阿部知代アナの@artlover
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アート作品を目の前にして、どう接したらいいのか、とまどうことはありませんか?
だいじょうぶ、みんなそうなのですから。
現在美術を楽しむには、まずはたくさん観ること、そして、作家のお話や、ちょっぴりのヒントがあるとなお良し。
小中学校の美術の成績は最低、それ以来「美術恐怖症」だったのに、どういう運命か『テレビ美術館』を担当して18年。その後は『art lover』ナレーター、ときどき出演者。
今や自他共に認める、日本一アートを愛するアナウンサー阿部知代の、自己流アートの楽しみ方コラムです。
Vol.4
『木村太陽展』 ヨコハマポートサイドギャラリー、横浜。
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「Pleasure principle」(部分) 2005
(C) TAIYO KIMURA
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「Friction / トイレはどこですか?」
(部分) 2005
(C) TAIYO KIMURA
柄の部分が肉感的な人の横顔になっていて、握ると、ぶちゅ〜っ、とキスする、ハサミ。
「ハサミで切る感じと恋愛感情って似てるなあ、と思って。あのジョリっていう快感と、『好き〜!』っていう感じが」。
そう言われて、なんだか何度もハサミをぶちゅぶちゅキスさせてる自分。おかしいぞ自分。そう、まさにこれが、木村太陽ワールド。
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「はたらけはたらけ」 2005
(C) TAIYO KIMURA
5年暮らしたドイツから帰国して、久しぶりの個展。インタビューするのは2000年の佐賀町以来だ。隣の秒針とぶつかって時を進められない時計、サッカーボールが細胞分裂して歩き出した赤ちゃん、耳の巨大化した少年。ちょっぴり残酷だったり、ときにキモチ悪かったりするけれど、でも笑ってしまう作品たち。
「笑っちゃっていいんです。笑っちゃうことには、いろいろ深い意味があって、だからこそ人は笑っちゃうわけで。笑っちゃうものをつくるのは、すごく大変です」。
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「Gravity grave」 2005
(C) TAIYO KIMURA
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「0120-2222-03」 2005      壁一面に、鼻。
(C) TAIYO KIMURA
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鼻は微妙に動いている。
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「Typical Japanese-English」 2005
(C) TAIYO KIMURA
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洗濯物の中に映像が。
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気がつけば作品の一部に。変だぞ自分。
会場の一番奥は、壁一面に、鼻。それもみんな、微妙に動いている。
「作品をつくることで、自分がどういう場所にいるのか、現実ってどういうふうになっているのか、探りたいんです。そうすると自分の身体を通してしか探れない。自分がどういう場所に生きているのかって探ろうとすると、おのずと自分の身体のパーツがどういうふうに出来ているのか、というところに行ってしまうんです」。


ぽつりと置かれた洗濯カゴの中にはモニターが隠れていて、映像が流れている。映像も変だけど、実は洗濯物に顔を突っ込んで、その映像を観ている観客の姿は、もっと変でおかしい。ハサミの作品と同じだ。私たち観ている者が、作品に取り込まれている感じ。人もオブジェ。
しかし木村さんは、他人の行動を観察しているわけではない。他人のことはあんまり見えない、と言う。自分がどう感じているか、自分で自分を観察しているのだ、と。
「作品をつくるって、そういう訓練」。


自分がいる場所や自分自身を、突き放してみる。距離を置いて見つめる。その過程で、作品は生まれる。
「自分がどういう場所にいて、何をしているか、ということが理解できないと、人って、病気になったり死んじゃったりするんじゃないかと思うんです。だから、突き放してみることは必要ですね」。


まず、自分がいる。自分に没入する。自分にしか見えないものがあるから。自分の身体だから感じられるものがあるから。だからこそ、そんな自分を遠くからも、見つめてみる。自分自身を、その存在する世界を、知るために。
その「行ったり来たり」する感じが、その間で遊んでいる感じが、いい。
木村さんは静かに笑って言った。

余談。
木村さんにはお兄さまがいて、お名前は木村太郎さん、であります。ほんっとに余談。
すみません!
Text by Chiyo Abe, 2005
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