FNSドキュメンタリー大賞

FNSドキュメンタリー大賞

2018.10.4更新

あの南京から見た、ありのままの日本と中国は

第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
南京の日本人

10月7日(日)26時15分~27時10分

日中戦争さなかの歴史認識をめぐり、中国・南京市には、今も日中関係のわだかまりが残っています。そんな南京の地に移住し、インターネット番組を発信し続ける日本人男性がいます。日中両国をありのまま紹介する番組は中国で人気を博し、日本に対する中国人の意識を変えつつあります。避けては通れない歴史問題と向き合いながら、一人の“南京の日本人”は何を思い、何を表現しているのでしょうか。日中関係の今を見つめ、これからを考えます。

中国の古都・南京市で、中国向けのインターネット番組を作り続けている日本人がいます。千葉県出身の竹内亮さん(39)は1978年、日中平和友好条約発効の日に誕生。元々日本のテレビディレクターとして活躍していましたが、アジア各国を取材するうち、変化の激しい中国にひかれて移住を決意。2012年、妻・趙萍(ちょうへい)さんの実家がある南京へ渡り、翌年、インターネット番組の制作会社を立ち上げました。看板番組の『私がここに住む理由』は、中国に住む日本人、または日本に住む中国人を主人公とする人気コンテンツ。累計再生回数は配信開始から2年余りで3億回を超えました。

妻と二人三脚で仕事に励みながら、2児の父として不自由ない生活を送る竹内さん。しかし南京という地で暮らす以上、避けては通れない道を歩んでいました。1937年のいわゆる“南京事件”。日中戦争さなかの歴史をめぐり、両国の議論は80年経った今も平行線をたどったまま。南京市内には史実を伝える施設(通称:南京大虐殺紀念館)が建ちますが、展示資料の中には真偽に争いがあるものもあります。“南京の日本人”として竹内さんは多くの中国メディアから取材を受けましたが、答えの出ない歴史について何を口にすべきか、迷いを抱いていました。

歴史問題に領土問題、さらには文化や習慣の違い。日中両国の関係は浮き沈みがあり、決して良いとはいえない状態が続いています。竹内さんの両親、そして妻・趙さんの両親でさえも、当初二人の結婚に抵抗がありました。そんな状況を肌で感じながら、竹内さんは南京で暮らし、日本と中国の“いま”をありのまま伝え続けました。その活動は日本に対する中国人の理解を深め、竹内さんの存在は“両国の架け橋”と呼ばれるまでになりました。

「南京の日本人」を通して見えてくる日中関係のいまを日本人に投げかけ、ともにこれからを考える。番組では2017年12月に大規模改装を終えた南京大虐殺紀念館(通称)の内部を取材。また12月13日の国家哀悼日(旧日本軍が南京を占領した日)に撮影した、南京市内の様子も収録しています。両国の現状を脚色しないよう音効は最小限とし、ナレーションも極力客観的な表現にとどめています。

コメント

ディレクター・山本岳人(石川テレビ報道部)

「“南京”という地名から何をイメージするかは、これまで触れてきた情報によって異なると思います。私にとってはこの番組の冒頭40秒間が、当初思い描いていた“南京”でした。日中戦争さなかの南京で何があったのか。少なくとも、私が納得する答えは出ないまま80年がたちました。過去から目を背けるわけにはいかないけれど、過去だけ見ていても、もうわだかまりは消えないと考えました。だから日中関係の“いま”に目を向けようと調べるうちに、誰よりも“いま”に目を向けていた南京の日本人にたどり着きました。日中両国民が抱くお互いの国の印象は、現在も決して良いとは言えません。しかし、南京の日本人を通して出会った多くの人々は、日本と中国のいまを理解し、受け入れようとしていました。これから生まれてくる世代が“南京”という地名から何をイメージするか、それはいまを生きる私たちにかかっていると思います」

番組概要

タイトル
第27回FNSドキュメンタリー大賞 ノミネート作品
『南京の日本人』(制作:石川テレビ)
放送日時
10月7日(日)26時15分~27時10分
スタッフ
ナレーター
秋元才加
プロデューサー
竹内章
ディレクター
山本岳人
撮影
和田光弘
編集
渡辺信行
構成
川上伸一
音効
大川育三

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。