…終電後にしか走らない「保守用車」。
線路の修理や点検を行うため深夜に作業します。運んでいるのは、交換用のレール。先ほどの半蔵門線に置かれていたレールは、このような保守用車で運ばれていたんです。
銀座線・徒歩の旅。もうすぐ浅草駅ですが…
ここからが問題!
浅草駅の手前には、90年前、工事の間だけ隅田川のほとりにつながるトンネルがありました。
しかし、地下鉄が開通すると同時に埋められ、今では面影すらありません。
現在は、シールドマシンで掘られている地下鉄ですが…銀座線が掘られたのは90年前。
当時の様子が収められた貴重な映像が残されています。
90年前は、土を掘る機械などなく、男達が手にしているのはスコップやツルハシです。
レールを運ぶのも人力でした。
掘り方も現在のように地中を掘り進むというものではありませんでした。
こちらの写真では、銀座線の工事を上から覗いています。
銀座線のトンネルは、深さ10mほどの溝を掘り進め…
完成した後、蓋をするというものでした。
この時、掘った土を10mの高さの地上まで上げるのは至難の技です。
そこで、土を運ぶためだけに掘られたのが、隅田川へ続くトンネルでした。
トロッコに乗せられた土が落とされる先には…舟!
車や道路が発達していなかった90年前、土は川で運搬するのがいちばん効率的でした。
その土は、隅田川を下り、現在の江東区深川あたりの埋め立てに使われました。
90年前に人力で掘られた銀座線は、車両が他の地下鉄と違う作りになっています。
少しでもトンネルを小さくするために、屋根の上のパンタグラフがありません。
その代わりに、線路脇にある電気の通った第3のレールから電気を得て走っています。
東京メトロ社会見学、続いては…テロ対策などのため、絶対 場所を明かせない地点。
高さ5.5m、横幅5mの巨大な壁。
これは水害対策の1つです。
近年、都市部でゲリラ豪雨が多発。
駅に大量に雨水が流れ込み、ニュースにもなりました。
地下鉄は、地面より低い所を走っているため、常に「水との闘い」がつきものでした。
東京メトロでは、止水板という水を侵入させない板や…
駅の入り口を閉じる扉など、水への対策に取り組んでいます。
先ほどの壁は、津波や洪水などの災害時、トンネルを封鎖し、被害の拡大を防ぐための非常扉だったのです。
幸いなことに、今まで使ったことは一度もないそうです。
ここからが、問題!
水との闘いは、災害の時だけではありません。
新たなトンネル掘るときも闘いの連続でした。
地下鉄九段下駅付近…
ここには日本橋川という川が流れていますが、なんと、この川の下を線路が走っています。
今から40年前、日本橋川の下にトンネルを掘る、難しい工事が始まりました。
川の下の地盤は、水を含んだ柔らかく、もろいものでした。
そこにトンネルを作るのは、崩れたり、水が流れこむなど非常に危険です。
そこで、トンネルを掘る前に…柔らかい地盤にあることをすることで、崩れる心配がなくなりました。
結果、無事 トンネル工事は成功しました。
川の下にトンネルを通すため、何が行われたのでしょうか?
この工事を専門に行なっている企業で実際に見せていただきました。
水槽の中にあるのは、水を含んだ柔らかい土です。
その中のパイプに流されているのは、マイナス46℃という超低温の液体です。
4時間後、パイプの周りの土が完全に凍りました!
九段下の工事は、幅46m、奥行き49m の広い範囲でした。
そこで、パイプを網目状にめぐらせ、9ヶ月かけて周りの土を凍らせました。
この工法の最大の利点は、環境に優しいことです。工事が終われば、パイプは抜き取ります。氷も溶けるため、土の中には何も残りません。
2027年開通予定の中央リニア新幹線は、この工法が注目されています。