参加アーティスト
▷
02/16
◁

Marc-Antoine Mathieu
マルク=アントワーヌ・マチュー

展覧会に向けて
『レヴォリュ美術館の地下』と日本には類似点がある。
それは双方をつかさどる精神が島的であるということだ。島も美術館も自己完結しているが、その中に完結していない世界や宇宙を生み出すという共通した特徴を持っている。わたしの描いたルーヴルは閉ざされた空間でありながら、そこではさまざまな人々や概念が動き回る。同じことが日本についても言える。この島国は物理的な空間上に、つまり地理的に限定されているが、それにより必然的に、フラクタルで終わりのない空間と時間が、生きるために不可欠な需要として生み出される。大都市の中の盆栽の庭は無限の小宇宙だ。それはわたしの本に登場する「ハイパー美術館」でも同じである。
この無限の空間と時間の芽生えが生み出すものは、想像力による救済といった役割を遥かに超越する意味を持つ。それは「内面に向けられた展開」とわたしが呼んでいるものを創り出し、詩的で、シンプルで幻想的な領域が生まれるのに最適な土壌となる……。わたしが日本を愛し、何度も訪れたいと思うのはそこなのだ。気に入った本なら何度も何度も開きたいと思うのと同じように。

略歴
1959年、フランスのアントニー生まれ。アンジェの美術学校で彫刻を学んだあと、仲間とともにアトリエ「リュシー・ロム」を立ち上げ、グラフィックデザインや空間デザインを手がける。1990年、代表作となる『夢の囚われ人ジュリウス・コランタン・アクファックJulius Corentin Acquefacques, prisonnier des rêves』(既刊6巻)をスタート。巻ごとに異なる仕掛けを用いながら、夢の迷宮世界に迷い込んだ主人公の冒険を描いた実験作として評価が高い。2006年にはルーヴル美術館BDプロジェクト第2作『レヴォリュ美術館の地下―ある専門家の日記より』を刊行。その後も、神の現代社会への突然の降臨を描いた『神様降臨』(2009年)、3秒間に起きた事件をズームと鏡面の反射だけで語った『3秒』(2011年)、セリフを一切用いず、読者にひたすら矢印を辿らせる『S.E.N.S.』(2014年)など、話題作を次々に発表している。

作品紹介
『レヴォリュ美術館の地下―ある専門家の日記より』(大西愛子訳、小学館集英社プロダクション)
主人公のウード・ル・ヴォリュムールは美術館の実態を調査する専門家。お供のレオナールとともに、その実態がつかめなくなって久しい巨大なレヴォリュ美術館の全貌を把握するべく、調査に身を投ずる。レヴォリュrévoluとは「古びた、過ぎ去った」の意味で、ルーヴルLouvreという言葉のアナグラム(ある単語の文字の順番を入れ替えることで別の単語を作る言葉遊び)である。調査を進める二人の前に、美術館はその驚くべき巨大さを開示する。何百日、何千日かけても彼らの調査は終わることがない。さまざまな芸術作品を眺め、その舞台裏を訪れ、それらに関わる多くの人々との出会いを経て、やがて主人公のウードは、自らもこの巨大な美術館のアナグラムに過ぎないことを知る。長い年月に及ぶ調査の果てにウードは助手のレオナールを失い、やがて彼自身、自らの調査記録を別の専門家に譲り、永遠の眠りに就くのだった。