2009.1.28
<2009年3月1日(日) 16時5分〜17時20分放送>
毎年3月にテレビ静岡がお届けする『感動地球スペシャル』。今回はアフリカ中央部の小さな国ルワンダを、女優の宮崎あおい(23歳)が旅をする。NHK大河ドラマ『篤姫』の収録を終えたばかりの、約2週間(2008年10月21日出発〜11月6日帰国)の旅。女優として充実した日々を送ってきた彼女が初めて訪れたルワンダは、想像を超える異色の国だった…。
日本人にはなじみの薄いルワンダ共和国だが、記憶にあるとすれば、1994年に世界を震撼させた「ルワンダ大虐殺」だろう。少数派ツチ族と多数派フツ族の民族対立が、過激派組織やマスコミによってあおられ、わずか100日間でおよそ100万人の犠牲者を出した痛ましい事件。隣人同士が殺し合った暗い過去は、今も人々の心に重くのしかかっている。この事件を題材にした映画「ホテル・ルワンダ」や「ルワンダの涙」が日本でも公開されて話題となったが、旅立つ前、宮崎あおいが知るルワンダも、映画から受けたイメージだけだった。
大虐殺から15年が経ち、ツチ族、フツ族の民族の区別は禁止され、加害者の裁きも一段落ついた現在、一見平和を取り戻したかのようだが、いまだに国民の多くがトラウマを抱えていて、貧富の差の拡大といった新たな問題も出てきている。隣国コンゴでは現在も内戦が続いており、平穏な生活がいつ脅かされるかは分からない状況だ。
それでもルワンダの人たちは、精いっぱいに生きている。彼らのよりどころとなっているのは、自然の豊かさ。ルワンダはアフリカ大地溝帯に位置し、赤道直下にありながら山や丘そして湖が多く、涼しくて過ごしやすい国である。火山性の肥沃な土と適度な雨がはぐくんだ大地は農業に適し、モザイク模様の畑に覆われた丘が幾重にも連なる。また、コンゴとの国境に横たわるキブ湖は、内陸国ルワンダにとって海のような存在で、湖の恵みが漁民たちの暮らしを支えている。
過去の悲しみを背負いながらも豊かな自然に支えられ、ささやかに生きるルワンダの人々。宮崎あおいは、そんな普通の人たちの普通の暮らしに自然体で向き合いながら、出会いを紡いでいく。稀有な感性の持ち主である彼女は、五感をフルに働かせ、何でも見てやろうと貪欲にルワンダを漂う。その表情は、快活に笑ったかと思えば、ふと考え込んだり、時には憤りを表したりと、くるくると変わる。旅を終えた宮崎あおいの胸をよぎったのは、家族を大切にしようという思い、生きることのいとおしさ、平和への祈りだった…。
ルワンダ北西部、コンゴとウガンダとの国境にまたがるヴィルンガ火山群には、およそ800万年前にヒトと進化の枝別れをしたマウンテンゴリラの最後の聖域がある。人類の祖先の生きざまを想像させる貴重な野生動物だが、いまやヴィルンガの森に700頭足らずを残すのみとなり絶滅危惧種に指定されている。宮崎あおいはジャングルの道なき道に足を踏み入れ、マウンテンゴリラの家族とすてきな出会いも果たした。体重200キロにもなるシルバーバック(ゴリラの成獣オス)が5メートルほどの至近距離に近づいても、「全然怖くない。むしろ触ってみたいという欲が出てしまうほど。子供が遊んでいるところや食べている表情を見ることが出来て楽しかったです。しぐさとか、人間と変わらないんですね」と終始、無邪気な笑顔を見せた。
とてもスレンダーな宮崎あおい。それでも体力には自信がある。段々畑の急斜面でサツマイモの植えつけを手伝ったり、夜を徹して行われるキブ湖での伝統的なサンバサ(小イワシの仲間)漁に参加したりと、自ら体をはってルワンダの生活を体験し、人々と交流した。特に、男性だけで行われるサンバサ漁では、力仕事の大変さを身をもって知った様子で、普段は女性たちに任せてブラブラしているイメージだった、ルワンダ人の男性を見る目も変わったと言う。
「ルワンダ大虐殺」の傷跡。宮崎あおいは、虐殺の現場となった首都キガリ郊外の教会を訪れた。そこには、数多くの遺骨や遺品が今も残されたままになっている。それまで明朗におしゃべりしていた彼女が、ただただ祈る姿は印象的。虐殺の跡地で、いったい何を感じ、何を思ったのだろう。すでに映画で知っていた事実とはいえ、そのショックは大きく、旅の途中に何度か夢にうなされたと語る。ルワンダ人のトラウマは決して癒えておらず、誰もが当時の話を避けたがる。そんな中、キブ湖で出会った若い漁師の夫婦が、子供の時に体験した当時の様子を少しだけ語ってくれた…。
隣国コンゴと接する国境の町ギセニに滞在していた10月末。宿泊先から見える国境の向こう側の町ゴマに向けて、コンゴの反政府勢力が侵攻しているというニュースが世界を駆け巡った。コンゴ政府軍は逃亡し、反政府軍と国連平和維持軍との間で緊張が高まっていたその晩、ミサイル弾の閃光が時おり夜空に光り、銃撃の音が響いてきたりと、宮崎あおいも間近で紛争が起きていることを知ることとなった。「戦争って、どこか遠い国の話と思っていました。あれだけ近くで銃撃の音や砲火を見てとても不思議に思いました。実感が無いというか、いまだに、あの場所に居たことがうそだったような気さえしてしまいます」と語る。
何でも見てみたい、知りたいと好奇心の強い彼女は、「向こう側へ行ってみたい」と希望したが、さすがに無謀と判断。代わりに国境付近の撮影許可をもらい、コンゴからルワンダへ買い出しにやって来る人々にインタビューをすることに。ルワンダ軍が厳戒体制を敷く中、国境を越えてやって来る人へ声をかけにくい雰囲気だったが、「コンゴはひどいことになっている」「食料が町に入ってこない」といった緊迫した声を聞くことができた。最後には「同情するなら金をくれ」と言わんばかりに宮崎あおいの質問を断ち切り、帰っていく女性も。大変な状況下にありながらも、したたかに、たくましく生きる人々に圧倒された彼女だった。
19歳の時、写真集の取材で訪れた中国雲南省で、ある物乞いの少女と出会ったことをきっかけに、宮崎あおいは「自分に何かできること」を意識するようになったと言う。女優業のかたわら、20年後の持続可能な地球のために活動するプロジェクト「2025 PROJECT」に参加。貧困にあえぐ子供のための学校造りも本気で構想中である。<
この旅でも、首都キガリにあるストリートチルドレンの保護施設を訪れ、大きな刺激とインスピレーションを受けた。ルワンダの恵まれない子供のために、ひたむきに施設で働く加藤悦子さん(34歳、青年海外協力隊員)の活動を見るうちに、「学校を作るだけではダメ。その後をフォローできる態勢まできちんと考えないといけないことを学びました」と語る。経済発展をめざすルワンダでは、街のイメージを悪くするという理由からストリートチルドレンが浮浪罪で逮捕されてしまう。その話を聞き、穏やかな宮崎あおいが珍しく怒りをあらわにした。
「今の自分があるのは、きっと見えない力に生かされているから。自分の意思じゃないところで殺される人もいるのだから、生かされている中で自分の役割を見つけていきたい」と、女優の時とはひと味違う、宮崎あおいの別の素顔を見せてくれた。
年に一度、“かけがえの無い命溢れる地球を守りたい”という願いを込めて、『感動地球スペシャル』を制作しています。昨年は、絶滅の危機にあるジュゴンをパラオに求め、残された自然の大切さを訴えました。今回は、世界で700頭足らずを残すのみとなったマウンテンゴリラが生息するルワンダを訪ねました。「ルワンダ大虐殺」で知られるその国は、過去の悲しみを背負いながらも豊かな自然に支えられ、たくましく生きる普通の人たちの暮らしがありました。人間同士の戦争もなく、生きとし生けるものが共存できる世界は、いつかやって来るのでしょうか。我々は、希望の指針を求めてルワンダを旅しました。
旅人役をお願いしたのは、篤姫を見事に演じきった、今、最も輝ける女優の宮崎あおいさん。役を演じるのではなくて「篤姫として生きたい」と語られるのを耳にし、頭で演技を決めるというより、役と一体になれる稀有の感性を持つ女優さんだと思いました。ルワンダの大自然や人々との触れ合いの中で、彼女の五感をフルに働かせて、希望の指針を求める旅をしてほしいと思いました。また、女優業のかたわら、「2025 PROJECT」にも参加し、貧困にあえぐ子供たちの未来に強い関心を持った女性です。過去の哀しみを背負いながらたくましく生きるルワンダ人と、無理なく心の交流ができる人だと起用をしました。
宮崎あおいさんと旅を始めて間もない頃、「虐殺を受け止めるのは、正直、私には重すぎます」と彼女がこぼしたことがありました。きっと本音だろうと思います。女優としてのキャリアが長いとはいえ、まだ23歳の女性なのですから。
今回、私は彼女の役割をリポーターとは考えていませんでした。つまりディレクターの狙いを視聴者に分かりやすく、かみ砕いて表現することを求めるのではなく、宮崎あおいという伸び盛りの女優の感性が、こちらの意図などむしろ壊してくれることを期待していたのです。番組のために何かしなくてはいけないという意識はこの旅では捨ててほしい、とだけ彼女に伝えました。
一万人もの民衆が一瞬にして殺された教会跡地を訪ねた時、宮崎さんはひと言も感想を語ることなく、汚れたマリア像に向かい、ただ静かに両手を合わせました。その後も彼女は大げさにリアクションしたり、気の利いたリップサービスをしたりすることは一切なく、ただただ自然体で旅を続けていきました。視聴率のことを考えると、ちょっとだけ不安になったのは事実です。
しかし帰国後、収録テープのラッシュを見ているうちに、ああやっぱり彼女は女優なんだな、と感心させられることになります。言葉に出さずとも、ふとした表情やしぐさの中に微妙な心のうちが見事に描かれているからです。特に、笑顔のバリエーションの豊かさは印象に残りました。ケラケラと笑う笑顔、心地よくてご機嫌な笑顔、困った笑顔、怒った笑顔、そして強い意志を内に秘めた笑顔…。現場の空気感を素直に感じとり、余計な色をつけることなく、ごく自然に反応できる…それこそが宮崎あおいのすごさだと、初めて気づかされました。
宮崎あおい、心にしみるアフリカ 〜生命輝く大地・ルワンダ〜
2009年3月1日(日) 16時5分〜17時20分
※テレビ静岡のみ 16時〜17時20分
宮崎あおい(女優)
遠藤憲一(俳優)
稲葉安夫(テレビ静岡)
清水哲也(ドキュメンタリージャパン)
児玉知仁(ドキュメンタリージャパン)
ドキュメンタリージャパン
テレビ静岡
2009年1月28日発行「パブペパNo.09-020」 フジテレビ広報部
※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。