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Cast - 映画の達人2 EndCredits 書庫 -


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第7回 予告編ディレクター  里 謙二郎
映画「赤い糸」の予告編ディレクター・里 謙二郎。里氏が所属するのは、スピルバーグ映画に代表される洋画の大作から、ジブリ作品をはじめとするアニメーション作品まで、幅広いジャンルの予告編制作を担当してきたガル・エンタープライズ社。そう、実は映画を制作するスタッフとは別に、予告編だけの制作を扱うスタッフが存在するのである。どんな映像を使い、映像をどう編集し、どんな音楽を使用し、どんなキャッチコピーを添えるか・・・90秒間に映画のエッセンスを凝縮し、観客にアピールする予告編を制作していくプロフェッショナルである里氏。そのノウハウをたっぷり語っていただいた。


○ Chapter 1 −予告編ディレクターという仕事−

大和田(O):予告編専門のスタッフの方がいらっしゃるんですね!

里(S):そうですね、この会社自体が予告編制作専門の会社なんですよ。

O:助監督さんがやられているんだと思ってました。

S:昔は構成力を鍛えるために助監督さんがやられることがほとんどだったんです。最近は製作委員会方式の導入や宣伝の多様化によって、いろんなニーズに対応する必要が出てきて、そうなると現場の人だと忙しすぎて予告編まで手が回らない。なので、我々のような職業が出て来た、ということですね。

O:予告編ディレクターというお仕事って最近のものなんですか?

S:うちの会社(ガル・エンタープライズ)で、今年で30年目くらいでしょうか。

ちなみに、日本で最初に予告編制作会社が作られたのは1956年。イギリス映画配給会社NCCで、「モンパルナスの夜」(1950)や「第三の男」(1952)などの予告編制作に携わった佐々木徹雄氏が、株式会社佐々木プロダクションを設立したことから始まった。


○ Chapter 2 −日本人好みの予告編−

O:予告編のイメージで映画を見に行ったら“全然違う!”ってことがありますよね?

S:ありますねー。予告編で作品のイメージをまったく変えちゃうこともあります(笑)

O:えっ!?

S:コメディ映画なのに感動系に振っちゃったり。

O:スティーブン・スピルバーグ監督の「ターミナル」っていう映画の予告編を劇場で観て、私泣いちゃったんですよ。そんな経験は初めてだったので、これはスゴい!と思って映画を観に行ったら・・・さっぱり泣けなくて(笑)

S:もともとのオリジナルの予告編はコメディタッチだったんですよ。アメリカではコメディ映画はヒットするので、オリジナルの予告編のやり方は正しいと思うんです。でも日本ではアメリカのコメディ映画は売れないから“トム・ハンクス主演の、スティーブン・スピルバーグ監督の感動大作だよ、という方向なら絶対にヒットする!”と、スピルバーグ作品を数多く担当している当社の小江英幸が日本用の予告編を作ってみたら、これをスピルバーグが大絶賛してくれたんですよ。


○ Chapter 3 −予告編が出来るまで−

ここからは、里氏が手がけた「赤い糸」の予告編についてのお話に。

S:最初は打ち合わせですね。映画宣伝全体の展開を取り仕切る、宣伝プロデューサーの方とどういう映画なのか、どう売って行きたいのか、などの話をうかがいます。細かいところでは公開時期、ターゲットとする観客層、公開館数とか。そういった話を私の方で持ち帰って、実際の作業を始めるわけです。「赤い糸」の場合は、大ヒットしたケータイ小説の映画化で、それを私のような32歳のオッサンが手がけるのは苦労しましたね(笑)。よく劇場に来て下さるOLさん層とは違って、特に中学生ってなかなか劇場に足を運ばないと言われてるんです。そういう方々に、1300円を払っても観たい!と思っていただけるにはどうしたらいいのか、悩みました。

「赤い糸」の予告編を作る上で、“主人公と同年代の中高生”をターゲットに、“切ない純愛”をキーワードに設定したと里氏は語る。

S:主人公とターゲット層がまったく同年代なので、感情移入できることが大事なんだろうなと思って、どんどん切なさに感情移入ができる予告編にしようと。

そこで里氏が思いついたアイディアは、主人公が同世代の観客に語りかけるようなナレーションを使用することだった。

S:第三者が客観的にナレーションを入れてしまうと、感情移入ができないんです。“まったく同年代同士のやりとり”という形にしたかったので、「私は〜」っていう語り口の一人称のナレーションを主人公役の南沢奈央さんにお願いしました。

O:90秒っていう短い時間の演出を、どう考えていらっしゃるんですか?

S:映画本編とは話がそれてしまうかも知れないけど、90秒の中でドラマとして成立させるということでしょうか。ただのダイジェストじゃなくて、きちんとストーリーがわかって感情移入できるもの。そこまで出来たら、いい予告編だと思います。最近は映画のストーリーをきちんと追った、わかりやすい予告編が主流になってきてます。そうじゃない予告編だと、お客さんが入らなくなってますね。

S: 最初の予告編のラフは、ストーリーを時系列で追った展開だったんです。「赤い糸」の宣伝プロデューサーは20代後半の女性の方だったんですが、 “このカットはキューンときます!”っていうカットを採用する方向で第二弾のラフをまとめていきました(笑)

O:あははは。

S:で、第二弾では時系列での展開を止めて、“ふたりの純愛”をコンセプトに、予告編の最初を楽しそうなシーンで構成し、後半でつらい状況になっていくのを見せて行きました。

O:切なさを引き立てるために、楽しいシーンを増やす?

S:そうですね。切なさを強調して、ふたりの運命がどうなるのか、興味を駆り立てるという方向です。さらに言うと、全然違うシーンから持って来たカットを意味ありげに入れてみたり、主人公が歩くシーンを逆転再生させて、辛い状況から後ずさりするように見せたりもしてるんです。

O:えー!そんなこと、やっちゃっていいんですかー!?(笑)

S:そして完成版では、アタマで幸せなシーンをちょっと見せて、中盤は辛いシーンをドーンと見せる。そして最後に幸せなシーンをもう一度見せることで、“こんなに幸せだったのに・・・”と切なさを煽る作り方にしています。

O:わー、最初とは別物!DVDの特典で予告編を見ると、また面白いかも知れませんね。


○ Chapter 4 −予告編の印象−

S:実際には予告編って、映画が始まる前に上映されますよね。その後に2時間の映画を観てしまうと、予告編の印象が残ってない方が多いんですよ。なので、2時間経っても記憶に残るもの、“あの映画面白そうだな、観てみたいな”という印象が残るものを意識してます。予告編の90秒間にたくさん絵を詰め込めばいいというわけじゃなくて、1シーンでも印象に残るものが入っていること、それが理想の形なのかも知れません。





里 謙二郎  
   
最初はTV業界に入り、テレビ番組制作・CM制作・CG制作会社を経て、
のちに(株)ガル・エンタープライズに入社、予告編ディレクターになる。

予告編デビュー作は、「フーリガン」。
得意な予告編ジャンルは、カットの細かいアクション映画。
その他に、TVCM、CG制作、PVなど幅広いジャンルの作品を担当。
現在は、月に8本〜12本並行して作業を進めている。

■予告
 「HERO」、「どろろ」、「ルーキーズ -卒業-」、「WANTED」、
 「マリー・アントワネット」、「センター・オブ・ジ・アース」、「ノウイング」、
 「I come with the rain」、「劔岳 点の記」、「スタートレック」、
 「レイトン教授と永遠の歌姫」、「犬神家の一族」、「銀色のシーズン」、
 「赤い糸」、「感染列島」、「BABY BABY BABY!」、「ミルク」、「釣りバカ日誌18」

■TVCM
 「任天堂」、「ローソン」、「パナソニック」、「TOYOTA」、「日本生命」





  里 謙二郎




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