参加アーティスト
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06/16
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Christian Durieux
クリスティアン・デュリユー

展覧会に向けて
実は日本にはまだ行ったことがない。だが日本は常にわたしの想像力と作品の源だった。小津安二郎の映画を観たり、谷口ジロー、川端康成、あるいは村上春樹の作品を読んだり、挙げた名前はほんのわずかだが、どれほどこの国から与えられたことだろう。同時にわたしはルーヴルの素晴らしい宝にも限りない愛着を覚えている。
だから一杯の煎茶の中に思いをめぐらせ、多くを与えてくれた国のこの素晴らしい場所で、今度はわたしの情熱のすべてを提供し、みなさんと分かち合うことができる、このことがどれほど光栄で喜ばしいことかを測っている。

略歴
1965年、ベルギーのブリュッセル生まれ。1991年刊の『アヴェルAvel』(ジャン・デュフォー作、全4巻)、1996年刊の『雷Foudre』(リュック・デリース作、全5巻)などシリアスな作品を描く一方で、1999年にはユーモアと詩情溢れる『ベニート・マンボ Benito Mambo』を発表し、2001年からは子供向けの作品『オスカルOscal』(ドニ・ラピエール作、既刊7巻)も発表するなど、幅広いジャンルで活躍。ルーヴル美術館BDプロジェクト第6作『魔法 Un Enchantement』は、2011年に刊行された。その後も、実在の「徘徊症患者」アルベール・ダダの人生に取材した『虜囚 Le Captivé』(クリストフ・ダビッチ作、2014年)など、話題作を発表している。2016年には、50代男性の日常を描いたジャン=ピエール・ジブラとの共著『誠実な人々 Les Gens honnêtes』が全4巻で完結した。

作品紹介
『魔法 Un Enchantement』(未邦訳)
今宵のルーヴル美術館は貸し切り。「ナポレオンの戴冠」を始めとする新古典主義の名画を集めたダリュの間では、ある大政治家の引退パーティーの準備が着々と進められている。しかし、当の政治家本人は、まるで自分自身の埋葬に立ち会わされているようで、何もかもが気に入らない。彼は、悪趣味な晩餐をこっそり抜け出し、ワインボトルを片手に人けのないルーヴル美術館の回廊にまぎれ込む。すると、驚いたことに、関係者以外は誰もいないはずの美術館に、座って絵画を眺めているうら若き女性がいる。女性はこの有名な老政治家に臆する様子もなく、当意即妙なやりとりで彼を喜ばせる。必死に老政治家を探す関係者をよそに、二人は夜の美術館での逢瀬を満喫する。老政治家にとって、ルーヴル美術館は思い入れのある場所であった。かつて、ルーヴル美術館のリシュリュー翼に大蔵省が存在していた頃、彼は大蔵大臣を務め、まさにこの場所で働いていたのだ。やがて二人は、雅なロココ美術の間を抜け、逃避行の果てにある象徴的な絵画の前に辿りつく。