宮 海彦 インタビュー

Q:シルク・ドゥ・ソレイユとの出会いは?

おそらくはじめて観た公演は学生時代に先輩が連れて行ってくれた『キダム』だったと思います。海外生活を送り、旅も好きだったので、旅がしたいと思ったときに思いついたのが、シルク・ドゥ・ソレイユでした。なぜツアーショーを思いついたのかというと、『コルテオ』というツアーショーがきっかけです。たまたま僕が渡米したとき、『コルテオ』のツアーがスタートしたばかりでした。大学は違いますが、同い年の奥澤(秀人さん)が『コルテオ』公演に出演していたんです。彼は、同い年で中学の頃から体操の全国大会で面識はありました。公演を観て「面白い」と思ったのですが、その時はまだ渡米したばかりでしたし、自分には別の目標もあったしシルク・ドゥ・ソレイユに入りたいとまでは思いませんでした。ただ、ある時、「何か物足りない」と感じ始めて「シルク・ドゥ・ソレイユのツアーショーだったら自分のやりたいことがすべて詰まっているんじゃないか」と思い、シルク・ドゥ・ソレイユを選びました。
「自分がパフォーマンスをして、人が喜んでくれるんだ」と思ったのも、シルク・ドゥ・ソレイユに興味を持った理由です。
パフォーマンスに関しては、子供たちに何かを教えるのってパフォーマンスってすごく大切なんです。パナマで過ごしたときもそう感じました。いいパフォーマンスをすると子供たちもすごく喜んでくれるんです。途上国の電気もない村で生活をしており、アクロバットを見たことない人たちにバク転を披露するだけで喜んでくれるんです。

Q:演出のロベール・ルパージュが宮さんを「カエル」そのものだと おっしゃっていましたが、ご自身でどのようなところが「カエル」だと思われたのだと思いますか?

演技していて思うのは、「演技をするのではなく、なりきっているんだ」ということ。心と頭と身体と演技が全て一致しているから相手がそう感じ取ってくれているのではないかと。“「カエル」になっている”という表現がきちんと伝わっているという証拠だと思うんですね。自分で自分をジャッジするのは難しい部分がありますが、ルパージュさんがそういってくれているとなら“「カエル」そのもの“だと納得してもいいかな、とおもいます。

Q:キャラクターを表現するにあたり気を配っているところは?

“表現する”って、誰かに伝わらなければそれは表現ではない。誰かに伝わって初めて表現になると思います。やっぱり自分が伝えたい思いや、ちょっとしたしぐさでも喜怒哀楽の表現が出来ると思います。そういう細かいところをひとつひとつ一瞬一瞬をうまく感情をコントロールしながら、身体を通して伝えられればいいなと思っています。

Q:宮さんが出演される演目「カラペース」の注目ポイントは?

『トーテム』の特色として、オープニングからかなりスピーディーでパワフルに始まるんですね。これはシルク・ドゥ・ソレイユでもかなりレアです。はじめから息をのむようなオープニング(「カラペース」)になるので、注目して欲しいです。『トーテム』はスピリチュアルなものをかなり取り入れているので、そういう世界観や演出も感じ取っていただければと思います。

Q:シルク・ドゥ・ソレイユの舞台で演じられる上で、ご自身でもっとも大切にしていること、目指していることは?

現在まで『トーテム』のショーは1920回行われています。僕にとっては1920回でも、初めて観るお客さんにとってはそれが1回目です。僕らの 1920回目が、その方にとっては1回目なので、いいものをお見せしたいという思いを持っています。だからいつもフレッシュな気持ちで、常に原点を忘れず毎回公演に臨んでいます。
(※インタビュー時点「2015年11月18日(水)」の公演回数)

Q:メイクについて

メイクに1時間かかるので、大体ショーが始まる2時間半前からメイクにとりかかります。メイクするとスイッチが入りますね!でも本当のスイッチが入るのは、(ステージにつながる)トンネルをくぐったところです。はじめから集中すると疲れてしまいますからね。

Q:日々の健康法、トレーニング法、体調に気をつけていることは?

朝食、昼食は結構軽めです。朝はスムージーを作ったり、バナナを食べたり、パンなどで済ますこともあります。コーヒーが好きなので、一日のはじまりにおいしいコーヒーを飲みたくて、フレッシュなコーヒー豆を挽いています。それが一日のルーティーンになっています。夜はがっつり食べます。欠かさないのは「ごはん(ライス)」です。肉も魚もまとめて食べますし、野菜もバランスよくきちんと摂るようにしています。

Q:日々の健康法、トレーニング法、体調に気をつけていることは?

長いツアー生活を送る上で、疲れを次の日に残さないようにすることはとても大切です。必ずストレッチやマッサージを行っています。僕の秘密兵器はテニスボール2つをテーピングで巻いただけのマッサージ器具。それを使ってマッサージしています。それがあるだけで、僕の身体が維持されています。

Q:自分が出演していない演目でお好きなものは?

音楽も含めて「フィックスト・トラピス・デュオ」です。ストーリーも分かりやすいので、どなたでも安心して観ていただけます。

Q:シルク・ドゥ・ソレイユは「団結」「家族」というものをとても意識しているという話を広報の方から伺いました。宮さんご自身はそれらについてどういったことをお感じでしょうか。

週に6日はビッグトップで公演していますし、ビッグトップ以外でも会う機会は多いので、自分の本当の家族以上に一緒にいる時間が長いですね。世界20カ国以上からここに集まっているので、人種や宗教も違うし、肌の色や考え方も違う。様々なバックグラウンドの人たちが全員同じステージに立って、同じものを表現するということは、世界が一つになっているというイメージを僕は持っています。「世界平和」という意味では、僕らは良いことをしているのではないかなと思っています。実際に僕らは仲がいいので、大きなムラみたいにみんなで移動しているイメージです。

Q:海外青年協力隊などで途上国に行かれたとのことですが、そこでの経験とシルク・ドゥ・ソレイユでの経験が融合してパフォーマンスに現れる部分はありますか?

国際協力などを通して、途上国に行って現場を見たり矛盾を目にしたりときに、自分が今まで考えてきたことをかなり考え直させられました。そういうところで自分自身を見失ってしまったこともありますし、正義を疑ったこともあります。何が正しいのかわからなくなったり、自分が何なのか考えたりしたこともありましたが、そういうときに自分を支えてくれたのは周りの人間だったり環境だったりしたんだと思います。その環境が良くなかったら、もしかしたら違う方向に行っていたかもしれない。そう思うと僕が出会ったり教えてもらったりしたことは自分の中に入っていくと思うんです。パフォーマンスにしても、それを見て誰かが喜んでくれるんだったら、その人がまた誰かを喜ばせてくれたらいいなと。そういう輪が広がってほしいという思いがあります。実際毎日公演をしていると、そういう思いもだんだん薄れていってしまいがちですが、原点はそこにあります。


※インタビュー日程:2015年11月18日(水) 場所:ビッグトップ(シンガポール)にて

2009年にシルク・ドゥ・ソレイユに入団。『トーテム』ツアーショーは2010年4月から始まるが、その8ヶ月前から『トーテム』のクリエイションにたずさわり、(オープニング演目の)「カラペース」のキャプテン兼コーチをつとめる。トーテムのロゴマークの"T"マークは宮海彦さん。