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2017年度 番組との連動トピックス

新・週刊フジテレビ批評【The批評対談】LGBTをテレビはどう伝えるべきか

[2017年8月4日更新分]

【The批評対談】LGBTをテレビはどう伝えるべきか 2017年5月20日放送 渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長永田龍太郎×ジャーナリスト江川紹子

Profile:永田龍太郎
1975年福岡生まれ 広告代理店、ルイ・ヴィトン、GAPを経て2016年から渋谷区男女平等・ダイバーシティ推進担当課長。「同性パートナーシップ証明書」の発行など多様な性の共同参画推進に取り組む。

基本知識
LGBT
レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダーの略称。LGBTの人口比率は、7.6%(約13人に1人)と言われている。(電通ダイバーシティラボLGBT調査2015)
アライ
英語で「同盟、支援」を意味するallyが語源で、LGBTに代表される性的マイノリティを理解し支援するという考え方、あるいはそうした立場を明確にしている人々を指す言葉
レインボープライド
LGBTをはじめ、あらゆる人が自分らしく生きられるダイバーシティ社会をめざして実施される大型イベントで、ゴールデンウィークに代々木公園周辺で開催されている。

渋谷区の取り組みについて

江川:永田さんは今渋谷区で具体的にどのようなお仕事をしているのですか?

永田:男女平等とLGBTの取り組みの両方を行っていますが、ジェンダーとセクシュアリティの平等という意味では、この2つは地続きの問題だと思っています。

江川:渋谷区はパートナーシップ証明書を発行するなど先進的な取り組みを行っていますね。

永田:同性パートナーシップ証明書の意味というのは、具体的には、

  ・二人で部屋を借りる
・パートナーが入院した場合
入院の許諾書をパートナーがサインできる
・先生から病状について話を聞ける
・面会謝絶に近い状態でも看病ができる

そういったことを同性カップルができるように要請することが大きな役割のひとつ。病院などに対して、同性カップルが生きやすい社会(渋谷区)を作っていくために最大限の要請をしていきます。同性愛者というと、ベッド上の話と理解する方が多いかもしれませんが、生きていくこと、社会性そのものなんです。
それ以外には啓発と直接的な支援も行っています。当事者の方々が安心して集まる場所を作ったり、世の中を変えるための「小さなアクション」を起こしてもらう企業・区民などを対象にしたLGBTセミナーなどを開くことも大事な仕事のひとつ。


フジテレビ社内のセミナー
LGBTは「見えないマイノリティ」とも言われていますが、LGBTも生きやすい社会になってほしいと思っている方もまた「見えない」。世の中を変えていくためには可視化していく、声を見える化していくことが大事ですが、残念ながら当事者の方々が声を出していくことがなかなか難しいという状況下で、LGBTアライ(=支援者)が小さなレインボーの旗をつけていただくなど、小さなことから少しずつ変えていくことが大事。そういう気持ちがある人が増えていくことが社会を変えていく一歩につながるので、臆せず手を挙げてアライになっていただければと思います。

江川:永田さんは、いつごろからこの問題に取り組むようになったのですか?

永田:以前働いていたGAPの日本支社は、非常にフラットな社風で、ありとあらゆる多様性に関して「差別はNO」というカルチャーが徹底されていました。LGBT当事者がオープンに働いていたので、じゃあ僕もと徐々に近しい同僚からカミングアウトしていって、日本でもLGBTに関する取り組みを従業員やお客さんに向けて情報発信していく活動を社内ボランティア的に手伝うようになったのがきっかけです。

江川:カミングアウトすることについて

永田:職場でカミングアウトすることをあまり考えたことがなかったのですが、カミングアウトしてみて日常でストレス、常時透明の鎧を着ているような、24時間ちょっと臨戦態勢というか、それが思いのほか重荷だったんだなあと気がつきました。カミングアウトすることが一律に良いことかどうかは、する側/される側の問題もあって、場合によっては拒絶されてしまう、いじめが起こることもありますから、100%良いとは言えないですね。どちらかというとカミングアウトしなくてもいい社会になるのが一番理想。

江川:カタカナ言葉が多いのはなぜ?

永田:自分たちの名前は自分たちで名づけるという思いで、ホモセクシュアルよりゲイ、自分たちで自分たちの名前をポジティブで定義して発信するため、先行した欧米から輸入したものが多いのかもしれません。

江川:ゴールデンウィークのイベント、東京レインボープライドについて

©TRP2017

永田:今の団体が企画・主催するようになって5回目。去年7.5万人だったのが今年はその1.5倍近い11万人近い方が参加。多様な性に対して知っていただく機会、LGBTも生きやすい社会になってほしいと思っている企業・団体についても知っていただく機会を提供するお祭り感のあるイベントです。
LGBTの代表的なモチーフに、6色のレインボーがあります。6色のレインボーは、虹のグラデーションが性の多様性を意味していて、フジテレビも、このイベントに合わせて社屋をこのレインボーカラーにライトアップしてくれて、私の回りの人たちの間でも話題になっていました。
渋谷区も、区の花、花菖蒲を6色に彩ったバッジを作っています。

テレビにおけるLGBTの描き方について

江川:テレビにおけるLGBTの取り上げ方についてどう感じていますか?

永田:かつては、海外・欧米のドラマでBGFF=Best Gay Friend Foreverと言われるような、主人公の女の子の親友でファッションのセンスが良くてその主人公の女の子が落ち込んだときに慰めてくれたり…という登場の仕方が多かった。ある意味ステレオタイプで、便利なペット的なゲイの登場人物が多かった時代がありましたが、最近はそういう描き方がだんだん減ってきたように思います。日本でも当たり前の隣人としてLGBTを描いたドラマやCMもでてきています。多くの方がご覧になるメディアでそういう描き方がでてくるということは、全国津々浦々そういったことへの理解が届けられるので、非常に良いことだなと思っています。
LGBTに特化した描き方、CMなどもありますが、特別扱いではなく当たり前の隣人として普通にフラットに描かれているのが当事者にも一番好感が持たれるし、意識を変革するきっかけにもなります。
ご存じのとおり「LGBTのいじめの問題」に加え、自尊心を養うという点では「子どもの頃にロールモデルが見つからなかった」という問題が非常に大きい。自身のセクシュアリティを認識したときに、「じゃあ自分はどうやって大人になっていくんだろう」、自分と同じセクシュアリティの人で、大人になって社会で普通に生きている人がなかなか見当たらない中で、「どう自分の人生をこれから歩んでいくのか、はたまた自分を偽りながら生きなければいけないのか」といったような厳しい判断に直面する子どもたちがたくさんいます。社会の中で様々な当事者の大人が生きている様子がまだ実社会ではそれほど多く見られないのであれば、ドラマの中に普通に生きている姿が描かれること、その姿が子どもたちに見えることというのは、ひとつの希望につながると思います。

江川:テレビに出ている人の中にもカミングアウトしているLGBT当事者がいますが、そういう出演者を見てどう思いますか?

永田:いわゆる“おネエタレント”と言われる方々がメディアの中で頑張ってひとつひとつ扉を開けて認知を作っていった。その功績というのは、本当に大きいなと思っています。一方で“おネエタレント”というところだけがメディアに出ていくと、LGBTの中にも色々な多様性があって、そういう多様性の感覚がなかなか一般の方々に知ってもらえないために、全部が“おネエ”でくくられてしまう、そういうところは嫌だな~つらいな~という当事者がいるというのも事実です。「あれが私たちの代表ではない」とおっしゃる当事者もいます。

江川:バラエティ等で自分のことをネタに笑いをとることについてはどう感じていますか?

永田:残念ながらホモネタというのは日本の社会の中では潤滑油のような形で使われていて、ちょっと自虐的に使われること、自虐的な笑いのパターンが今は(LGBTに限らず)多いのかなと。また、一般の方々からもそういう役割を期待されています。
それを変えるためには、メディアの中にでてくる当事者の方に中には色々な人がいるというのを見せることが一番の近道なのではないかと思います。


レインボーカラーになったフジテレビ社屋
江川:テレビ局の人たちも、LGBTの取り上げ方には悩んでいるのではないでしょうか。
色々な考え方の人がいるので、良かれと思ってやっても傷つけてしまうのではないか、ならばやめておこうといったように…。

永田:恐れてお見合い状態になって、だんだん引いていってしまって、じゃあ触れないようにしようというのが一番悲しい。
当事者と密にコミュニケーションを取っていただければいいと思います。さきほど言ったアライになるのには免許も検定もありません。「LGBTも住みやすい社会になってほしい」という姿勢が見えることから当事者の方との交流が始まります。その姿勢は間違っていないし、悪意があるわけではないのだから、批判ではなく「じゃあ、一緒に進んでいきましょう」という関係が生まれるんではないかと思います。テレビ局の職場の中にも当事者がいらっしゃると思うので、オープンにされている方々に、疑問に思うことを色々と質問してみるといいといいのではないでしょうか。何かを前向きに改善していこうとしての問いかけに対して、怒る人はいないと思います。

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