フジテレビのCSR活動 2013年度~2020年度

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2012年度 環境トピックス

被災者支援拠点運営訓練に参加しました

[2013年4月11日更新分]

次の災害に備えるための『被災者支援拠点』運営訓練


様々な企業から約30名が参加
2013年3月25日(月)・26日(火)の2日間、赤坂にある日本財団ビルで『被災者支援拠点』運営訓練が行われました。いただいた案内には災害時に避難所運営等に携わる可能性がある港区在住または在勤の健康な方が対象ということでしたので、災害時に帰宅困難者の受け入れの可能性のあるフジテレビは、事前に応募した総務局の災害対策担当3名で参加してきました。

東日本大震災では最大で30万人を超える人が、体育館や公共施設などで避難生活を送りました。震災直後最大で約1200カ所あった避難所のうち自治体が定めて運営する指定避難所はわずか3割で、残りの7割は逃げ込める場所を求めた人たちが集まってできた避難所だったそうです。

今回、震災関連死と認定された1,600人を超える人々のうち、避難生活での疲労が原因とされる方は実に3割にのぼるとのこと。災害で助かった命が避難所で失われたことになるのです。
こうした悲劇を繰り返さないために、従来の避難訓練では見過ごされがちな避難所での生活環境を向上させることを目的に、災害時に地域の被災者全体を支援する「被災者支援拠点」として求められる避難所の役割をとても実践的な訓練を通して体感し、多くの気づきを得ることが出来ました。

そこにいる人だけを支援する避難所から、地域の被災者全体を支援する被災者支援拠点としての避難所のあるべき姿までを体験、体感した2日間を振り返ります。

1日目のプログラム

■ 17:30~19:00
【シナリオA】 準備のない避難所 発災初日
ゴール 1)避難者の名簿を作る
2)夕食をとる

状況はM7の首都直下地震が起き、日本財団ビル内と周辺にたまたま居合わせた30数名が日本財団ビル内で一夜を過ごすというもの。交通はマヒし、電気は通じているが水道・ガスはNG。30数名は個々に渡されたキャラクター設定カードに従いそれぞれがある人物を演じながら、避難所生活を体験・体感する90分間。他の人がどんな設定なのかは知らされていない。


一日めの役割カード
ちなみに私の設定は…「46歳男性アメリカ人。日本語は話せるが読み書きは出来ない。つまり日本語掲示物は一切読めない。地震であることを認識できず、テロか戦争が起きたのでは?と思い、周りの人に何が起きたのかを確認する。電車が止まっていることを聞きだすこと。そこから動けないので避難所で一夜を過ごすことになるが、毛布や食事が無料であることがわからず、周りの人に質問しながら支援を受ける」という役柄。いきなり外国人になってしまったことに戸惑いながらもシナリオ開始のホイッスルが鳴った。

まずは、日本財団の施設管理者がビル1階を帰宅困難者に開放するので交通網が復旧するまで1階ロビー内で過ごすように叫んでいる。ロビー内には骨折や火傷をしたと訴え助けを求める人や赤ん坊を抱く母親、管理者に詰め寄る者、呆然と座りこんでいる者など非常に混乱している。私も近くの人に「何が起きましたか?テロですか?戦争始まりましたか?」と外国人っぽい話し方で質問しまくる。無視されたりしたが、なんとか地震が起きたことを知る。電車が動いていないらしいことも聞き出せた。ビル管理者から、ここに留まるならば名簿に名前を書くよう言われ指示に従う。咄嗟にダグラスと記入した。


怪我などをしていない人と協力して避難所の設営を手伝ったり、ケガ人の運搬に手を貸したりしていると、夕食としてビルの備蓄食料のカンパン5個とコップ1杯の水が配られ、「無料であること」を確認していただいた。


■ 20:00~21:00
【シナリオB】準備された避難所 発災初日
ゴール 1)避難者の名簿を作成しなおす
2)就寝準備



次により準備の整った避難所の発災初日の様子を体験する。まず被災者一人一人に非常持出袋が配られ、温かい食事の他、マットやパーティション、大小数種類のテントや、簡易ベッドまであり、装備の整った避難所は少しでもストレス軽減に役立つことを体感。

終了後は初日の訓練を振り返り、避難所の立ち上げから運営していくことの難しさ、リーダーの選び方、より良い組織の作り方を考えました。
名簿を作りそれぞれの健康状態や状況をいち早く把握することで、放置され疎外感を味わう人を減らし、治療の必要な人の優先順位をつけやすく、他施設へ移送するなどより適切な措置を取りやすくなることを実感。
組織も大きな一つのまとまりよりも、いくつかのグループを作りそれぞれ班長を作って情報を伝達、共有するほうが良いこと、リーダーは自ら動き回るのではなく判断し各班に指示を出しチームとして対処することが大切なこともわかりました。

物資だけあっても、適格なリーダーがいないと快適な避難所にはならないことも知りました。
スペースの作り方の甘さ、物資の管理の杜撰さ、避難所入口に受付を設置しボランティアを含め部外者の立ち入りを制限、監視しないと感染症の心配や被災者の不安を増すことにつながることも指摘され、実際にやってみないとわからない多くの気づきを得られました。

夜は23時就寝。マットと寝袋を受け取りブルーシートを敷いた床に寝ましたが、マットがあるとはいえやはり固くて熟睡は出来ず、何度も目を覚ましながら朝を迎えました。

2日目のプログラム

■ 8:00~9:30
【シナリオA】 港区内溜池小学校の体育館が避難所 発災10日後
ゴール 1)清掃活動をする 
2)班をつくり班長を決める
3)班長は班員のニーズを把握→健康状態や退去予定について

状況は…水道はないが給水タンクの水使用、ガスはカセットコンロ、電気は使える、男女トイレは仮設トイレが設置された、風呂は遠方にしかない。
多くの人が避難所での生活に不満をもっておりこのまま避難生活を続けるか検討中。



2日目の訓練は状況設定が発災10日目の小学校の体育館に変わり、また私のキャラクター設定も「食事担当の50代女性、避難生活に非常に疲れていてすぐに座りたがる」と、アメリカ人から日本人には戻れたが、今度は女性に(笑)。

発災10日後ということで避難所内ではみな顔見知りで名前もキャラもわかっているはずなので、この訓練ではキャラクターカードを首から下げ、互いに公開しながらスタート。

皆が避難所生活に疲弊し不満も募っているので混乱も起きる。生活の場を見つけて避難所から出ていく人、要介護の妻を持ち福祉施設への移転を求める老夫婦、つらさ、寂しさからお酒に走り迷惑をかける老人などキャラも様々。聴覚障害を持つ人には隣にいる人が筆談でのやりとりを続ける。

前日の反省を活かし、まずはリーダーを決め本部と班づくりを行い組織を整えた。上層部には女性も入れ女性目線からの意見も取り入れる。各班の班長を決めたところで清掃活動を割り振る。班ごとにてきぱきと掃除を終えてからは班長が班員のニーズを聞き取り調査。
様々な避難所生活者たちの要望が集約された。この後、強力なネットワークをもったボランティアの支援団体がアセスメントのために訪問予定なので、その人たちに助けを求めようと班長が集まり相談。


■ 9:30~10:30
【シナリオB】情報共有・現状把握
9:30~ 班長会議
10:00~10:30 ボランティアの支援団体による避難所アセスメント


避難所アセスメントシート
避難所内で生活する人たちの様々な要望を集約し共有、また班長会議で話し合った結果アルコールに依存する老人にはカウンセラーに診せようと判断。ボランティアの支援団体のアセスメントを受けた際に相談してみた。各所にネットワークを持つ彼等は、介護スタッフの派遣や手話スタッフの手配、カウンセラーの派遣まで迅速に対応してくれた。


支援物資の中には無かった大人用おむつなどの介護用品の手配も約束してくれた。
自分たちだけでは対処できなかったことが一気に解決した。もっと早く接触しておけばよかったと反省。
こうして2日間の体験訓練は終了した。

11:00~12:00 全体振り返り

『避難所に求められる役割は時間とともに変化する。』
発災初日と10日後の避難所運営を体験したことで、その場にいる人の状況によって、また刻々と変わる周囲の状況によって避難所に求められる役割は変化していくことを体験できたことは大きな収穫でした。
全体の振り返りの中で指摘されたことでハッとしたことがあります。

『港区には、避難所での生活が困難で、介護などのサービスを必要とする高齢者や障害者の一時的な生活場所としての二次避難所がいくつもあり、HPでも公開されています。
港区内の企業の方が事前の情報として知らなかったのか。通信が復旧した時点で自分たちで問い合わせて、要介護者と障害者を移送することに思い至らなかったのは残念』と言われたことです。
自分たちの避難所内で対応できることと、二次避難所への移送など地域と連携して対処すべきもの、その判断ができませんでした。これも体験して指摘されて初めて気づきました。

自社だけの防災計画は無意味。近隣と連携した「開かれた防災計画」が重要

フジテレビは、災害や事故などの際の防災計画の中に、行政の他、様々な企業、団体との連携を盛り込んでいますが、今回の訓練を通じて改めて広域ネットワークを整備強化することの重要性を感じました。
自分の会社だけの防災計画には限界があり、近隣との連携が不可欠です。
行政だけでなく、どの企業、どの団体と組めばどこまでできるのか。深刻な状況が中長期にわたり継続する事態に備え、どう乗り越えていくかを考えた場合、広域ネットワークの構築が災害や事故など不測の事態に強い企業には欠かせません。
フジテレビが災害時に帰宅困難者を受け入れる際には、今回の経験を生かし、「なるべく過ごしやすい避難所」にしたいものです。

文:長坂哲夫(フジテレビ 総務サービス部)

参考)
名称: 次の災害に備えるための『被災者支援拠点』運営訓練
日時: 2013年3月25日(月)、26日(火)
会場: 日本財団ビル1階バウルーム 東京都港区赤坂1-2-2
主催: 日本財団 次の災害に備える企画実行委員会
〈代表〉 川北秀人(人と組織と地球のための国際研究所代表者)
〈構成〉 一般社団法人RCF、一般社団法人スタンバイ、一般社団法人ダイバーシティ研究所、
公益財団法人日本財団、人と組織と地球のための国際研究所、NPO法人ユースビジョン
後援: 東京都港区

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