FNSドキュメンタリー大賞

FNSドキュメンタリー大賞

2017.10.3更新

心をこめて、愛情こめて、伝統を守り続ける

第26回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
島の鍛冶屋~五島列島 31歳・職人魂~

10月6日(金)27時5分~28時

長崎県、五島列島の南にある五島市岐宿町。そこで鍛冶屋を営む宮﨑春生さん(31)が番組の主人公です。地元の高校を卒業し、福岡市の鍛冶屋で5年修業。その後、五島に戻り廃業していた鍛冶屋を譲り受け8年前に開業。以前は集落ごとにあった鍛冶屋だが、大量生産、使い捨ての波に押され現在、島に残っているのは2軒だけ。「島の生活に役立つ道具を作りたい」という思いで、漁具に農具、包丁まで何でも作る。大量生産の時代に鍛冶屋として働く春生さんの生き様、仕事ぶりを美しい五島の風景と共に描きます。

長崎市から高速船で約1時間半、五島列島の南にある五島市岐宿町。そこで鍛冶屋を営む宮﨑春生さん31歳。高校卒業と同時に福岡市の鍛冶屋で修業の後、五島に戻り、以前からあった鍛冶屋のスペースを利用して、8年前に開業しました。古くから使われていた道具や機械を修理しながら仕事に打ち込んでいます。

以前は集落ごとにあった鍛冶屋だが大量生産、使い捨ての波に押され現在、島に残っているのは2軒だけ。五島は漁業と農業の島。様々な漁具、農具が必要です。鍛冶屋の注文は多く、様々な器具の修理や製造を頼まれます。魚をさばく包丁作りも大事な仕事。島の花、“椿”に由来した椿包丁は自信作です。地元で販売するだけではなく、インターネットでも販売し生計を立てています。

宮﨑さんは妻と1歳の息子と3人暮らし。宮﨑さんが鍛冶職人を目指したのは父親の影響です。医師である父親は、インドを訪れたのをきっかけに、「物質的な豊かさではなく、心の豊かさとは何なのか?」ということを考えるようになり、長崎市内に建てた家を売り払い、17年前、自然豊かな五島へと家族で移住。診療所で医師をしながら自給自足の生活を始めました。

無農薬にこだわり近代的な機械を使わず、牛と鋤(すき)を使い、家族で田畑を耕し米を作る。日本人らしい生活…。宮﨑さんは、そんな父親の姿を見て育ちました。自給自足の生活をするためにも大切な仕事であること、後継者が育ちづらく、技術が失われつつあることなど、鍛冶屋が必要だと父親に教えられ、鍛冶屋に興味を持った宮﨑さん。今では、島の人の役に立つ道具を造りたいと、やりがいを見つけ仕事に打ち込んでいます。

初めて作った包丁は、母親へ贈りました。母親は今でも大事に使っています。「造った道具は自分の分身のようなもの」という宮﨑さん。使う人の思いを感じ取って、その思いを道具に込める。包丁は、全ての工程を自分一人の手で行う。1日の作業時間は、13時間ほど。伝統に恥じない道具作りがこだわりです。

実は弟も桶を作る職人として島で暮らしています。兄が作った道具で桶を作る弟。互いが切磋琢磨しながら腕を磨いています。

大量生産の時代、包丁や桶など生活に役立つ様々な道具を手造りする兄弟、試行錯誤しながらも、やりがいを感じる日々。東京をはじめ大都会に人口が集中している日本。地方、とりわけ離島は人口減少、高齢化が深刻です。大都市の暮らしは仕事も多く、交通も便利ですが、食生活の面から言えば美味しい魚や農産物のほとんどは地方産、地方があるから都市の住民も美味しい食べ物を口にすることが出来ます。地方が廃れれば大都市も困る。地方も人口が保てて経済的に潤うことが大切であるということを気づいてもらえれば…。

長崎県は特に離島が多く、今年の4月「国境離島新法」が施行されました。国境に面する島々は国防的にも重要なのです。人口減少は、深刻な問題を引き起こすと国も本腰を入れて法案化しました。多くの若者が都会に出ていく中、宮﨑さん一家は島で暮らすことに喜びを感じています。大量生産の時代に鍛冶屋として働く宮﨑春生さん31歳の生き様、仕事ぶりを美しい五島の風景と共に描きます。

コメント

ディレクター・藤井聡(テレビ長崎)

「今回の番組の主人公は、離島で暮らし鍛冶屋という職業で生計を立てる31歳の若者。この年代で鍛冶屋を営む人は珍しく貴重な存在です。大量生産、使い捨ての時代、昔ながらの手造り製品は確かに品が良い。実際手にした人はよく切れると感激しています。

宮﨑さんが鍛冶屋になった動機は父親の存在です。20年ほど前、医師である父親がインドを訪れた時、日本の生活との違いを感じました。そこには物の豊かさよりも、こころの豊かさがありました。17年前、宮﨑さんは、自然に恵まれた五島に移住してきました。父親の考えや姿をずっと見てきた宮﨑さん。“子供は子供”という考えもありますが、親の教えで自分の道を拓いたというのも尊いことです。便利な大都市で生活する生き方を選ぶ人も多い中、地方で生きていく。島で生きていく。必要とされる仕事に熱中する。良い物を造りあげる。きれいな風景の中で暮らす。一つの幸せの形かもしれません。日本の伝統技術を守る31歳・宮﨑さんへの応援歌として番組を制作しました」

番組情報

タイトル
第26回FNSドキュメンタリー大賞ノミネート作品
『島の鍛冶屋~五島列島 31歳・職人魂~』(制作:テレビ長崎)
放送日時
10月6日(金)27時5分~28時
スタッフ
撮影・編集
小濵良太
音効
渡辺真衣(東京サウンドプロダクション)
MA
濱田豊(東京サウンドプロダクション)
ナレーション
天野ひろゆき(キャイ~ン)
編成
増田朋和
構成
藤井聡
ディレクター
藤井聡
プロデューサー
大浦勝

※掲載情報は発行時のものです。放送日時や出演者等変更になる場合がありますので当日の番組表でご確認ください。