新入エコアナ!榎並大二郎の介助実習体験記 『より良い介助は、一口のハンバーグから』
[2008年12月19日更新分]
11月19日(水)、「ひとりぼっちの障害者をなくそう」を合言葉に活動する特定非営利活動法人「風の子会」の皆さんのご協力で、港区主催の障害者移動介助実習が地元お台場で行われ、私も夜勤前に参加しました。
ガイダンスの中で最も強調されていて印象深かったのが、
「コミュニケーションの大切さ」
介助において重要なのは、相手の話す言葉や態度をよく理解することだと言われました。コミュニケーションをしっかりとり、お互いを知ることで信頼関係が生まれ、介助の幅や質が広がるのだそうです。
この点は、アナウンサーのインタビュー心得に近いと思います。「なるほど」と、この時点では頭で理解していたつもりでしたが…ここは後の実習で理解不足を痛感することとなりました。
ガイダンス後、私は風の子会の佐久間庸さんと行動することに。
佐久間さんはサッカー観戦が趣味ということで、「よし、サッカーの話で盛り上がろう」と思い車イスを押していたら…
「ガツン」
来るときは感じなかった僅かな段差に、いきなりつっかかってしまいました。
ビルの1Fからエレベーターに乗るには駐車場を通っていかなければならず危険を感じ、通路や店内トイレも車イスで移動するには狭い。何をするにも一苦労でした。また、手持ちカバンで介助に臨みましたが、介助者は危険回避のため両手が自由になる肩掛けカバンを使わなければいけないと知り、深く反省しました。
いつもは何でもないエレベーターも、車イス介助に不慣れな私にはドアの閉まるのが早いこと早いこと…。
やっとのことでビルの中にあるレストランで昼食タイムとなり、初めて<食事の介助>を体験しました。
■思いやりとユーモアで、逆に助けられた私
不慣れな私が、介助をさせていただく佐久間さんに「次は何を食べたいですか?」と伺う。食べやすいサイズに切って、タイミングを見て口に運ぶ。フォークに刺さったハンバーグを見つめながら、この一口が佐久間さんとのやりとりの集大成なんだと感じました。その時、佐久間さんが近くにいた風の子会の職員の方を呼び、体の位置を変えました。ずっと同じ姿勢だと身体に負担を感じてしまうそうです。
私としては、車イスでの移動や食事介助で少しずつ心の距離を縮めることができたように感じていた頃だったので、「まだ僕には頼みづらいのかな」と思い少し落ち込みました。
ただ、その後、佐久間さんが私にこうして欲しいと言ってくださるようになったのです。
私が落ち込んだのを察してくださったのでしょう。佐久間さんの心遣いに、自分が恥ずかしくなった瞬間でした…。
介助させていただいたもう一人、小野塚さんは言語障害があります。
どうコミュニケーションをとろうか困惑していたところ、小野塚さんは持っていた電子辞書のようなものを「スッ」と私の前に。液晶画面には「よくみてます。いじられてますね」の文字。
照れ笑いする私と、満面の笑みを浮かべる小野塚さん。
小野塚さんは気さくなお兄さんという感じでした。笑顔がいっぱいの昼食でした。
■介助の基本は、相互理解と信頼関係
障害のある方の車イスは、ブレーキ・リクライニング装置の位置や幅、奥行きなど、その人に合わせた一台があります。同じように介助の方法も、一人一人の性格や障害の程度によってそのやり方は変わるのです。ガイダンスで教わった通り、<よりよい介助は相互理解からなる信頼関係がつくりあげる>と実感しました。信頼が、食事介助からトイレ介助へと介助の裁量の幅を広げることにつながり、より食べやすいハンバーグを生み出す。つまり、介助の質の向上につながるのだと思います。
障害への理解不足は、障害をもつ人を危険にさらしたり、過度の介助から自立心を失わせたり、また時にはその人の自尊心を傷つけてしまう結果を招いてしまうと思います。
実習前の30分ほどのガイダンスを受けるだけでも、そうした理解不足が解消されるのではないでしょうか?
今回の介助実習で、車イスでの移動や食事・トイレ介助など「介助のテクニック」は不慣れな私でしたが、介助する上での基盤となる「心得」に触れることができました。
次の実習のときには
「いじられなくなりましたね」
と小野塚さんに“いじって”もらえるよう、仕事も頑張ります。
風の子会の詳細は、こちらでどうぞ。URL:http://www.kazenokokai.npo-jp.net/