阿部知代アナの「この人に注目!」
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アーティストはどんなことを考えながら制作しているの?
展示作品を前にそんなふうに思ったことはありませんか?
巨匠から若手アーティストまで、幅広い顔ぶれを紹介し、
通をもうならすアート番組「テレビ美術館」。
同番組の司会、阿部知代アナが、旬のアーティストに突撃取材、
その会見記をプロ並みの写真とほんわかあったかい文章でご紹介します。
新たな美を求めて西へ東へと駆けめぐるアート系アナウンサーが、
とっておきの作品の見方を教えます。

vol.1粟野ユミトさん

岡本太郎の意思を継ぐアーティスト
展覧会場で粟野さんにお話を伺いました(*)
展覧会場で粟野さんにお話を伺いました(*)
20世紀の日本をほとんど一人で代表しているアーティストだと思う。1996年に亡くなった今も、というか近年また、彼の縄文文化や沖縄に関する著書が注目され、時代を何十年も先駆けて疾走していたことが再認識されている。
その岡本太郎の名を冠した美術館は二つあって、一つは、生前の東京・青山の家をそのまま開放した「岡本太郎記念館」。ここには太郎の作品が常時展示され、生前の太郎を知らない若者が連日途切れること無く訪れている。
そしてもう一つが、今回訪れた「川崎市岡本太郎美術館」(太郎は現在の川崎市高津区生まれなのだ)。ここは主に現代に鋭いメッセージを送る、つまり太郎の精神を受け継ぐ作家を紹介している


見えないものが見える!?
花?いえ、角砂糖!がゆらゆら揺れています。屋外に設置された作品「閾(しき)」 。
花?いえ、角砂糖!がゆらゆら揺れています。屋外に設置された作品「閾(しき)」 。
で、粟野ユミトさんと会う。女性である。
粟野さんは第2回岡本太郎記念現代芸術大賞展(通称・太郎賞)の準大賞受賞者。庭の噴水の中に設置された受賞作「閾(シキ)」の風に揺れる小さな白い四角は、角砂糖である。雨が降れば溶け、鳥が来れば啄ばまれる。やがて無くなる。無くなる…?
「目には見えなくなるけれど、溶けて土に還ったり、空気中に漂っていたり。それに同じ物を見ても、見える人と見えない人がいることがありますよね? また、同じ人でも、体調によって見えたり見えなかったりすることがある。じゃ、見えることと見えないことの境目って何なのでしょうね、と」。ちなみに「閾」とは、しきい、ものごとの境界線、というような意味だそうな。なるほど。
粟野さんの作品は、そんな何かと何かの境界、端、距離、その過程を、いつもとは違う角度と方法で認識させてくれる「装置」のような作品が多い。
カセットテープやストローでできている作品
カセットテープの作品前で
カセットテープの作品前で
室内の壁の縞模様は、実は懐かしのカセットテープ。友人達から集めた7、80年代ポップスの1曲はおよそ5メートル、展示室の壁の長さは37分。「テープの終わりの白い部分のスーっという音が好きなんです」。うん、同意同意。
三脚の上に乗った白い四角は実はストローの束で、先にガラスの玉が付いている。覗いてみると…逆さ?万華鏡?異次元?
ストローを使った作品は他にもあって、実は身近なもので「当たり前に、いつも通りに、見えているもの」をガラッとどんでん返しさせることができるんだなあ、と気付かされる。
アートでハッピーに!
新しい視点を見せてくださった粟野さんに拍手!
新しい視点を見せてくださった粟野さんに拍手!
アートは人を幸せにするものだ、と私は思っている。
当たり前だと日々気にも留めないことを、ちょっぴり疑ってみたり、その通りに見えていると思い込んでいるものを、違う所から眺めてみたり。
いまこれを読んでいるこのPCから目を離して周りをちょっと見てみれば…きっと、何か
ひとつくらい、気づくことがあるはず。それはちょっぴり、得した気になりませんか? 粟野さんの作品は、作品そのものを楽しむだけでなく、そんな発見や認識をくれる「きっかけ」も作品なんだな、きっと。
美術館を出て家に帰る途中も、小田急線から見える景色や、向かいの席のサラリーマンさんらしき男性のしぐさまで、なんだかわくわくと眺め、密かに笑っている自分は、確かにちょっぴりいい気分なのでした。

All Photos & Text by Chiyo Abe, 2003
(*を除く)
「知覚スル装置」粟野ユミト・藤阪新吾 展
2003年2月27日〜4月13日に行なわれました
川崎市岡本太郎美術館
ホームページ=http://www.taromuseum.jp/
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